冷蔵庫では省エネ性がよく話題になるが、最近は全体に向上していて、例えば、今回の三菱機の場合、電気代は年間約8400円程度。今や、消費電力よりも食品ロスの解消などに目を向けたほうが有意義だ。今回は、注目の最新5モデルをピックアップ!
目指せ!家電選びの達人今回の家電は「冷蔵庫」
大容量保存、残量管理などが最新トレンド。便利に使えるアイデアが各社から目白押し
在宅時間が増え、食材をまとめ買いする傾向が強まった昨今は、より大容量の冷蔵庫への買い替えを検討する人が増えている。特に、気温が高くなるこれからの季節、冷蔵庫の役割は重要だ。食品の新鮮さを保つ機能、食材管理のためのアイデアなど、最新動向を見ていきたい。
監修◆中村 剛(なかむら つよし)
「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権で優勝の実績を持つ家電の達人。家電製品総合アドバイザー、消費生活アドバイザー。東京電力「くらしのラボ」所長。現在、暮らしに役立つ情報を動画(Facebook)で配信中。
製品バリエーションが豊富
冷蔵庫はメーカーごとの個性が意外に強い
2014年の全国消費実態調査(総務省統計局)によると、冷蔵庫は二人以上の世帯で最も所持されている家電で、普及率98.9%となっている。生活するうえでの必需品だが、買い替えサイクルが長いこともあり、ふだん、関心を持つことは少ないだろう。
冷蔵庫は、外見からはなかなか違いがわかりづらく、どれも似たようなものと思われがちだが、メーカーごとの個性は意外に強い。製品のバリエーションも豊富で、機能や使い勝手、デザインなど、各家庭の生活スタイルに合わせた選択が可能だ。ただ、壊れたらすぐに必要になるため、購入前にじっくりと製品選びの検討がしにくい面もある。
そこで、いざというときにも慌てないよう、本記事を参考に冷蔵庫のトレンドなどを押さえておいていただきたい。
知っておきたい冷蔵庫の最新トレンド
(1)本体幅や奥行きが薄くなっても、庫内は大容量をキープ
真空断熱材の導入で、本体や各室の壁の薄型化が実現。外観サイズはそのままに庫内容量をアップしたり、容量はそのままにサイズを抑えたりが可能になっている。
(2)各室のレイアウトや、庫内の収納スペース が工夫され、使い勝手が向上
見渡しやすい庫内のレイアウトや、デッドスペースの排除、小分けにして整頓する収納スタイルで、食材の管理を簡易化。食品ロスが出にくい状況を作る。
(3)スマホやWi-Fiを活用して、食材の管理のほか、冷蔵庫の使い方もサポート
今回の5機種では、アクア以外はスマホ(Wi-Fi)に対応。スーパーのチラシ情報や在庫管理、位置情報による温度コントロールなど、内容も多様化している。
(4)急速冷凍、微凍結、大容量化、霜付き対策など、冷凍室の機能がさらに充実
まとめ買いやお取り寄せ、ホームフリージングなど、ユーザーの需要に合わせて冷凍機能が充実。新鮮でおいしく大量にストックできるよう進化している。
今回は、注目の最新5モデルをピックアップ。最新事情と、それぞれの特徴を見ていこう。
冷蔵・冷凍の工夫も多彩
食材管理や長期保存を充実させたモデルが増加
●パナソニック
パナソニック機は、冷蔵室の最上段奥にコンプレッサーを配置し、スペースの効率化を図るトップユニット方式や、金属レールの採用でフルオープンにできる引き出しなどを早くから取り入れ、使い勝手のよさに定評がある。
冷蔵性能も充実し、上位機種では、冷ます/急冷/急凍ができる独立した「クーリングアシストルーム」を装備。急速冷凍でおいしく保存できることに加え、お弁当のあら熱取りや料理の下味つけなどにも役立ち、調理のサポートにも対応している。
新製品では、Wi-Fi接続の重量検知プレートで食材管理を行う「ストックマネージャー」のほか、スマホの位置情報を基に庫内の冷却をコントロールする機能を取り入れるなど、IoTを活用したサービスを広げている。基本的な使いやすさも大切にしつつ、新たな方向性を切り開いている。
パナソニック
NR-F657WPX
実売価格例:39万2160円
※WPXシリーズラインアップ NR-F607WPX(600L)
スマホのGPS機能による位置情報と連係した「AIエコナビ」搭載モデル。また、重量から残量情報を管理できる「ストックマネージャー」を採用し、新たな使いやすさを追求した。
IoTを活用した食材管理や庫内温度調整機能に注目
◆ストックマネージャー
残量確認で、買い忘れや二重買いを解消。設定した使用期限が近づくと通知する機能も。
◆クーリングアシスト
冷凍や冷却がスピーディにできる独立ルーム。あら熱取りや下味つけなど、調理のアシストにも役立つ。
◆AIエコナビ
GPSによる位置情報や、AIが学習した生活リズムを基に、庫内温度を調整。買い物先にいることを検知して予備冷房を始める機能など、新しい試みが見られる。
●三菱電機
先進的な冷蔵・冷凍技術が自慢の三菱電機。過冷却現象を応用して瞬間的に食品を凍らせ、解凍せずにサクッとカットできる「切れちゃう瞬冷凍A.I.」(約マイナス7℃)は、使う分だけ解凍できる簡便性で、長年のファンも多い。
同じく過冷却現象を応用した、約マイナス3~0℃の「氷点下ストッカーD A.I.」は、AIの導入でパワーアップ。効率的な冷蔵で保存期間をより長期化し、牛や豚のブロック肉などは、約10日間保存が可能になった。
野菜室も優秀だ。野菜のうるおいをキープするほか、3色のLED光を照射して、野菜のビタミンCなどを増やす技術を、従来から採用している。
専用アプリでは、各室の機能や使いこなし術を紹介し、上手な活用法をナビゲートする。
三菱電機
MR-WXD70G
実売価格例:39万5420円
※WXDシリーズラインアップ MR-WXD60G(600L)/MR-WXD52G(517L)
マイナス温度でも凍らない「過冷却現象」を利用した独自の冷凍技術が特徴。新製品では「全室独立おまかせA.I.」が家庭ごとの使い方を学習し、手間なくおいしい保存を実現する。
断熱性能の高さと鮮度を重視した長期間保存が売り
◆置けるスマート大容量
「薄型断熱構造SMART CUBE」の採用により、断熱性能を保ちながらスリムな幅を実現。大容量でも置きやすく、限られた台所スペースが有効活用できる。
◆全室独立構造/全室独立おまかせA.I.
野菜室や冷凍室など、すべての部屋を断熱材で仕切る構造により、部屋ごとの細かい温度制御が可能に。AIの導入で、省エネや使い勝手がより向上した。
◆つながるアプリ
各室でできることの紹介や、使用状況に合わせた使いこなし術をアドバイス。便利な使用法をナビゲートする。
◆氷点下ストッカーD A.I.
ユーザーの生活パターンを学習・分析。扉の開閉が少ない時間に温度を下げ、最長10日間の保存が可能に。
●シャープ
シャープ機は、ほかでは見られない便利な機能が目立つ。
まず、大容量の冷凍室メガフリーザーは、冷凍ストック派からの支持が高い。170リットルというたっぷりな収納力に加え、引き出しが3段のスライド式になっており、まとめ買いした食品を見やすく保存可能だ。
また、霜取り運転前に低い温度でしっかり凍らせることで、庫内の温度上昇を防ぎ、食品に霜が付くことを抑制する。なお、食品への霜付き対策については、各社それぞれ独自の手法で取り組んでいる。
IoT機能では、登録した周辺スーパーの特売情報を教えてくれるほか、特売品を使ったおすすめメニューまで提案してくれる。情報の提供は音声でもでき、家事をしながら聞くことが可能だ。
ドア開閉の負担をサポートする電動アシストドアや、地震の揺れを感じるとドアを自動ロックする「耐震ロック」など、安全面に配慮した機能も搭載されている。
シャープ
SJ-AF50H
実売価格例:28万2150円
AIoT機能の進化により、お気に入りの店舗や指定した食品の特売情報を通知。まとめ買いに適した大容量冷凍室や、各室に搭載したプラズマクラスター機能も注目。
プラズマクラスターや液晶操作など独自性が目立つ
◆プラズマクラスター
庫内全室に独立したプラズマクラスターユニットを搭載。雑菌やニオイの抑制に効果的だ。冷蔵室では、扉の開閉頻度を分析し、プラズマクラスターの放出量をコントロール。
◆メガフリーザー
深さの違う3段の引き出しで、 整理や出し入れが簡単。大型ローラーを採用し、たくさん収納した場合でも引き出しやすく工夫した。
◆液晶タッチパネル
冷蔵室のドアに液晶パネルを採用。スマホと同じ感覚で、見たい情報を選んで簡単に引き出せる。キッチンタイマー機能も便利。
独自の取り組みが話題
基本機能に加え、デザインや使い勝手にこだわり
●アクア
プロダクトデザイナーの深澤直人氏が手掛けたアクアの冷蔵庫は、リビングに置いても調和するインテリア性が大きな特徴だ。取っ手や凹凸を排したシンプルなフォルムは、家電というより家具に近い。扉部分には、手の形になじむ緩やかな丸みを採用し、見た目のよさと扉の開けやすさを両立させた。
冷凍スペースは、整理しやすく使い勝手がいい2列×3段の6ボックス収納を搭載。薄型の本体は奥行きが小さいぶん死角も少なく、デッドストックが発生しにくい作りになっている。
スマホ連係機能は持たないが、使い勝手やデザインを磨き上げて、所有する楽しさや使い心地のよさを追求したモデルといえる。
アクア
AQR-TZ42K
実売価格例:21万9780円
※TZシリーズラインアップ AQR-TZ51K(512L)
角を丸くしたデザインで、家電っぽさを払拭。大型モデルが人気となったことで、マンションにも置ける420リットルタイプも登場した。
奥行きを抑え、見やすいワイドな庫内が特徴的
◆ワイド冷蔵室
一目で見渡せるワイドな庫内は、奥の食材も見つけやすく、食品ロスの予防に。LEDライトと強化ガラス棚が見やすさをサポートする。
◆6ボックス大容量冷凍室/おいシールド冷凍
大きさの異なる六つの引き出しで、食材を効率的に整頓可能。霜取り運転時に冷気口のフタを閉め、温度変化を抑えるドリップ抑制機能で長期間の冷凍にも対応する。
下の写真のそれぞれ右側が「おいシールド冷凍」保存時
◆クラス最薄の奥行き
庫内の奥行きは約51センチで、最上段でも奥まで手が届きやすい。薄型のボディは家具と面合わせしやすい点も好評だ。
●日立
日立の冷蔵庫は、2段めと5段めにセンサーを搭載し、重量をチェックして在庫管理をする新タイプの冷蔵庫。パナソニックの「ストックマネージャー」と考え方は同様だが、こちらは本体に構造を組み込んでいる。
ストック状況はアプリで確認でき、食品が少なくなると通知が届く。庫内の温度は、「冷凍(約マイナス18℃)」「冷蔵(約2℃)」「常温(約15℃)」に切り替え可能。デザインがシンプルで、リビングや寝室など、キッチン以外にも違和感なく置くことができる。
「冷蔵・チルド」の設定では、食品の鮮度が長もちする「まるごとチルド」モードも利用できるなど、大型冷蔵庫で培った技術を搭載している点も頼もしい。
温度設定が切り替え可能。食品をストック管理できる
◆ぴったりセレクト
庫内の設定温度を冷凍、冷蔵、常温に切り替えられる人気機能、「ぴったりセレクト」を採用。冷凍食品、作り置き、飲み物、冷暗所保存品など、保存する食品に合わせて利用できる。
◆アプリでストック管理
登録した食品の重さを検知し、残量が少なくなるとスマホに通知。購入サイトを登録しておけば、そのまま買い物ができる。
◆フラットデザイン
インテリアになじみやすいシンプルなデザインを採用。キッチンだけでなく、さまざまな空間にマッチ。
まとめ
冷蔵庫では省エネ性がよく話題になるが、最近は全体に向上していて、例えば、今回の三菱機の場合、電気代は年間約8400円程度。今や、消費電力よりも食品ロスの解消などに目を向けたほうが有意義だ。庫内を見渡しやすくしたり、おいしく長期保存できる機能を採用したり、スマホと連係して食材管理をしたりなど、実用的な取り組みが進んでいる。冷蔵庫の進化は、まだまだ止まらない。
※価格は記事作成時のものです。
◆取材・執筆/諏訪圭伊子(フリーライター)