家電メーカーが恐れる「コモディティ化」。コモディティ化とは、製品やサービスの品質や機能などが、競合メーカー等で大差ない状態になったことを指します。エアコンなどの白物家電も「均一化」が進んでいる分野の一つ。しかし、ダイキンが新しい発想でこのエアコンのコモディティ化を防ごうとしています。

家電のコモディティ化(均一化)が進んでいる

低価格の中国製品が売れていく

日本の家電メーカーが、なにより恐れるのは、家電のコモディティ化です。今、一番コモディティ化が進んでいるのは、「平面テレビ」でしょうね。

多少の画質差があっても、皆、定められた規格をクリアしているので、機能品質はどれも同等です。差がない。そうなると価格に勝る中国製が売れるわけです。デジタルは「均一化」させるためにできた技術ですから、その技術で成り立っている「平面テレビ」は、いち早くほぼ完全なコモディティ化となったわけですが、アナログ技術が幅を効かせている白モノ家電も、これに近い状態になりつつあります。

そこにダイキンから「ちょっと待った!」コール。ダイキンは、別視点の商品でコモディティ化を防ごうとしています。

画像: 低価格の中国製品が売れていく

省エネエアコンの弊害

デザインが美しくない

夏、エアコンのレポートの依頼が来ます。テーマは判で押したように「省エネ」と「お買い得」。年々、エアコンを使う期間は伸びる一方ですから、「電気代」が重要なのは、よく分かります。しかも、国も同意見で、経産省の指導下、トップランナー方式で省エネエアコンの開発を進めさせました。

トップランナー方式というのは、今の省エネエアコン(とは言っても、適応畳数など、幾つかのグループに分かれますが)の中から一機種選定されます。それがトップランナーです。各メーカーは数年で、エアコンの消費電力の平均を、そのトップランナーレベルにしなければならないと言う、実に過酷な開発を強いたわけです。

このため、各メーカーは、全力でこれに取り組みます。が、使える手は決まっています。そのため、ここ10年でエアコンはすっかり前へのせり出してしまいました。下に居ると不安を覚えるほど、前へせり出しています。これは、熱交換器を理想的な形状、円筒にし、省エネ化したためです。省エネ性能は「さすが!」なのですが、まぁ美しくないですね。花より団子で、実を取ったわけです。

今、エアコンは3.1台/世帯だそうで、ほぼ一部屋一台の時代です。便利なことこの上ないのですが、部屋的にはかなり醜い状態です。

薄型デザインと「色」にこだわったエアコン「risora」

薄くて性能がいいエアコンが登場

どこかが「薄い」格好のイイ エアコンを出さないモノだろうか?

その想いに答えてくれたのが、2018年3月30日に発売されたダイキンの「risora(リソラ)」です。

厚みは185mm。ギリギリまで薄くしたエアコンです。とは言っても、エアコンの機能はキチンとしています。また、当然ですが、デザイン評価は非常に高い。日本のグッドデザイン、iFインターナショナル・フォーラム・デザイン、ドイツのレッド・ドット・デザイン、とメジャーどころを全て受賞しています。

画像: 【ダイキンの薄型エアコン】risora(リソラ)が勝負の二年目「新しい価値」への挑戦とは?
画像: 厚みは185mm

厚みは185mm

その薄型デザインと同時に凝ったのは「色」です。インテリアに合わせて7色から選ぶことができます。

画像: 薄くて性能がいいエアコンが登場

2018年の実績は?

カラーのエアコンが売れるのは難しい

で、売れたのが、5万台。エアコンの国内出荷台数は、900万台以上ですから、0.56%。これでは売れた内に入りません。

特に、色が標準だけでも2色、受注が5色では、生産、管理効率が非常に悪いです。エアコンがほとんど、ホワイトなのは、管理を楽にするためです。エアコンは、畳数毎に製品を作っています。これだけでも6畳、8畳、10畳、12畳、14畳、18畳、20畳、23畳と8種類あります。色数が3色だと、在庫は24種類と跳ね上がります。

同様なことは、内容量でシリーズを組む冷蔵庫、洗濯容量でシリーズを組む洗濯機にも言えます。このためこれらは、できる限り色を減らします。最も無難なのは、白。文句が出にくい色だからです。

これに対し、ダイキンの判断はこうです。「デザイン性に富み、部屋の演出にも使えるエアコンがあること自体が認知されていない。ユーザーが認知してくれれば、頑張れる。

そうなのです。今までなかったわけですから、ユーザーは認知していないわけです。このためテレビCMをうっているわけです。ただCMをうったら、すぐ売れるかと問われたら違いますね。そんなに甘くはありません。

また発表会で公表された購買重視ポイントでは、「薄さ」が40%、パネル(デザイン、質感、色)が27%、部屋のインテリアとの調和が8%。しかもカラーパネルの購入者は33%。他はホワイトパネルですから、カラーがバカ売れするのは、非常に厳しいと想います。

risoraの新しい試みとは

●ラッピングにより驚くほど内装に溶け込む

そして2019年の5月に追加されたのが、何とsangetsuの壁紙をラッピングしたrisoraでした。

これが中々面白い。今の日本の壁は多くの場合、板剥き出しにはしません。壁紙を貼ります。それと同じ壁紙でエアコンをラッピングしようという考えです。これは素敵な思いつきです。と言うのは、壁紙と樹脂は中々マッチングしません。が、壁紙をまとうと話が変わります。

馴染むと言うと言いすぎかも知れませんが、かなり溶け込みます。これが10種類追加されたわけです。「チョークドオーク」「チーク」「ゼブラウッド」「グレーウォールナット」「パールスタッコ」「大理石(ビアンコ)」「コンクリート(白)」「コンクリート(黒)」「和紙」「レザー(ヴィンテージ)」。個人的には、革の質感が実に上手く出ている「レザー」がいいです。

画像: パネルカラー:レザー(ヴィンテージ)

パネルカラー:レザー(ヴィンテージ)

画像: パネルカラー:大理石(ビアンコ)

パネルカラー:大理石(ビアンコ)

ダイキンがrisoraを推進する理由

文化の創造=非コモディティ化

ダイキンは何故、こうまでしてrisoraを推進するのでしょうか?

一番大きなことは、エアコンの選択基準が変わると、非コモディティ化につながるからです。

今、いろいろなモノが画一化されている工業の時代です。マンションに住み、コンビニ、ファミレスで食事、カフェもチェーンです。しかし、これでも人はそれぞれの個性に合わせて生きています。そう間取りが同じだからと言って、同じインテリアになりませんし、食事のメニューは人毎に違います。

そう。画一でいいところと、そうでないところを、選んでいるというわけです。例えばスマートフォン。一番多いのはiPhoneです。しかし、これに付けるケースは皆、違います。その上、デコったり、ストラップを付けたり、自分らしさを出します。スマートフォンは活性市場ですが、個性を出すためのケース市場などは、それ以上に活況を呈しています。

もうお分かりだと思います。今までのエアコンは、あれば良かったのです。このため商品機能に差別化が出来なくなるとコモディティ化したわけです。しかし、部屋に合わせて選べるとなる文化が浸透したらどうでしょうか?部屋のパーツ(インテリア)ですから、別の付加価値勝負ができるわけです。

画像: リソラ3Dシミュレーション。 自由にカスタムして内装のシミュレーションができる。 daikin.3cata.com

リソラ3Dシミュレーション。
自由にカスタムして内装のシミュレーションができる。

daikin.3cata.com

これは、商品が熟してきた時に使える方法の一つですが、根付かせるのが難しい。しかし、努力の甲斐あり、根付かせることが出来ると中国メーカーなどは手を出しにくくなります。同じモノを大量生産することばかりですから。逆に日本は家内制手工業の灯はまだともっています。実際、sangetsuの壁紙をダイキンのrisoraにラッピングするのは、ダイキンから委託を受けたメーカーがするのです。

新しい文化(やり方)の創造は、市場形成にも役立ちますし、商品に新しい魅力を加えます。risora、ダイキンの動きに注目です。

◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オ
フィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があ
り、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。

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