「ストーンオーシャン」の地上波放送開始など、話題に事欠かない2022年の冬アニメ。すでに盛り上がりを見せています。その中でも特に、アニメ通の筆者が強くおすすめしたい注目作たちを、いくつかご紹介しましょう。
2022年冬アニメの放映作品は57本
再放送のものを除けば、計57作品が放映中の冬アニメ(配信含む)。「鬼滅の刃 遊郭編」や「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」などの放映を楽しみにしていた方も多いのではないでしょうか。他にも「からかい上手の高木さん3」や「進撃の巨人 The Final Season Part 2」など、今期は人気シリーズの続編が目立つシーズンでもあるようです。今回は原作が支持を集めていたアニメ化作品を中心に、注目作を挙げていきます。
明日ちゃんのセーラー服
指先から全身の所作まで「動的な映像美」が印象的
「となりのヤングジャンプ」の人気漫画『明日(あけび)ちゃんのセーラ―服』が待望のアニメ化を果たしました。個人的にも大注目している今期の目玉です。
セーラー服に憧れる主人公・明日小路(あけびこみち)の成長過程や青春を描いたストーリーで、原作の連載開始時から抜群の画力と細かな演出が注目を集めていました。原作・キャラクターデザインを務める博氏は、昨年春のシーズンに確かな支持を得たアニメ「スーパーカブ」の原作イラストも手掛けるなど、少年少女の活躍を美しく演出することに定評のある実力派です。
視聴した感想としては、特に背景の写実的な描写や人体描写など、作画水準の高さが印象的でした。例えば、1話前半のメインとなる初めてセーラー服へ袖を通すシーンや、後半の桜並木を走るシーンでは、指先の動きから全身の所作まで、人体の動きを緻密にアニメーション化することへの熱量を感ました。原作とはまた異なる、動的な映像美を生み出していることが、アニメ化に対する反響の大きさに繋がっているのではないでしょうか。
「明日ちゃんのセーラー服」に関しては、別記事で作品の魅力をお伝えしています。ぜひ合わせてご一読ください。
その着せ替え人形は恋をする
職人を目指す地味男子と人気者ギャルの直球ラブコメ
『その着せ替え人形は(ビスクドール)恋をする』は、ヤングガンガン誌上で人気を集める漫画作品が原作のアニメです。男子高校生でありながら雛人形職人の頭師(かしらし)を目指す大人しい性格の主人公と、クラスの人気者でありながらコスプレに憧れる活発なヒロイン。その2人の出会いやハプニングなどを描く、直球のラブコメ作品です。今期の中では比較的珍しい恋愛モノで、かつ、テーマやキャラクター設定がひとひねりされているため、楽しく視聴できます。
「オタク」をモチーフにした作品はアニメ・漫画などでは珍しくありませんが、その属性を「ギャル」「読者モデル」といった要素を持つヒロインに付与するのは斬新です。また、主題であるコスプレを軸に、服飾・縫製など技術的な面をカルチャーとしてリアルに描写しているのも非常に面白いポイン。単なるラブコメに留まらない魅力も感じられ、今後の展開に期待大です。
スローループ
フライフィッシングを軸とした日常系作品
『スローループ』は「趣味×学生」の日常系作品です。扱う題材は、これまた珍しく「フライフィッシング」。バックストーリーなどを経て、フライ(毛ばり)にこだわる理由や意味、そしてなにより、フライフィッシング自体の面白さが視聴者にも伝わってきます。
原作は、日常系に定評のある「まんがタイムきららフォワード」の連載作品。キャラクターの雰囲気や関係性、ストーリーを含め、リラックスして向き合える安心感も魅力のひとつでしょう。そこに、スパイス的に絡む主人公たちの家庭事情や、1話目での思わぬ出会いと展開など、ストーリーの面白さも注目ポイントです。釣り好きの方なら思わず頷いてしまう「あるある」ネタもあふれていて、今期の中でも隠れた人気作となるかもしれません。
ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜
リアルな警察像を楽しめる
『ハコヅメ』は、警察署の地域課に配属された新人と、刑事課から異動してきたベテランという、2人の女性警察官を主人公に展開される職業モノの作品です。原作漫画のほかTVドラマ版も話題を集めており、普段アニメを観ない方でも「これは観る」枠として録画予約を設定しているのではないでしょうか?
原作者の泰三子氏は、実際に女性警官として10年某県警に務めたのちに漫画家デビューを果たしたという経歴の持ち主。職業経験者ならではの視点で描かれるリアルな警察像が、作品の面白さを一層引き上げている印象です。また、青年誌ならではのダーティでシリアスな題材や描写も多く、ファンタジーより現実感を楽しみたい方にもオススメできます。小さな問題から大きな事件まで、一つひとつ丁寧に向き合う警察の苦労も感じられる本作品は必見です。
平家物語
大人が楽しめる映画のような芸術作品
今期もっとも大きな話題を呼んでいるのが『平家物語』。古川日出男訳『平家物語』を翻案にしています。一人の少女を主人公に、平家の栄枯盛衰や争いの起こる様などを描いていく歴史モノですが、斬新かつ重厚な演出が、映画のような印象を与えてくれます。
オリジナル作品に限りなく近い内容でありながら、脚本・演出・キャラクター・演技・ストーリー・音楽とあらゆる点が高水準で作られており、大人が楽しめる芸術作品とすら言えるクオリティです。フジテレビの深夜枠「+Ultra」では、ハイクオリティかつ他のアニメにない独特の雰囲気を持った作品がたびたび誕生してきましたが、その中でも間違いなく最高クラスの傑出した出来映えを誇っています。
監督を手掛けるのは、『けいおん!』シリーズや『たまこまーけっと』シリーズ、映画『リズと青い鳥』や『聲の形』など、錚々たる作品を率いた山田尚子氏。京都アニメーションを中心にその手腕が確かな評価を得ていたクリエイターで、本作がスタジオ外での初仕事になります。従来のフィールドとは異なる場で、新たな表現に挑戦する様子が見られるのも楽しみなポイントでしょう。
まとめ
「2022年の冬アニメ」のなかから、注目の作品をご紹介しました。今回取り上げた5作は、それぞれが、青春・ラブコメ・日常系・仕事・歴史モノと、さまざまな要素を持つものです。まずは好みに合いそうな作品から試しつつ、興味があればぜひ、他の作品も視聴してはいかがでしょうか。配信で一気に観たい!派の方も、たまにはリアルタイムならではのワクワク感を味わってみては?