2020年秋、IzumiはZ-DRIVE ハイエンドシリーズから6枚刃の新モデルIZF-V990-N、IZF-V950-Sを発表しました。刃は多ければいいというものではありません。ヘッドが大きくなると扱いにくくなりますし、価格も上がります。それでもIzumiが6枚刃にしたのは、それらを上回るメリットがあったからです。
シェーバーの国内シェア3位に躍り出た「マクセルイズミ」
白物家電のシェアは、よほどのことがない限りひっくり返すのは難しいものです。しかしシェバー分野でじわじわとその勢力図が変わりつつあります。日本でシェーバーというと、海外メーカーの「ブラウン」「フィリップス」。そして「パナソニック」「日立」が大手。特に、「ブラウン」「フィリップス」「パナソニック」は不動のトップ3。
ところが、この4〜6月、いわゆる第二四半期の売りで、3位が入れ替わったのです。3位につけたのは、日立ではなく、マクセルイズミ。(2018年までは泉精機製作所。2019年にマクセルの傘下に入り、マクセルイズミに社名変更)ブランド名は「Izumi(イズミ)」です。
2020年秋、IzumiはZ-DRIVE ハイエンドシリーズから6枚刃の新モデルIZF-V990-N、IZF-V950-Sを発表しました。それはどんなモデルなのでしょうか?
新モデルは「6枚刃」
5枚刃モデルとの違いは?
床屋では一枚刃の剃刀を使用し、刃の切れ味と腕で勝負の世界です。そして100年以上の歴史があります。「優しい」(気持ちいい)と、「きれいに」「深く」とが合わさった匠の技です。
パナソニックの5枚刃が世に出たとき、本当にビックリしました。とにかくヘッドがでかい!この5枚刃の電気シェーバーは、剃刀の扱いが下手で使えない人が作っただけあって(正確には、急いでいる時、自分の肌を切ってしまった)、肌に押し当てて滑らせるだけで剃れてしまう優れもの。
5枚刃は、「早く」「深く」剃るというニーズのためにできました。当たる面が大きいと早く剃ることができます。また面積が大きいと力が分散しますので、必要以上に肌を刃に巻き込むことはありません。要するに肌に無理なく深剃りできるというやつです。
6枚刃は、この延長線上で開発されたものです。ただし刃は多ければいいというものではありません。ヘッドが大きくなると扱いにくくなりますし、価格も上がります。それでもIzumiが6枚刃にしたのは、それらを上回るメリットがあったからです。
まず、早剃りですが、同社の2019年の5枚刃モデルに比べて、「当たり面積」で約18%アップ。「肌ストレス」で約17%ダウン。これは分かりやすいですね。しかし「早剃り」は、前後方向で30%以上早く剃れるデーターが出ています。6枚刃は確かに刃当たりの面積を増やしますが、それだけでは、これほどまでの時短になりません。Izumiは刃のあり方を根本から見直しています。
その一例が、内刃の支え方。内刃はモーターの振動を拾い左右に動く働きをします。よくあるのが、中央のみで支える方法。そうすると中央部と端部で押圧が違います。支えがない端部は、押圧が弱いため、それだけ皮膚に密着しません。つまり剃れないのです。今回、外刃と内刃の一体型ですので、それを打破すべく、端部をスプリングで固定。このため、適度な押圧を保つことができ、中央と同じような剃りを端部でも実現しています。
こう言った細かいところの詰めが、この6枚刃を支えています。
6枚刃以外のメリット
3年間交換不要の刃
買うときにあまり気にしないかもしれませんが、電気シェーバーの場合、替刃のタイミングはとても重要。これによりランニングコストがかなり違ってくるからです。通常の場合、刃は1〜1.5年で変えます。長いものでも2年。ところが、Izumiは3年間交換不要。これは大きなポイントです。
刃はステンレス製。これを日本で加工します。元々、当分野に参加したのは刃の加工が得意だったからですが、その技術を磨き上げたわけです。この3年は大きなアドバンテージです。
ちなみに、6枚刃の外側2枚は、ゴールドに光っています。これはチタンコーティングがしてあるためで、滑りをより滑らかにするためです。
1ヶ月無充電で使える
充電などは、今まで通りのスペックです。充電池などは年々スペックが上がっていますが、それでトップ性能を騒ぐより、「1回充電すれば1月使えることを確実」にという考えです。
充電時間は2時間でフル。また電源コードで充電させながらも使うことができます。何の心配も入りません。
剃り心地は?
5日間伸ばしたヒゲにチャレンジ
発売前にサンプルを手にすることができましたので、早速剃ってみました。軽くあて、ゆっくり動かすと実によく剃れます。一番驚いたのは、剃り残し感が皆無ということでしょう。その位気持ちよく剃れます。実は、この6枚刃モデル、ヘッドは左右に触れますが、前後に触れません。ヘッドが3Dに動くことを強調するメーカーが多い中、そこはちょっと古風です。が、刃の当たりがそれを上回る働きをします。実に剃りやすい。見た瞬間感じる、「ゴッツイ」「ヘッドでか」というちょっと鈍な感じは全くありません。すごいモデルです。
チタンコーティングされているためでしょうか、鼻の下などキワの部分も無理せず、痛くなく剃れます。ちょっと嬉しくなるモデルです。
驚きの価格に注目
さて、このモデルの価格についてですが、実際おいくらだと思いますか?
3万円、4万円?いえ、違います。
1万9800円(税抜)。なんとミドルクラスの価格です。シェアを追い上げている話を冒頭書きましたが、その勢いそのものを感じさせるモデルです。
ちなみに、5枚刃は同社のソリッドシリーズのトップモデルとなっています。価格は、9800円(税抜)。聞いた瞬間、ちょっとクラッときました。
電気シェーバー分野で、かなり大きな変化が起きそうです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーを繋ぐ商品企画コンサルティング「ポップアップ・プランニング・オフィス」代表。米・食味鑑定士の資格を所有。大手メーカーでオーディオ・ビデオ関連の開発に携わる。趣味は東京散歩とラーメンの食べ歩き。