やさしく解説【HDRとは】4Kテレビ・スマホで採用のHDR規格って何?

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2018年12月1日からスタートしたBS・CS4K放送で採用されたHDR。これは「High Dynamic Range」の略で、従来はできなかった高輝度の表示を可能にする技術。明暗の表現の幅が拡大し、より高輝度な光の表現やハイコントラストな映像を楽しめる。すでに、映画ソフトや動画配信サービスなどでも採用されており、4Kビデオカメラやデジタル一眼カメラを使ってHDR撮影なども行える。この新しい映像技術について解説しよう。

従来の映像コンテンツ(SDR)に比べて、10倍〜100倍もの明るい光を表現可能

地デジ放送などの従来の映像コンテンツは、最大100nitまでの明るさを表現できた。
しかし、最大100nitでは、実際に肉眼で見ている光の強さを十分に描写することはできず、晴れた空を撮れば、太陽の強い光は白く飛んでしまう。

また、室内の明るさに露出を合わせて写真を撮ると、窓の外の景色は同様に白く飛ぶ。
逆に、窓の外の景色に露出を合わせると、室内は暗く沈んで見通しが悪くなってしまう。
こうした明暗のダイナミックレンジの狭さを解消し、より現実に近いリアルな光を表現できるようにしたのがHDRだ。

HDRでは、規格上、1万nitもの高輝度表示が可能で、これは現実の光に限りなく近い。
一般的な映画ソフトのHDRでは、おおむね1000〜3000nitほどの光の表現をしている。
それでも、SDRに比べて、10倍以上の光の強さが表現でき、映画館のような暗い環境で視聴することを考えると、十分にリアリティーのある映像が表現できる。

明暗差の大きい映像の見え方の違い(イメージ図)

SDRでの見え方(出典:EIZO)
日陰の暗い部分が黒つぶれ

www.eizo.co.jp

SDRでの見え方(出典:EIZO)
日陰の黒つぶれを防ぐと日向が白飛び

www.eizo.co.jp

HDRでの見え方(出典:EIZO)

www.eizo.co.jp

4K放送だけでなく、映画ソフト、PCやゲーム機、デジカメやスマホでも採用

HDRは、実は4K放送のためだけの技術ではない。
4Kコンテンツは、基本的に4K解像度、広色域規格、そしてHDRの3つがセットになっており、UHD BDソフトは多くの作品がHDR収録となっている。

同様に、動画配信サービスでも、4Kコンテンツを配信しているサービスでは、HDR収録のコンテンツも配信している。
このほか、PCではWindows 10がHDRを正式にサポート、ゲーム機のPS4もHDRに対応しており、最新のゲームではHDR対応となっているものも増えている。

また、デジタル一眼カメラや4Kビデオカメラ、スマホの内蔵カメラでもHDR撮影に対応した製品も登場してきており、自分でHDR映像を撮影し、対応したPCでビデオ編集をすることもできる。

HDRには、HDR10やHLGなど、いくつかの方式がある。

HDRには、いくつかの方式がある。
UHD BDや4K動画配信サービス、PCやゲーム機で採用されているのは、「HDR10」という方式。
4KテレビやPC用の4KモニターでHDR対応となっている製品は、このHDR10方式には必ず対応している。

映画コンテンツでは、このほかにドルビービジョンやHDR10+といった方式もある。
これらは、映像情報をHDRの10ビット記録から12ビット記録へ強化するなど、より表現力を高めた上位規格だ。

これらで記録されたコンテンツを視聴するには、再生するプレーヤーや4KテレビもドルビービジョンやHDR10+に対応する必要がある。
しかし、どちらもHDR10と互換性があるので、4KテレビがHDR10方式に対応していれば、ドルビービジョンやHDR10+に非対応ならばHDR10で映像信号を送り出す仕組みになっているので、HDR10対応の4Kテレビならば、HDR映像で視聴することは可能だ。

4K放送で採用されたHLG方式は、HLG対応のディスプレイでないとSDR表示になる。

4K放送で採用された方式が、HLG(ハイブリッド・ログ・ガンマ)だ。
HDR10などの方式は、非対応のディスプレイ用に従来のSDR映像も収録する必要があるが、HLGはSDRとHDRの互換性のある方式なので、同じ映像のまま、HLG対応ならばHDR表示になるし、HLG非対応ならばSDR表示になる。このため、転送レートに制約のある4K放送で採用されている。

そこで少々問題となるのが、HLG方式だけはきちんとHLG対応でないとHDR表示ができない点だ。
2018年、および2019年発売の最新の4Kテレビは、ほとんどがHLG対応となっているが、それ以前の4Kテレビでは、HDR10には対応していても、HLGに対応していないことが少なくない。
PC用のHDR対応モニターの多くも、HLG非対応ということが多い。

このため、「HDR対応の4Kテレビだから、HDR表示だ」と思っていても、4K放送だけはSDR表示で見ていた、ということもありうる。
これから、4Kテレビを購入する場合は、HDR10とHLGの両方に対応していることを確認するといいだろう。

このほかの対応策としては、シャープの単体4Kチューナーの「4S-C00AS1」を使う方法がある。
これらの製品は、HLG→HDR10変換機能を備えるので、こうしたチューナーを組み合わせることで、HDR表示が行えるようになる。

まとめ 4K放送を存分に楽しむならばHLG対応かどうかを確認

BS・CS4K放送において、NHKでは、HDR収録の番組には、電子番組表でHDRであることが表記されているし、民放各局の放送は、すべてHDR収録だ(SDR制作のものをHDRに変換した番組も含まれる)。
このため、4K放送を存分に楽しむならば、HLG対応の4Kテレビを選ぶようにしたい。

基本的に、2018年、2019年モデルならば、HLG対応なので心配はないが、BS・CS4K放送用チューナー内蔵機ならば、必ずHLG対応なので、スペック確認がわかりにくい、という人は、4K放送チューナー内蔵かどうかで選ぶといいだろう。

HDR収録の作品は、眩しい光の再現や暗い場面の見通しの良さが向上するなど、現実に近いリアルな映像が楽しめる。
今までにない映像表現を活かした番組やコンテンツも増えてきているので、ぜひともHDRコンテンツに注目してほしい

◆鳥居一豊(AVライター)
オーディオ、AVの分野で活躍するAVライター。専門的な知識をわかりやすく紹介することをモットーとしている。自らも大の映画・アニメ好きで自宅に専用の視聴室を備え、120インチのスクリーン、有機ELテレビなどを所有。サラウンド再生環境は6.2.4ch構成。

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鳥居一豊(AVライター)

オーディオ、AVの分野で活躍するAVライター。専門的な知識をわかりやすく紹介することをモットーとしている。自らも大の映画・アニメ好きで自宅に専用の視聴室を備え、120インチのスクリーン、有機ELテレビなどを所有。サラウンド再生環境は6.2.4ch構成。

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