【麻倉怜士の4K8K感動探訪(3)】2K/4K/8Kの画質は違う? 変わらない? NHK紅白歌合戦の視聴で分かったクオリティの違い

家電・AV

画質評論家として2K、4K、8Kのクオリティの違いをよく話すことがあるが、実際、生放送の同一番組で、それをチェックする機会は、ほとんどない。大晦日恒例の第70回(2019年)NHK紅白歌合戦は、まさしくレアチャンスであった。2018年11月から設置している、シャープの80型8Kテレビ「8T-C80AX1」で、紅白をBS8K、BS4K、地上波2Kと比較した。

執筆者のプロフィール

麻倉怜士(あさくら・れいじ)

デジタルメディア評論家、ジャーナリスト。津田塾大学講師(音楽理論)、日本画質学会副会長。岡山県岡山市出身。1973年、横浜市立大学卒業。日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。高音質ジャズレーベル「ウルトラアートレコード」を主宰。
▼麻倉怜士(Wikipedia)
▼@ReijiAsakura(Twitter)
▼ウルトラアートレコード(レーベル)

地デジは「アップ」、4K8Kは「引き」の映像

まず、昨年同様、画づくり、フレーミングで地デジと4K/8Kは違う部分が多かった。
フレームが違う。地デジは出演者に「アップ」で迫るが、4K/8K放送では「引き」の映像で、 舞台転換、舞台の上での歌手へのステディカム撮影、クレーンの動き、客席端のモニターに映る画像……
を見せ、まさにホールに座って眼前に紅白の舞台を見ているような体験が得られた。

この部分は昨年と同様なのだが、今年は舞台の背景がLEDの大型ディスプレイになったことで、得られる情報量が地デジと4K/8Kではまったく違ったのである。LEDディスプレイに、その曲や歌手を引き立てる、さまざまな映像を流すのだが、4K/8Kは引いて撮っているから、その関係性がとてもよく分かり、背景との関連でその曲をエンジョイできた。

一方、地デジはアップが多いので、背景でどんな映像が流れているかがよく分からない。地デジ視聴者が圧倒的に多いわけで、もしこのままLEDディスプレイ路線を続けるなら、次回は対策を考えないとならないだろう。

シャープの80型8Kテレビ「8T-C80AX1」で、紅白をBS8K、BS4K、地上波2Kと比較(筆者の事務所で撮影)。

色の「抜け」の良さとパワー感。やはり4Kは良い

では、画質はどう違うか。地デジはそう悪くはないと思った。8Kまでアップコンバートして80インチの超大画面で見るわけで、昨年ははかなり「甘かった」と記憶しているが、今年の地デジは、ディテールこそいまひとつだが、コントラストと質感は意外によかった。さらっとした質感で、比較的ナチュラルで滑らかだ。

では4Kは? さすがに4Kはまったく違う。非常にディテールまでしっかりとしている。色の透明感がよく、HDRが階調の数を増やしている。色の「抜け」の良さ、全体に漲るパワー感、細部の素材感など、やはり4Kは良いと思わせる高画質だ。

では8Kはどうか。圧倒的な精細感というより、圧倒的な上質感だ。柔らかい、暖かい……。
4Kまでは、ディテールはくっきりとした方がよいという、鮮鋭感が右肩あがりの論理できていたが、8Kは違う。緻密さとグラテーションや彩度感……といった映像技術の進展の上に、さらに細かく、さらに彩度が高くなるというものではなく、より粒子が細かく、その数が圧倒的に増え、より高密度に詰めている。

とげとげしいところや、人工的なところがまったくなく、非常にナチュラルな映像だ。ごく細部まで滑らかで、すべらかな、馥郁(ふくいく)とした暖かな画調が8Kの本質と分かる。非常に精細なので、むしろ「ディテール感」より、自然さのほうが目立つ。細部までグロッシーで神々しい画調といえよう。2Kから4Kへの進化は、テレビという人工的な映像メディアを高度化した軌跡だが、8Kはまさに神が与えたスーパーナチュラルな画調という言い方もできよう。

オブジェクトの持つ本物感を表現する8K

もう1度、4Kを見る。上質さでは8Kが圧倒的だが、明るさ、コントラスト感では4Kも良い。画素サイズが粗いほうが、微少な変化が強調されやすいということなのだろうか。8Kは、4Kの次にみると、ややおとなしい感じがするものの、非常な細部まで色と階調を強調なしに描いていることが分かる。化粧をした肌でも、生体が持っているアクティブなディテール感が、そのままの形で滑らかに、深みを持ち、しかも上品に再現されるのが8Kの素晴らしさだ。強調感や演出感を控え、オブジェクトの持つ本物感を生成り的に表現するのが8Kだと、紅白で分かった。

ラグビー選手の黒ジャケットの艶感、リトル・グリー・モンスターの銀の衣装の細部までのキラキラした反射感、日向坂46のフリル衣装の襞のシャドーの質感……まで生々しく、明瞭に映し出されることに感動。HDRだから、電飾が白く飛ばずに、あるべき色を保っている。今回は背景がLEDディスプレイだが、HDRの威力で、正確なグラテーションが再現されているのだ。 ゲスト審査員の背景の正月の松飾りの枝振りまで細かく見える。床の反射が生々しい。

今回の8K紅白はアップが多かったのも特徴。原則的に「引き」に強い8Kだが、アップでは汗のカラフルなグラテーションの生々しさが凄かった。8Kで見る幸せをたっぷり味わった紅白であった。

文◆麻倉怜士(デジタルメディア評論家)

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麻倉怜士(AV評論家)

デジタルメディア評論家、ジャーナリスト。津田塾大学講師(音楽理論)、日本画質学会副会長。岡山県岡山市出身。1973年、横浜市立大学卒業。日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。高音質ジャズレーベル「ウルトラアートレコード」を主宰。

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