今や電気圧力鍋と言えば2万円を切るものも多くあり、電気鍋ならどこのメーカーでも作れます。その電気鍋の中で人気なのが、シロカの「おりょうりケトル ちょいなべ」。お湯を沸かすことはもちろん、袋入りインスタントラーメンを調理したり、牛乳をちょうどいい温度で沸かしたりとその使い道は自在。今回はこの製品を実際に使ってレビューします。
シロカ「おりょうりケトル ちょいなべ」をレポート
こんな話を聞きました。ホテルの電気ケトルでインスタントラーメンを作り食べる輩がいるそうです。普通はカップ麺ですよね。電気ケトルで湯を沸かし、カップ麺を作ります。ホテルにはカップはあっても、丼をおいてあるところはありません。少なくとも、私は知りません。そんな中でも、容器が付いているカップラーメンではなく、袋インスタントラーメンを食べる人がいるのですね。ちょっと不思議な話ですが、こんな話がいろいろな所から聞こえてきました。どうも都市伝説ではない様です。
それならばと、これで商品を作れば、売れるのではと考えたのがシロカです。今回はシロカの「おりょうりケトル ちょいなべ」をレポートします。
完成度の高い電気なべ
家電量販店に行けば、2万円を切る値段の電気圧力鍋がずらりと並んでますよね。今や電気鍋はどのメーカーでも作れます、作ります。では「ちょいなべ」人気のポイントはどこにあるのでしょうか?
それは今、流行している「鬼滅の刃」の中にも出てきます。主人公の竈門炭治郎は、炭焼き屋の息子。そのため彼は料理が得意です。仲間のためにも炊事します。仲間から「美味いね」と言われた時、彼は「料理は火加減。オレ炭焼き屋の息子だから」という答えをします。
ガスの火でも、強火、中火、弱火、とろ火とありますが、ポイントになるのは弱火ととろ火。この2つを正確に使いこなせれば、料理は美味しくできます。電気はガスの様に過剰なエネルギーを持たないので、この微妙な温度コントロールは大得意。そして使い勝手のポイントは、ここを火力の強さではなく、温度でコントロールできること。昨年から、電気ケトルは温度コントロール付きが主流になりつつありますが、鍋も同じ。湯の温度でお茶、コーヒーの抽出が変わり味が変わる様に、食材への火加減はものすごく重要です。
ちょいなべは、その点、火加減ではなく温度でコントロールする様にできています。火加減という手段ではなく、それがもたらす効果でコントロールするのですから、とてもナイスです。
例えば、ガスでインスタントラーメンを煮ると吹きこぼれます。ところがこちらは吹きこぼれません。温度計を入れてみると、99.5℃。ゆがくに十分な温度です。それを正確にキープするので吹きこぼれない。「電気ってすごい。」改めて思いました。
「ちょいなべ」は器として使えるか?
しかし、いざ「ちょいなべ」から直接食べるとなると体がひるみます。丼のようにギリギリまで体に寄せられない。熱いのです。しかも取手を持っても結構重い。鍋で作ったラーメンを丼に移して食べるのと全く違うのです。慣れれば良いのでは?と思い、袋麺1パック(5袋分)、食べてみました。ダメですね。本能的に、熱さに体がついていけないのです。その上、底に段差があると食べにくいことが明確になってきました。
大体、文字ができるまえでも人間は、調理と器は分けていました。この食べ方は超先祖返りというより、個で生活するというのが当たり前という未だかつて人類が経験したことのない、超先取りというべきでしょうか?
その上、ふた置きを用意。鍋敷きを用意しなければなりません。(注 設計的には不要とされていますが、万が一跡が残ると嫌なので・・・)しかも作るときは菜箸が必要。普通の箸だと長さの関係で鍋の上にちょいおきしにくいなど、細かなところが、整っていません。残念な意味で唸りましたね。
では、ツユがなければ、すぐ冷めるのでいけるのではないかと、汁なし台湾まぜそばでトライ。感覚は「悪くはない」。ただ汁がない分、麺は底からとる必要がありますので、深い。
少なくとも私にはしっくりこないところが多々ありました。そこで提案です。「かまどさん電気」のように、長谷川園に鍋部を器として焼いてもらったらどうだろうか?できれば保温性悪く、調理し終わると触れるくらい、口をつけられるくらいの温度の器を作ってもらうのです。
緊急措置的に直接食べるのはありでも、恒常化はできないというのが今の私の感触です。
それでも推せる「ちょいなべ」の魅力
それでもちょいなべは、鍋として優れています。それは低温恒温に強いというとろです。16cmサイズだと、ミルクパン(パンはフライパンのパン)を思われる人もおおいでしょう。お菓子作りに欠かせないこの小鍋は、牛乳を温めるのにもちょうど良い大きさです。
牛乳は温度でいろいろ変わりますよね。特に変わるのは68℃前後。以降、牛乳に膜がはります。要するにタンパク質が固まる温度というわけです。微妙な温度変化に対応できる小型鍋という目でみるとちょいなべは超優れものであると言えます。
お燗は人肌がいいという贅沢なおとうさんから始まって、夜眠る前にストレス解消のためにぬるい牛乳を飲みたい受験生。そして2月14日、女子力勝負の日のためのチョコレート湯煎にビビる女子中学生。みんなまとめて、ちょいなべでグーです。もちろん、お母さんが小腹が空いたときのインスタントラーメンも緊急措置として活用幅が広い!
また、チーズフォンデュをするにもちょうど良いサイズで、一台あれば、実に超便利なのです。
本体重量(約):1.8kg。
消費電力:1200W。
容量:1L。
セット内容:本体、ケトル、ふた、電源コード、はじめてガイド、取扱説明書(保証書)。
最後に
大技の電気圧力鍋に対し、小技を連発するちょいなべ。双方持てば無敵といえます。
火加減上手の炭治郎のニックネームは「おふくろ」。このちょいなべも火加減上手。しかも、これで1万円をちょっと出るくらい。大騒ぎになるチョコレート湯煎もラクラク。ストレスレスな電気なべ。それがちょいなべです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。