東芝が電気圧力鍋に参入!
猫も杓子もという言葉を使いたいほど、世に電気なべが溢れています。マルチクッカーとしてなら、かき混ぜ治具を取り付けられる電気調理なべをお勧めしますが、時短、そして美味しいということでいうと、電気圧力なべは外せません。材料さえ入れると、加熱時間を含めても20分もあれば用が足ります。むしろ炊飯が間に合わない位です。
そんな激戦区に、老舗 東芝が参入。そのモデル「RCP-30R」を使ってみました。
電気圧力なべと圧力なべの違いは?
便利な調理家電として根付いた電気圧力なべですが、実は欧米で育った圧力なべをかなり、使いやすくアレンジしたものです。
一番の違いは「圧力セレクトがない」ところです。
圧力なべの原理は、加圧により水の沸点を上げ、地上一気圧だと100℃で沸騰する水の沸騰温度を100℃以上にすることにより早く調理することです。ただし、問題も出てきます。温度が高ければ高いほど、煮崩れします。このため、使う食材により圧力を変え食感を確保します。このため圧力なべは高圧、低圧、2つの圧力を持っているのが基本です。
ところが、電気圧力なべには、この2つの圧力はセレクトできません。メーカーが決めてしまいます。一部、合わない食材がなきにしもあらずですが、ほとんどは大きな破綻ないよう設定されています。逆にいうと、選択肢が1つ少なくなったため、使い勝手がグンとよくなったわけです。。
なぜ圧力なべは挫折する人が多いのに、電気圧力なべはほとんどの人が「いいね。使いやすいね。」というのかというと、圧力という圧力なべ特有の要素がブラックボックス化されているからです。要するに普通の電気なべのように使えるからです。
しかし、圧力なべ使いに言わせると、それは、時短、味、食感ともに半端であると言わざるを得ません。もう一つ、上のランクはあるのです。
2種類の圧力を採用したモデル「RCP-30R」
モデル「RCP-30R」は、低圧:1.4気圧、高圧:1.8気圧の2種類の圧力をセレクトすることができます。
では、どう使う分けるかですが、硬いものは高圧、普通のものは低圧が基本です。硬いものというのは、「玄米」「黒豆」「シチュー用の塊肉」「牛すじ」などです。煮込んでもなかなか軟らかくならないものです。それに対し、低圧で調理すべきものは「白米」「サラダチキン」「カレイの煮付け」などです。「サラダチキン」は低温調理、またカレイは身の薄い魚です。このような熱を通らせすぎると、硬過ぎて美味しくないものは、必ず低圧で調理します。
テストしてみると、食材によっても変わるのですが、低圧では、食感、歯触りがあるものが、高圧だとグズグズになってしまう時があります。温度に直すと、1.4気圧の場合110℃、1.8気圧で117℃、ですから、小さくも感じられますが、食感はずいぶん変わります。
このため、迷った時は、低圧で。煮が足らないのは、時間追加で対応できますが、煮すぎるとその日、歯ごたえのない料理を食べることになります。
自動メニューは10種搭載されています。「角煮」「カレー」「煮込みハンバーグ」「煮付け」「肉じゃが」「筑前煮」「スープ」「ポトフ」「白米」「玄米ごはん」。「米炊きを2つもメニューに入れるんかい」という思いがあるものの、今の日本人が食べるものはよく抑えられている感じです。
使い勝手、ディテール品質
そして、使い勝手は、普通に良いです。新しい要素(圧力)を入れた時、普通の使い勝手をキープするのは割と大変です。しかも電気圧力なべは多くの会社が手がけているということは、使い勝手はかなり洗練されています。その中での普通ですからなかなかものもです。
ただデザイン優先のためか、文字はあやや細身。視力が悪いとちょっと見えにくいかもしれない。
ちょっと独特な表現、だけど工夫しているなぁと思ったのは、「70℃調理」。これは「低温調理」のことです。時々ネットでも見られますが、60℃以下の低温調理は、細菌が完全に死ぬとは言えない領域で料理するので、場合によっては、腹痛などを起こす可能性は否定できません。温度を下げさせないための、いい表現工夫だと思います。
また、ディテール品質もかなりいいです。圧力なべのフタは嵌合させるため金属エッジが剥き出しのところがあり、そのエッジが尖っていたりすると切れ出血の可能性があるのですが、ここは上手く丸められています。流石、老舗。
こう言ったトラブルを未然に防ぐ工夫を積み重ねるのは、いかにも日本メーカー製品らしいです。
デザインは蒸気時代を意識した、レトロフューチャーを思わせるところでまとめられています。ある種のノスタルジック感、そして力強さがあります。そのためでしょうか、フタの上にある圧力機構は、シンプルで剥き出し。不用意にピンを触ると火傷する可能性があります。心あるメーカーは、カバーを付けるなどしているのですが。「RCP-30R」は、ほぼ欠点がないので、ここの工夫があればと強く思いました。
まとめ
しかも、料理初心者にも、料理が趣味な人にも使いやすく仕上がっています。デザインもいい。このカテゴリーを彩るモデルの一つと言えます。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。