デザイン面での大きな特徴は、フロントカバーを水平のラインで覆っているところ。本体正面に空気の吸入口があることを感じさせず、ミニマムなデザインでまとめたプロダクトデザイナーの深澤氏はすごい。本機は部屋の隅に置けるように、通常のボックス形状ではなく、背面を部屋の90度角にピッタリと置けるよう、上面から見て台形のような形状だ。
今回のスゴ腕家電ファイル
空気清浄機 EP-VF500R
「しまった!」金田一耕助のように思わず駆け出し、そのまま飲み屋に駆け込み、勢いよく話したくなる!そんな事件な製品を毎月ファイリング。その事件性を“スゴ腕”家電探偵こと滝田勝紀が丹念に捜査して暴く!
解説者のプロフィール
滝田勝紀(たきた・まさき)
クリエイティブ・エディター&プロデューサーで、家電スペシャリストとして「All About」の家電ガイドを務める。30代男性向けのオフを充実させる電子雑誌『ds』編集長に就任。ドイツで開催される「IFA」ほか、海外展示会取材経験も豊富。
今回の事件家電ファイル
日立グローバルライフソリューションズ
「EP-VF500R」
実売価格例:9万9000円
高機能さをミニマムに包み込む これこそ理想のデザイン空気清浄機だ
かつて某イベントで「道具は”壁に寄っていくもの”と”体に近づいていくもの”の二つに分かれる傾向がある」と、プロダクトデザイナーの深澤直人氏が語っていた。家電も当然道具であり、その範疇である。実際に今回、氏がデザインした空気清浄機は、壁際どころか、まさに今、子供たちの間で大流行している”すみっコぐらし“だ。
すみっコぐらしとは?
すみっこが落ちつくちょっぴりネガティブなキャラクターたちの物語。さむがりの“しろくま”や、自信がない“ぺんぎん?”、食べ残し(!?)の“とんかつ”など、子供たちに大人気で、映画化もされている。
昨今の、空気清浄機は360度効率よく吸排気をすることを考え、部屋の中央に置くことが推奨されるものも増えている。だが、本機は部屋の隅に置けるように、通常のボックス形状ではなく、背面を部屋の90度角にピッタリと置けるよう、上面から見て台形のような形状に仕上げた。
おそらく、これにより部屋の角特有のデッドスペースがなくなり、狭小な日本の住宅スペースを効率的に使えることはもちろん、空気やホコリが対流しがちな場所、つまり、淀みがちな部屋の角に空気清浄機を置くことで、より効果的に空気中の汚れを吸い集めることができるようになる、ということだろう。
フロントカバーを水平のラインで覆っているところも、デザイン面での大きな特徴。本体正面に空気の吸入口があることを感じさせずに、ミニマムなデザインでまとめているのは、さすがは深澤氏。汚れた空気を強力に吸い込むことを示唆しながらも、一つのテクスチャーのように仕上げたことで、必要以上にデザイン的な主張はしない。このバランス感覚は秀逸だ。
ココが事件だ!
プロダクトデザイナー深澤直人氏がデザイン
家電や家具、インテリアに至るまで手がける、国際的にも著名なプロダクトデザイナー。英国王室芸術協会の称号を授与されるなど受賞歴多数。2018年、「イサム・ノグチ賞」を受賞している。
ココが事件だ!
背面が部屋の角にピッタリとフィット
ココが事件だ!
各種デザイン賞を受賞した調和的デザイン
空気清浄機 深澤直人氏デザイン
EP-VF500R
※価格は記事作成時のものです。
解説/滝田勝紀