2020年に発売されたタイガー「土鍋圧力IHジャー炊飯器〈炊きたて〉土鍋ご泡火炊き JPL-A100」は、50年の集大成とも言える素晴らしいモデルでした。その翌年に新しいモデルを出してきました。それが6月末に発売予定の「土鍋圧力IHジャー炊飯器〈炊きたて〉土鍋ご泡火炊きJPL-G100」。発売前のJPL-G100をテストしてみると、2020年モデル同様にお米は美味しく炊けます。前モデルとの差は、常に同じ美味しさをキープできるようになったということです。
タイガー炊飯器に2021年モデル「JPL-G100」が登場
集大成ともいえた2020年モデル「JPL-A100」
2020年は、タイガー魔法瓶が炊飯器「炊きたて」を作り始めて50年。土鍋ご泡火ほうび炊きJPL-A100です。私もテストさせて頂きましたが、実に美味しい。しかも、最近のモデルらしく、芯まできちんと水分が入っている割に、粒立ちが良い。べとつきが少なく、おいしいので、いくらでも食べられる。そんな感じです。確かに「炊きたて」の集大成に相応しいモデルでした。
それから1年。6月21日に出たのが、51年目のモデル「JPL-G100」です。集大成モデルをリリースした翌年のモデルは、どのようなモデルなのでしょうか?
メーカーが高級炊飯器に力を入れる理由
炊飯という日本古来の食文化は、もはや剣道や華道のような「炊飯道」と言った方がいいかも知れません。各メーカーが力を入れて違うアプローチをしています。その多様性は、他のキッチン家電の追従を許しません。そのくらい、炊飯と言う技術は、いろいろな要素が絡み合っています。また、うまい米というのは日本人の好みです。
世界のジョークでも、日本人を怒らせるには、「まず米を炊き、日本人を呼び、目の前で米を床にぶちまけ、踏みつけるとブチギレる」ってあるぐらいです。他にも、「領海侵犯しても、ミサイルを領海内落としても、怒らない日本人が、こと食に関しては、瞬時に怒ってしまう」というものもあります。ジョークと言いましたが、同類の脊髄を食べた輸入牛肉(狂牛病)とか、農薬をたっぷりかかった野菜とか、腐った肉を作った餃子とかに対しての怒りですからね。ジョークなんかで済みませんよね。とにかく、それほど日本人が大事にしている食。その主食である米を炊く炊飯器は重要なのは言うまでもありませんね。メーカーの誇りにかけて!という雰囲気が一番強いのが「高級炊飯器」なのです。
タイガーの炊飯のポイントは「本土鍋」
炊飯器には色々ありますが、まずメーカーが改良の際に手をつけるのが「火力」です。炊飯自体はヒーターでも可能です。しかし理想は「かまど」。しかしヒーターでは熱量が足りません。そのため、「IH」+「特殊な内釜」と言う発想が出てきます。
特に「内釜」は、各メーカーの考え方が出てくるとことです。タイガーは料亭でも使われる「土鍋」に着目。しかも念が入ったことに、土鍋部分は三重県四日市の「萬古焼」でできています。同じ三重県の「伊賀焼」と共に、古くから土鍋で有名です。理由は土です。もともと三重県のこの2つの市は、その昔、琵琶湖底でした。その琵琶湖が移動した後の土には、水中生物、微生物がごそっと含まれます。するとどうなるか、焼いた時に小さい孔がとても多い空気をたっぷりと含んだ焼き上がりになります。このため、コークスなど高温発熱の燃料にも耐えますし、一度熱すると温度が持続します。このIHと内釜で、火と鉄のかまどに並ぼうと言うわけです。
この組み合わせに対して、いろいろなプログラムをリファインをして到達したのが、昨年発売された50年目のモデル「JPL-A100」です。
2021年モデルと2020年モデルとの違いは?
新しく改良した点は「蒸らし工程」
今回、炊飯時の工程で手を加えたのは「蒸らし工程」。新たに「ハリつやポンプ」と「間欠(かんけつ)呼吸」を採用しています。
蒸らしは、炊き上がりの次の工程で、炊飯の最後の工程です。炊いてすぐのごはんはべちゃべちゃとして水分が多い状態なのですが、蒸らすことでごはん粒に含まれる水分が均一になり、美味しいごはんへとなるのです。逆に、蒸らしが不十分だと、水っぽくて美味しくないごはんになってしまうこともあります。
「ハリつやポンプ」と言うのは、外気を取り込むポンプのこと。外の空気を中に取り込み、熱と余分な水分を外へ放出。米粒の「ハリ」と「つや」を実現します。ただし、外気を入れたためにお米が冷めてしまっては美味しくありません。「間欠呼吸」と言うのは、外気を連続的にではなく、ちょっとづつ取り入れることです。
発売前のJPL-G100をテストしてみると、もちろん2020年モデル同様にお米は美味しく炊けます。前
モデルとの差は、常に同じ美味しさをキープできるようになったということです。
おひつ保温は24時間までは素晴らしい
さて、もう一つの目玉は「おひつ保温」です。木製のおひつのように、やや低めの温度で保温、余分な水分をちょっとずつ外に出していきます。このため、24時間以内なら大層美味しく食べられます。変色もなく、ほぼ炊きたて状態。それ以降は、水分が抜け過ぎて、かたくガビガビになってしまいます。24時間以上の保温は、正直お勧めできません。もし、それでもご飯が残ってしまう場合は、冷凍してレンジ解凍をお使いください。1日で食べ切れる量を予想して、対応してください。
少し残念な点も…
最新モデルなのにネット接続はなし
最近の家電は、プログラムのアップデート用、AIをよりよく動かすために、ネット接続が当たり前になりつつあります。タイガーもJPA-X100というネット接続できるモデルを持っています。
このモデルは、50周年モデル以降に市場導入されました。しかし、今回新発売のモデル「JPL-G100」はネット接続できません。
最高級モデル=全部ありというわけではなさそうです。確かに、今回導入された「間欠呼吸」「おひつ保温」には、「ハリつやポンプ」という物理的な要素が絡んでいますので、プログラムのアップデートしても意味はありません。しかし、「銘柄巧み炊きわけ」というお米の銘柄ごとに、プログラムの細部を変えるのは、70銘柄に増えています。またお米の銘柄は、年々増えます。当然、今後も対応銘柄数は増えるはずです。高いお金を出す高級炊飯器ですので、数年は、新製品と遜色ないという感じでありたいものです。
最後に
50年モデルも美味しかったのですが、私が以前テストした時はフタの開閉が余りよくなく、ちょっと辛めの評価をさせて頂きました。今年のモデル「JPL-G100」は、「そんなことはないですよ」と実にスムーズ。Wi-Fiはないものの、実にいい塩梅で。おいしい上に、安定しており、毎日の生活に溶け込みます。おいしいご飯さえあれば、こんなコロナ禍でも頑張れるという人も多いでしょう。食事の基本となるお米ですから、満足度は高いです。今お勧めのモデルと言えます。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。