お手軽な一眼カメラというイメージだったミラーレスカメラだが、いまでは、一眼レフを凌駕するほどの性能を持つものも少なくない。ここでは、ハイグレードなミラーレス一眼を一台ずつチェックしていこう。今回は、ソニーのα7IIIだ。
●評価項目
(1)フルオート画質
フルオートモードで遠景の解像感やオートホワイトバランス、露出レベル、発色などについてチェックした。
(2)操作のわかりやすさ
全体的な使い勝手のよしあしや持ちやすさ、初心者向けの撮影補助機能、特徴的な部分についてチェックした。
(3)持ち歩きやすさ
カメラ本体だけでなく、キットレンズを装着しての大きさや重さ、手に持ったときの重量感などをチェックした。
(4)スマホとの連係
Wi-Fiなどを利用して簡単にスマホと接続できるかどうか、スマホアプリの機能などについてチェックした。
(5)自撮りのしやすさ
モニターを前側に向けた状態で自分撮りを行う際の機能、撮りやすさ、構えやすさなどをチェックした。自撮りに非対応のモデルは評価をしていない。
(6)コストパフォーマンス
機能や性能に対する価格の妥当性、買い得感をチェックした。ほかの機種とも比較しながら判定している。
極端な高速連写や画素数などはないもののバランスの取れた高性能と価格設定が魅力
ソニー
α7III
実売価格例:24万8270円(ボディ)
画素数を抑えて、お手ごろ価格(フルサイズ機としては)を実現したモデル。画面のほぼ全域をカバーする693点測距のAFに10コマ/秒連写、さらに進化した瞳AFやタッチパネルの内蔵、マイメニューの装備など、さまざまな部分で大きく進化している。
プロ向けハイエンドタイプのα9のスペックをマイルドにして、そのぶん手の届きやすい価格を実現した印象のベーシックモデル。といっても、カメラ慣れした熟練者に不満を感じさせるような低レベルの「ベーシック」ではまったくない。
有効画素数は、2420万。従来よりも効果の弱いローパスフィルター(偽色やモアレを低減するために使われるが、解像感をやや低下させる性質がある)を採用しているらしく、遠景の解像感が、一つ前モデルのα7IIよりもわずかながら向上している。高感度の画質もISO6400が常用できそうなくらいによくなっているし、ダイナミックレンジも広くなった。写りの面では、画素数が控えめなのを除けば十分にハイエンドなのだ。
そのうえ、AFは、α9譲りの693点位相差検出。測距点が画面のほぼ全体をカバーしているので、動く被写体をとらえる能力が極めて高い。連写は10コマ/秒でAF追従。JPEG(Lサイズ、ファイン画質)なら172枚、圧縮RAWで89枚も連続で撮れるのだから、スポーツ系の撮影も余裕で行ける。AFの速さ、連写の速さでは上位のα9にかなわないが、実売価格の差(α9は48万円ほどするのだ)を考えれば文句は出ない。
基本的な操作性には不満はないし、メニューの構成も改善されているものの、メモリーカードスロットの仕様は釈然としない。カードを裏向きに装填するのも不自然だし、二つのスロットの上が「2」で下が「1」なのに、メニューでは上が「1」になっているからややこしい。α9やα7RIIIも同じ仕様なので、その点では統一されているのだが、ほかのカメラと併用する際には特に気をつけたい。
上位モデルのようなとんがったところはないとはいえ、ハイエンドタイプに迫る機能と性能の高さを誇りつつ、それでいて、気軽に買えるほどではないにしても十分に納得できる価格設定というバランスのよさが、このα7IIIの持ち味であり、これをして「ベーシック」と称するソニーのすごさを存分に味わえる一台だと思う。
●小型・軽量ながらシャープな描写のレンズ
こんな人におすすめ!
極端な高速連写や画素数は不要だが、全体的なパフォーマンスの高さは欲しいという人にはかなりいい選択肢。小型・軽量なレンズと組み合わせて、スナップや旅行に持っていきたい。
主要スペック
撮像センサー:フルサイズ 最高感度:ISO20万4800 電池寿命(CIPA):710枚 有効画素数:2420万 最大連写速度:10コマ/秒 サイズ:幅126.9mm×高さ95.6mm×奥行き73.7mm 重量:565g
解説/北村智史(カメラライター)
※価格は記事制作時のものです。