【映画・キネマの神様】キャスト変更や原作小説と違うストーリーが話題 見どころと感動ポイントをレビュー

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松竹映画100周年を記念して制作された『キネマの神様』は、名匠・山田洋次監督が、原田マハの小説を映画化。豪華キャストも話題になりましたが、コロナ禍で志村けんから沢田研二に主役が代わるなど、様々な紆余曲折を乗り越えて8月6日に公開されました。この映画のあらすじやレビューはもちろん、映画とは異なる小説の魅力を紹介します。

映画『キネマの神様』が注目される理由

松竹映画100周年を記念した渾身の作品

松竹の前身となる松竹キネマ合名社の創立は、1920年。その100周年を記念して作られたのが、映画『キネマの神様』です。『男はつらいよ』シリーズを手がけた山田洋次監督が、人気作家・原田マハの小説を映画化。沢田研二をはじめ、宮本信子、寺島しのぶ、小林稔侍など日本を代表するベテラン俳優や、菅田将暉や永野芽郁、北川景子といった人気若手俳優たちが共演する豪華キャストも注目されています。筆者は、原作者・原田マハの大ファンで、公開日を楽しみにしていました。

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コロナによる数々の困難を乗り越えて公開

本作品は、昨年3月に撮影をスタート。しかし、その1ヵ月後に主役のひとりである志村けんを失い、日本中が悲しみに包まれました。撮影は中止を余儀なくされ、映画の完成も危ぶまれましたが、志村けんの遺志を沢田研二が引き継ぎました。そのニュースを知ったときの驚きと喜びは、言葉に表せないほど。子どものころ、ドリフターズの人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』に夢中になり、音楽番組『ザ・ベストテン』で、化粧をしてハデな衣装を身にまとった「ジュリー」にドキドキした当時の記憶が蘇りました。ちなみに2人は『8時だョ!全員集合』で共演し、同じ事務所で先輩・後輩として仲がよかったそうです。

映画『キネマの神様』のあらすじ

ギャンブルとお酒が大好きで借金まみれの円山郷直(通称ゴウ)は、妻の淑子、娘の歩に迷惑をかけてばかり。けれども今から50年前、若い頃は撮影所の助監督として活躍し、親友である映写技師の寺林新太郎(通称テラシン)やスター女優の桂園子に、「今までにない映画を作る」と夢を語る情熱家でした。撮影所近くの食堂の看板娘であった淑子は、そんなゴウに恋心を抱いていました。しかし、自ら脚本を書き、待望の監督としてクランクインした日に大怪我を負い、映画界を去ったのです。そして現代、新たなカタチでその作品は蘇り、奇蹟を起こす。「映画愛」と「家族愛」に満ちたストーリーです。

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2人1役で過去と現在の世界を描く

この映画の特徴は、2人で1役を演じていること。途中で「現在」から50年前の「過去」へとタイムスリップしてキャストが変わり、それぞれの世界を描いています。

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そのほかにもゴウの娘の歩(寺島しのぶ)、撮影所の出水宏監督(リリー・フランキー)やスター女優の桂園子(北川恵子)などが出演しています。

公開初日に映画を観てきました

現在と過去のギャップが面白い

一般的に映画は、主役と準主役といった役割がありますが、『キネマの神様』はそれぞれの個性が光り、全員が主役という印象。映画は「現在」の世界から始まり、ゴウ役の沢田研二のダメ親父っぷりにイライラし、控えめで献身的すぎるゴウの妻役の宮本信子に「なぜ、別れないの?」と心の中で叫んでしまったり、不幸そうな家族の情景に切なくなりました。

けれども50年前の「過去」に遡ると一転、ダメ親父のゴウは映画に情熱を注ぐ菅田将暉に代わり、淑子役の永野芽郁はゴウに恋する少女。恋心がわからないゴウに「バカ、鈍感」と言うシーンは、観ている方が赤面してしまうほどウブで可愛い。このギャップが面白く、「人間50年経つとこうも変わるのか」とも思ってしまいました(笑)。

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昔の撮影所の雰囲気をリアルに再現

50年前の撮影所のスタジオや機材、活気に満ちた雰囲気、監督と助監督、俳優のフランクな人間関係などをリアルに再現。なかでも、当時の衣装やメイクをほどこし、スター女優・桂園子を演じた北川景子は、その表情や話し方、しぐさに往年の大女優の気品が感じられました。「いい映画を作ろう」と一丸となって取り組んでいく熱気がひしひしと伝わります。

一番の見どころは沢田研二の「東村山音頭」

山田洋次監督ならではの「昭和の良き時代」「家族愛」「映画愛」が感じられる心温まる作品。なかでも一番感動したのは、ゴウ役の沢田研二が「東村山音頭」を歌うシーンです。当初、沢田研二本人のヒット曲も候補に挙がりましたが、最終的には志村けんの代表曲が選ばれたそう。夢のコラボに思わず、目頭が熱くなりました。

映画と異なる原作ストーリー

『キネマの神様』は、映画と原作の小説とストーリーが違うことも話題のひとつ。そこで、小説を書いた原田マハのプロフィールや小説のあらすじにも触れてみましょう。

原田マハとは、どんな作家?

1962年東京生まれ。2006年、『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞して作家デビュー。その前は主にフリーのキュレーター(美術館等の展覧会の企画・運営などを行う専門職)として活躍していたという異色の経歴を持ちます。心温まるほのぼのとしたストーリーから、旅やグルメなどの趣味に関するエッセイや小説、前職の経歴を活かしたアート系小説などジャンルは多彩。「天は二物を与えず」と言いますが、博学多才な小説家なのです。日本史上初の女性総理大臣とその夫を描いた『総理の夫』は、田中圭と中谷美紀主演で映画化され、2021年9月23日に公開される予定です。
▼原田マハ公式サイト
▼映画『総理の夫』公式サイト

ゴウは原田マハの父親がモデル

『キネマの神様』は、原田マハにとって特別に思い入れのある作品。本人のコメントによると、ギャンブル依存症で無類の映画好きだった父親をモデルにし、壊れかけた家族を映画が救う奇蹟の物語を書こうと思い立ち、完成させたとのこと(父親はバツが悪そうだったが、友人知人に「おれのことだ」と言いふらしたそう)。ちなみに原田マハが7歳のとき、父親に連れられて初めて映画館で観た映画が山田洋次監督の『男はつらいよ』だったので、今回の映画化の話がきたときには、本当に嬉しかったそうです。(『キネマの神様 ディレクターズ・カット(文藝春秋刊)』まえがきより一部引用)

映画化にあたりストーリーは大幅に変更

映画では、ゴウの撮影所時代をクローズアップしていますが、小説ではゴウの娘・歩の視点で現在を中心にストーリーを描いています。登場人物の設定なども異なり、映画の予告編を観たとき、正直「あれっ?」と思いました。ストーリー変更について山田洋次監督本人は、「ストーリーはかなり変更をせざるを得なかった。小説通りに映画化するのが難しいケースはよくあるのだが、相当大幅な変更だったので、これを原田さんが了解してくださるかを心配しながら脚本を送った」と語っています。それに対して原田マハからは「大きな変更です、しかし見事な変更です」とお褒めの言葉が返ってきたそう。その後、脚本をもとにした原田マハが執筆した『キネマの神様 ディレクターズ・カット(文藝春秋刊)』が発売されました。映画を観る前の予習、または映画の余韻を楽しみたい方は、ぜひ読んでみてください。(『キネマの神様 ディレクターズ・カット(文藝春秋刊)』まえがきより一部引用)

『キネマの神様 ディレクターズ・カット(文藝春秋刊)』

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小説『キネマの神様』のあらすじ

39歳独身の歩は、大手デベロッパーに勤務するキャリアウーマンでしたが、社内のいざこざで会社の辞めることに。折しもギャンブルと映画が趣味の父・ゴウが倒れて入院し、多額の借金が発覚。途方に暮れるなか、事態は一変。父が、映画雑誌に歩の文章を投稿したのをきっかけに、歩はその編集部に採用され、さらに父の映画ブログをスタートさせることに。雑誌が売れずに傾いていた編集部を再生させる、映画愛と家族愛に満ちた奇蹟のストーリーです。電車の中で読み終えたとき、周囲を気にせずにボロボロに泣いてしまいました。映画を観た方も、そうでない方にも、ぜひ読んでほしい小説です。

『 キネマの神様』(文藝春秋刊)

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まとめ

1年以上かけて撮影し、ようやく公開を迎えた映画『キネマの神様』。コロナ禍において撮影が中止され、主役が志村けんから沢田研二に代わるなど、悲しい出来事や数々の困難が続きました。けれども山田洋次監督をはじめ、主演俳優やスタッフの方々の作品に対する揺るぎない情熱と努力の結果、公開が現実のものになったのです。今もコロナ感染拡大の影響を受け、映画業界は厳しい状況下にありますが、素敵な作品を作り続けてほしいと思いました。

私たちにできることは、映画館で映画を観ること。ぜひ、一人でも多くの方に足を運んでほしいですね。また、原作を書いた原田マハさんにもぜひ注目してみてください。近日中に【原田マハの世界(2)】としてアート系小説を紹介します!

文・藤田美佐子
京都市在住。フリーランスの編集兼ライターとして観光、食、求人、医療、ブライダルなど幅広い取材・執筆活動を行う。1児の母。趣味はマラソン・トレラン、美味しいものを食べたり、つくること。原田マハさんの小説をきっかけにアートにも興味を持つ。

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藤田美佐子(編集ライター)

京都市在住。フリーランスの編集兼ライターとして観光、食、求人、医療、ブライダルなど幅広い取材・執筆活動を行う。1児の母。趣味はマラソン・トレラン、美味しいものを食べたり、つくることが大好きな食いしん坊。

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