コロナ禍ですが、3月は大学進学、就職を機に一人暮らしを始める人も多いと思います。自炊は最大課題の一つですね。今年、タイガー魔法瓶から発売されたのが、マイコンジャー炊飯器〈炊きたて〉JBS-A055。特徴は、「極うま」を冠されたモードを与えられたこと。食べてみると確かに「美味しい」。この美味しさの秘密を深堀りします。
新生活!自炊初心者にピッタリな炊飯器は?
タイガー「マイコンジャー炊飯器〈炊きたて〉JBS-A055」をレポート
コロナ禍ですが、3月になると、大学、就職と、一人暮らしを始める人も多いと思います。そんな中、自炊は最大課題の一つ。しかしキッチンは狭いし、あまりお金もかけられません。雑誌で特集するような家電は、一つあれば御の字というのが普通ではないでしょうか?
そんな中、今年、タイガー魔法瓶から発売されたのが、マイコンジャー炊飯器〈炊きたて〉JBS-A055。実販で、約1万3千円前後です。(2022年2月現在。価格は筆者が店頭で見た平均。)特徴は、タイガーの最大の褒め言葉「極うま」を冠されたモードを与えられたこと。食べてみると確かに「美味しい」。この美味しさ、ちょっと深く追求してみたいと思います。
炊飯の要素
日本人が大切にしてきたお米。お米の取れ高=国の力とされ、江戸期は「加賀100万石」という様に呼ばれました。石というのは、尺貫法で体積の単位。主に穀物を量るのに用いられました。1石は10斗で、180.39リットル。1斗=10升、1升=10合。1合=1食とすると、加賀は91.3万人養えることになります。
それはさておき、当時は、武士の俸禄もお米で支給だったから、お米=お金という感覚。海外ではあまりない感覚と言えます。武士はこの俸禄米を食べ、一部を米屋に売り生活費を得ていました。社会がお米中心に回っていたわけです。
そんな江戸期に、炊飯も整ってきます。竈門&羽釜はこの時期から。その時の火加減の口伝が「初めちょろちょろ中ぱっぱ、ブツブツいうころ火を引いて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣くともふた取るな」。
母方の里は田舎でしたから、竈門も羽釜も現役。幼い頃遊びにゆくたびに、土間の台所で祖母に教えられました。しかし、幼心に不思議だったのは「ひと握りのワラ燃やし」です。薪ではありません。ワラですから、ちょっとだけ火力は強まるものの、あっという間に燃え尽きます。幼い頃には、謎の呪文でした。
それと、祖母が気を付けたのが吸水ですね。江戸時代、炊飯のプロは「研ぎ師」と「炊き師」に分かれていて、「研ぎ師」の方が給金が高かったといいます。実際、炊飯は、いかにしてお米の中へ水を入れ込むのかという側面があります。
炊飯器のカテゴリ分け
今、炊飯器は3つのカテゴリーに分かれています。「IH+圧力」「IH」「マイコン」の3つです。「IH+圧力」「IH」のIHは熱源がIHであることを示しています。「マイコン」は「ヒーター」です。マイコン(マイクロ コンピューター)は、その制御を精密にするために、取り付けられたものです。
そしてこれらは、そのまま価格にも反映されます。「IH+圧力」は、5万円以上。「IH」は3万円以上。「マイコン」はそれ以下です。しかし、その時変わるのは、熱源だけではありません。その熱を受け止める内釜が大きく異なってきます。というのは炊飯器は、IHでも火より圧倒的にパワーがありません。羽釜の、底形状にノウハウがあるとしても、火の圧倒的な火力にモノを言わせるのとは違うのです。一掴みのワラと言えども、直火のエネルギーはすごいのです。
羽釜のパワー型炊飯に対して、電気炊飯器は効率型と言えます。効率型なので、電気は扱いやすく、家電は進化してきたと言えます。IHはかなりのパワーです。しかしそれでもパワーが足りません。このためのサポートアイテムが蓄熱効果を高めた内釜なのです。
しかし、どんなに良くても買ってもらえなければ、メーカーは成り立ちません。このため、コストがかかる内釜は「IH」から進められました。(高級炊飯器の出始めは「IH+圧力」というカテゴリーはありませんでした。)その後、「IH+圧力」が高級炊飯器として君臨します。
一方、「マイコン」の分野は、実販価格が1万円以下のものが多く、凝った内釜を搭載できません。このため、美味しさにかなり差がついていました。
マイコンジャーでなぜ美味しく炊けるのか
もうお分かりのことと思います。〈炊きたて〉JBS-A055でタイガーが行ったのは内釜のパワーアップです。名付けて「遠赤黒特厚釜」。日本人の面白いところですね。家電のほとんどは、技術名称に、カタカナをズラッと並べて喜んでいるのですが、炊飯器は漢字が並ぶのです。らしいといえばらしいのですがね。
単純にいうと、厚さ:3mmの厚釜です。そしてタイガーは、「極うま」モードを与えました。「極うま」とは、タイガーの炊飯器の中では「特上」を表す言葉で、これ以上のレベルはありません。
食べてみると、「なるほど」と思いましたね。元来、お米は、どんな炊き方でもそれなり美味しく食べられます。また栄養も豊富。これほどの穀物はなかなかありません。それほどのレベルです。しかし、極うまは、それから一歩も二歩も抜けています。「美味しい」のです。
IHとの差は縮まったか?
しかし熱量豊富な、「IH」の「極うま」には敵いません。こちらは、より内部まで水分が十分入りよりふっくらした芳醇な味。特に甘みが強くなります。これからすると、JBS-A055はちょっとあっさりした感じが否めません。メーカーが「マイコン」と「IH」を別枠で括る通りです。
これは「IH」と「IH+圧力」に明確な差があるのと同じです。炊飯器の場合、火力差、吸水(圧力は吸水サポートです)をひっくり返すことができるほどではないということです。
しかし、だからこそ、「マイコン」の炊飯器の場合、研ぎはどうする。吸水はどうするなど炊飯を工夫することもできます。ここが使いこなしの面白いところです。
〈炊きたて〉JBS-A055の長所と短所
大手メーカーの製品だけあって、〈炊きたて〉JBS-A055は、特に美味しく炊ける「極うま」モード意外に、色々な機能を持っています。特に嬉しいのが「低温調理」モード。今、大流行りの料理法です。
また、パーツが少ないのもメリット内釜と内フタさえ洗えばOKです。
短所は、人によるかもしれませんが、表示がディスプレイの視認性があまり良くないことが挙げられます。最近のコントラストが強いものに比べると、かなり暗く視認性が良くありません。特に、モードを示す「▶︎」「◀︎」の視認性が悪いですね。
まとめ
自炊を始める人全員に使ってほしい!
〈炊きたて〉JBS-A055は、実によくできたマイコンの炊飯器。IHには敵わないものの、この価格でよくぞというレベルに仕上がっています。
使って欲しいのは、自炊を始める人全員です。日本人の場合、美味しいご飯があると、それだけで食卓がかなり豊かになるからです。特に若い人は、ややあっさり目の味を好む傾向にありますので、〈炊きたて〉JBS-A055でもかなり満足度が高いと思います。また、お米を中心とすると、食費は安上げ理です。
このモデルにより、タイガーは「IH+圧力」「IH」「マイコン」の全分野で、「極うま」モードを持たせることになりました。どの分野でも美味しい炊飯器を持つというのは、コスト、技術の問題がありますので、そんなに楽なことではありません。
それを難しい「マイコン」で成し遂げたタイガーの〈炊きたて〉JBS-A055。お買い得でもあります。
【スペック】本体サイズ:幅24.7×奥行27.8×高さ19.2cm。(ふた開き時の高さ 38.6cm)/本体質量:約2.7kg
【充実の12メニュー】エコ炊き/白米/極うま/早炊き/冷凍ご飯/無洗米/炊込み/玄米/クッキング高温/クッキング低温/パン発酵/パン焼き
【ふっくらおいしい】「遠赤黒特厚釜(約3mm)」×「釜包み高火力炊きあげ」。高い蓄熱性と遠赤効果で炊きムラを抑え、お米の芯までおいしく炊きあげ。
【極うまメニュー】 約2倍の時間をかけて吸水するこだわりの炊飯プログラムを搭載。贅沢ごはんを楽…
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。