思い出のカセットをハイレゾで再生!? これぞ2018年のラジカセのあるべき姿! Aurex TY-AK1/東芝エルイートレーディング 【キーパーソンに訊け!】

2016年3月、東芝の音響機器ブランドだった「Aurex」の復活が話題になった。ハイレゾ対応のCDラジオという第1弾製品の好評を受け、2018年3月には、第2弾製品も発売。ハイレゾ対応のCDラジカセ「TY-AK1」は、カセットテープの音源もハイレゾ相当の音質にアップコンバートする機能を搭載し、こちらも大きな話題を呼んだ。製品を発売する東芝エルイートレーディングを訪れ、ブランド復活の背景や製品開発のねらいなどを訊いた。

思い出のカセットテープを高音質で聴ける これぞ2018年のラジカセのあるべき姿 !

<キーパーソンはこの人>
東芝エルイートレーディング株式会社
取締役 営業統括
渡辺利治さん

アナログでもデジタルでもいい音を楽しんでいただけます。

約四半世紀ぶりに復活したブランド

2年前、あるオーディオブランドの復活が話題となった。それは東芝の「Aurex」。本誌の読者ならばご存じだろうが、1970年代〜1980年代にかけて多数のシステムコンポやラジカセなどの製品を世に送り出したものの、1992年を最後に消滅してしまったオーディオブランドだ。

1987年のAurexカタログ。CDラジカセのRT-CDW70X(当時の小売り希望価格は7万8000円)は、当時主流だった横長スタイルのダブルカセット仕様。テープの種類を指定するだけで、マイコンがテープA・B面へ録音する曲の振り分けを自動計算する機能を搭載していた。

こちらも1987年のAurexカタログ。システムコンポのV94CD(当時の希望小売価格は27万9800円)のカセットデッキは、当然ダブル仕様。CDプレーヤーは好きな曲を好きな順で20曲までメモリー可能、アンプは105ワット×2の大出力、大型キャビネットのスピーカーは3ウエイだ。

Aurex復活の第1弾製品は、2016年3月発売のCDラジオ「TY-AH1000」。高級志向で音質にこだわり、CDラジオとしては業界初となるハイレゾ再生への対応が特徴だ。また、ブルートゥースにも対応し、スマートフォンと連係したワイヤレス再生もできる。

TY-AH1000の好評を受け、2018年3月には、第2弾製品も発売となった。それが、ハイレゾ対応のCDラジカセ「TY-AK1」だ。

「初代(TY-AH1000)のコンセプトはそのままに、ブルートゥースやパソコン接続などの機能を省き、このところ再び注目を集めているカセットテープの再生にも対応したのが、TY-AK1です。最大の特徴は、さまざまな音源をハイレゾ相当の音質で再生できること。ブルートゥースやパソコン接続に対応したカセット再生機能なしのモデル『TY-AH1』も同時期に発売されましたが、現時点での販売数はカセットに対応したTY-AK1のほうが上回っています」

2018年3月に登場した新生Aurexの第2弾、TY-AK1。カセットテープに対応しつつ、ブルートゥースやパソコン接続などの機能を省略して、実売価格2万円台というリーズナブルさを実現した。

こう話すのは、東芝エルイートレーディング取締役の渡辺利治さん。同社は、CDラジオやCDラジカセなどのポータブルオーディオ機器を手がけ、今では国内トップのシェアを誇る。AurexブランドでのCDラジカセ発売のきっかけは、ユーザーからの要望だったという。

「初代のAH1000発売後、『カセットも付けてほしい』という声が思いのほか多く届きました。また、社内の主に50代の社員たちからは、昔聴いていたカセットテープはなかなか捨てられないという話も出ました。カセットテープは、CDやレコードとはまた違って、個人の思い出の詰まったメディアなんです。そんなカセットテープの音源を、いい音で聴きたいというニーズは、必ずあるはずだと思いました」

とはいえ、音質にこだわるAurexブランドの製品では、ただカセットテープを再生できるというだけでは足りない。そこでTY-AK1には、元の音源をハイレゾ相当の高解像度音源に変換するアップコンバート機能が搭載された。

「TY-AK1のアップコンバート機能は、アップサンプリングやビット拡張、倍音生成、多機能フィルターを組み合わせることで、元の音を高解像度化しつつ、ナチュラルなサウンドに仕上げているのがポイント。カセットテープだけでなく、CDやラジオ、MP3などの圧縮音源もアップコンバートさせることができます」

ラジカセというのは特殊進化を遂げた商品

筆者も実際に、カセットテープとCDの音源でアップコンバート機能を試してみた。劇的に変わるというわけではないが、確かに音が変化している。音場に広がりが生まれ、楽器それぞれの音が聴き取りやすくなった印象だ。効果の感じ方は、音楽のジャンルや個人の好みにもよるだろうが、ボーカルの艶は増しているように感じた。

40代前半という年齢であり、ギリギリで「ラジカセ世代」に属する筆者には、TY-AK1のルックスもグッとくる。クラシックカメラのような配色、レベルメーター、ロッドアンテナ、そしてやたらと数の多いボタン類が、いかにもラジカセだ。

再生中の曲の音の強弱に応じて左から右へと光が点灯するLEDのレベルメーターが、ラジカセ黄金期のビジュアルを思い起こさせる。

USBメモリーとSDカードに対応。ハイレゾ音源を再生できるほか、カセットテープの音をデジタル化して保存することもできる。

オーディオ機器らしさを感じさせるシルバーの塗装。プリントされる文字も日本語ではなく、あえてアルファベットが使われている。

「実は、『ボタンがあまり多いと売れない』と、販売店からはいわれました。でも、ラジカセというのは、特殊進化を続けてきた製品なんですね。ユーザーの声にこたえ、不要かもしれない機能も盛り込んで進化を遂げてきた歴史が、ボタンの数に象徴されていると思うのです」

その意味では、カセットテープとハイレゾという、相反するともいえるユーザーからの要望をどちらも盛り込んだTY-AK1は、ラジカセの歴史から見ると「正統」な進化を遂げているわけだ。

部屋から部屋へ、家の中のどこにでも持って行って聴けるのがラジカセのいいところ。ハンドルのあるなしは、超重要なポイントなのだ。

ノーマルテープのほかに高音質のハイポジションテープの再生にも対応(右スイッチ)。カラオケマイク端子(左)も、もちろん装備。

スピーカーは2ウエイ仕様。ハイレゾ再生をうたうだけに、ソフトドームツイーターは40kヘルツを超える高域を繊細に再現する。

中高年はもちろん若い世代からも反響

今、世間ではアナログ回帰の傾向が顕著だ。オーディオの世界ではレコードやカセットテープが見直され、写真の世界ではインスタントカメラやレンズ付きフィルムが復活。スマホ全盛の時代にあっても、紙の手帳の人気は根強いものがある。

TY-AK1の登場も、こうした文脈でとらえることが可能なように思える。デジタルオーディオ機器や圧縮音源の利便性を追い求め続けたことに対する、反動としてのラジカセという位置付け。また、デジタルネイティブな若者の目には、TY-AK1が持つアナログな要素が新鮮に映っているはずだ。

「想定していたユーザー層は中高年層で、実際のメインユーザー層も一致しているのですが、若い世代の人たちからも反響がありました。決してねらっていたわけではないのですが、世の中の流れにうまく乗ったという部分はあると思います」

最後に、Aurexブランドの今後の製品展開について、渡辺さんに訊いた。

「ポータブルでありながら、音質へのこだわりを追求するという、Aurex全体のコンセプトは今後も変わりません。そのうえで、ユーザーからのさまざまな要望を取り入れて、ラインアップを増やしていくことになるでしょう。ラジカセならではの特殊進化を、今後も継続していきたいと思います」

Memo TY-AK1では、カセットテープの音源をUSBメモリーやSDカードにダビングすることが可能。劣化の可能性もある大切なアナログ音源を、デジタル化してバックアップする目的にも使える。

SPECIFICATION
●実売価格例/2万2990円●カセットテープ/録音、ハイポジ再生対応●ラジオタイマー予約録音/10番組●スピーカー/6.4cmコーン型ウーハー×2、2cmドーム型ツイーター×2●再生可能ディスク/CD、CD-R/RW(CD-DA/MP3)●ハイレゾ再生/192kHz/24bitまでのFLAC、WAV(USBメモリー、SDカード)●録音形式/MP3(192kbps)●受信周波数/AM:531kHz〜1710kHz、FM:76.0MHz〜108.0MHz●外部入力端子/φ3.5mmステレオミニジャック(LINE IN)●サイズ/幅350mm×高さ126mm×奥行き218mm●重量/3.0kg

インタビュー、執筆/加藤 肇(フリーライター)

※表示の価格は記事制作時のものです。

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