今回は「2021年に放映から10周年を迎えたアニメ作品」にフォーカスし、筆者イチオシの思い出深い名作をご紹介します。今年放送された作品も総括したいところですが、アニメ文化が大きな盛り上がりを見せた、2011年付近の空気もあらためて振り返りたい!未視聴の方も、配信サービスなどで今、追いかけてみる価値は十分にあると思います。おすすめの作品を紹介していきましょう。
名作が次々と生まれた2010年代初頭
今でこそ「アニメ」は、Netflixに代表される映像配信サービスの影響を受け、メインカルチャーとして広く受け入れられていますが、それはここ最近のことなのです。以前は、コアな熱量を持つ一部のオタクが追いかける文化として、ディープに愛されていました。
そんなニッチなカルチャーが、時代の節目ごとに『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)や『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006)などのヒット作と共に受容され始めて急速に発展していき、大きな転換期を迎えたのが2010年代初頭でした。「ニコニコ動画」などの新たなプラットフォームが誕生したことで、さらにオタク文化全体が盛り上がりを見せていたのです。アニメオリジナル作品から原作付き作品まで、非常に幅広い内容の作品が多数放映されたのが、この年代です。
特に、それまでは日の目を見なかった深夜帯のアニメなどにも、スポットライトが当たり始めました。そうして、「アニメを観る」という行為が、子どもやディープな層以外にもカルチャーとして定着していったのが、今から10年前にあたる2011年前後のことです。
「ハルヒ・らき☆すた・CLANNAD」など、京都アニメーション発の作品が爆発的な流行を見せた00年代後半の盛り上がり。それを引き継ぎ、『けいおん!』(2010)などが放映されて以降は、雑誌「まんがタイムきらら」などを中心に、「日常系」とされるジャンルも定着していきました。また、90年代から00年代にかけての「セカイ系」ブームの影響下にあるSF・ファンタジー系の作品も、多数放映されました。のちの「異世界転生」系作品の流行に繋がっていったことが伺えます。
2011年のおすすめアニメ3選
さて、そんな2011年放映のアニメ作品には、どのようなものが存在していたのでしょうか。「十年一昔」という言葉があるように、10年も経てば作品を取り巻くムードも一変するもの。
本稿では、今視聴すると、逆に新鮮さを感じられそうな作品をご紹介します。数多くのヒット作が生まれた年になるため、すべてを取り上げることができない点についてはご容赦ください…!
魔法少女まどか☆マギカ
数ある2011年放映のアニメの中で、最も大きなムーブメントを起こした代表的存在として知られるのが、『魔法少女まどか☆マギカ』です。
児童向けアニメの領域で確立されていた「魔法少女モノ」に、ダーク・ファンタジーの要素を持ち込み、ファンシーな絵柄とサイケデリックな映像を融合させた斬新な手法が、当時大きな話題を集めました。
「不思議な力を手に入れて少女が活躍する」というフォーマットは、1960年代~70年代頃から既に存在していました。例えば、『ひみつのアッコちゃん』『魔法使いサリー』などをジャンルの源流として捉えることができます。
それらの要素は、『魔法の天使クリィミーマミ』や『美少女戦士セーラームーン』などの国民的作品へと継承されました。00年代には、『カードキャプターさくら』や『おジャ魔女どれみ』、『ふたりはプリキュア』などの女児向け作品へと繋がっていきます。
一方で、ジャンルの「お約束」を逆手に取ったシニカルさが特徴的な『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』『撲殺天使ドクロちゃん』などの作品も、00年代以降登場し始めます。王道パターンの中に、変化が生じていきました。
そして「まどかマギカ」では、序盤こそ「魔法少女モノ」としての普遍性を見せます。ところが、ほどなくシリアスな方向へと大きく切り替わるという「事件性」が、放映当初より話題を呼びました。結末から劇場版作品に至るまで、大きなスケールで世界が揺れ動く様が他の作品を圧倒する存在感を発揮しました。
放映から10年が経過した今もなお、国内外で圧倒的な人気を誇っています。スピンオフ作品『マギアレコード』の展開や、完全新作の発表なども行われており、まさに不朽の名作と呼べる作品です。おっとりとしたビジュアルからは想像もつかないハードな作風は、アニメを観る習慣のない方にこそ見てほしい仕上がりと断言できます!
日常
『まどかマギカ』とは打って変わって、ハイテンションかつシュールな笑いを楽しめるギャグ作品の代表格として、高い支持を得たのがアニメ版『日常』です。あの京都アニメーションが制作を手掛け、豪華なスタッフ陣によるハイクオリティな映像で、全力ドタバタコメディを楽しめる仕上がりとなっています。
合計2クール分にあたる全26話が各局で放映されたのち、翌年にはNHKにて「Eテレ版」が再編集のもと放映されるなど、お茶の間にも浸透した作品です。世代を問わず、安心して楽しめる内容となっています。
原作のシュールな質感を損ねることなく、アニメという表現に落とし込む技術も含めて、必見の1作といえるでしょう。その後のギャグ系作品の空気を大きく変えた、エポックメイキングな内容・演出にも注目です。
「日常」京アニサイトでは、制作日記などを見ることができます。
THE IDOLM@STER
最後にご紹介するのは、15年以上続く人気シリーズ「アイドルマスター」の2011年作アニメ版です。
原作となったゲームシリーズに極めて忠実なストーリー設定と、各キャラクターの魅力を最大限に引き出す構成力、大量の原作楽曲に加え、新たに制作されたオリジナル楽曲を加えた音楽面での幅広さなどが総合的な評価を集めました。続く「シンデレラガールズ」などのアニメ化成功を後押しした作品としても知られています。
原作のゲームシリーズは非常に人気の高いタイトルであったため、当初はそもそも映像化自体が困難とされていました。「熱心なファンから厳しい評価が下されることは間違いない」と、アニメ化発表時から、高いハードルを乗り越えることを強いられた作品でもあったのです。
しかしながら、放映されると同時に、そのクオリティが高く評価され、むしろ「アイマス」ファンを大きく増やすという功績を残しています。
2010年代以降のアニメで顕著な傾向のひとつに、「群像劇×青春×アイドル」といったジャンルがあります。本作は、この流れを創り出した代表例として、真っ先に挙げられるタイトルではないかと思われます。
他には『ラブライブ!』(2013)や『Wake Up, Girls!』(2014)などが複数のキャラクターでドラマを生むアイドルアニメとしてヒットを記録しました。その先例として、10年前に放映されていたのが本作です。
全25話+特別編とボリュームの大きな作品ですが、前半では主に駆け出しアイドルとしてのキャラクターたちの活躍が、後半ではライバルとの衝突やトラブルによって巻き起こるドラマが繰り広げられ、全く飽きさせません。アイドル系のジャンルに抵抗がある方でも、楽しめる内容となっています。当時、リアルタイムで没頭していた筆者から、強く視聴を勧めたくなるほどの名作です。
まとめ
今回は「2011年放映アニメ」に注目して、当時の雰囲気や背景、オススメ作品などをご紹介しました。とにかく10年前の放送ラインナップは、今でも話題に事欠きません。今回取り上げた作品以外にも、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』『STEINS;GATE』『TIGER&BUNNY』『ゆるゆり』『Fate/Zero』などのヒット作が名を連ねています。ある意味、黄金期とも呼べる当時のアニメを、ぜひ配信サイトなどでお楽しみください。