家電やITの世界では、さまざまな新製品や新サービスが登場しているが、そういった新しい「モノ」や「コト」を理解するうえで知っておきたいキーワードがたくさんある。そこで、現代を象徴する必須用語の基礎知識をわかりやすく解説していこう。
基礎知識(1)
基礎知識(2)
EV/PHV/自動運転/ドライブレコーダー/シェアエコノミー/ワイドFM/加熱式たばこ/自動翻訳機/遠隔通訳サービス/クラウドファンディング/高齢者見守りサービス
EV/PHV
純粋なEV(電気自動車)とプラグイン・ハイブリッド(PHV)は、実際のところ、どんな違いがあるのだろうか?
まず、使い勝手という点で考えると、電気自動車(EV)とプラグイン・ハイブリッド(PHVまたはPHEV)はまったくの別物だということを認識していただきたい。
EVの場合、当然ながらエネルギーは電気のみ。電気がなくなれば走行はできない。一方、PHVは、たとえ電気がなくなっても、ガソリンを補給すれば、普通のエンジン車と同じ感覚で距離に関係なく乗ることができる。
さらにPHVは、EVとしてランニングコストの安さを追求することもできる。
例えば、三菱自動車のアウトランダーPHEVの場合、自宅の夜間電力を使うことによって50キロの距離を約100円で走れてしまう。同じ距離をガソリンで走るなら、大ざっぱにいって500円かかる。
だから、1日当たりの走行距離が50キロまでというときは、驚くほどリーズナブルだ。また、ロングドライブする場合は、50キロで電気がなくなった後、自動的にエンジンがかかり、燃費のいいハイブリッド車になるから便利だ。
純粋なEVは、電気切れになると充電しなければならない(普通充電で5〜7時間。急速充電だと30分)。ガソリンスタンドに比べて急速充電施設は少なく、先客がいたら長時間待つ必要がある。
1日で150キロを超えるような距離を走るという使い方が多い人は、いろいろな意味で不便だ。EVかPHVかは、用途によって決めればいいだろう。
自動運転
パワートレーン開発による燃費競争に加えて、車の世界でホットなのが、自動運転につながる運転支援機能の競争だ
日産などが盛んにアピールしている自動運転機能。しかし、少しばかり表現が「盛りすぎ」というべきだろう。
自動運転には定義がある。簡単にいうと、「アクセルやブレーキ、ハンドルを操作しなくても自律走行が可能」ということだ。
だが、例えば、日産の自動運転機能である「プロパイロット」の場合は、渋滞時で時速10キロ以下のときのみこうした自律走行が可能となっている。これだと、極めて限定的な自動運転といわざるをえない。
日産のシステムに比べて、総合的に使い勝手がいいのは、スバルの「ツーリングアシスト」だ。
こちらは、ハンドルを軽く握っているだけで、車が車線の中央をキープしてくれるというもの。速度は自由に設定ができ、先行車に追いつけば自動的に減速し、一定の車間距離をキープしたまま走れるという寸法だ。
同じような機能は、ホンダの「ホンダセンシング」も持っているが、こちらは日産よりも使い勝手が悪いというのが現状。
国内外を見渡して、現時点でいちばん使える自動運転(実際は、「運転アシスト」と表記するのが妥当だが)は、ボルボの新しいシステムだ。
V90などは、渋滞時のノロノロ走行の場合は事実上の自動運転を行い、しかもスバルと同等の車線キープ機能を持つ。自動ブレーキと組み合わせているため、先行車の突然のブレーキにも対応可能だ。
いずれにしても、こういった機能は、今後はスタンダードなものになっていくだろう。
ドライブレコーダー
高齢者ドライバーによる運転ミスや、危険運転による事故など、問題解決の決め手にドライブレコーダーが役立っている
今やドライブレコーダーは、車に必ず装備しておきたいアイテムといえるだろう。
ドライブレコーダーのメリットや役割は、いくつかある。
まず、事故時の原因が追及できること。例えば、交差点での事故だと、今までは「両成敗」になってしまうことが多かった。お互い信号が青だったと主張したら、誰も判定できなかったためだ。
その点、ドライブレコーダーに青信号の証拠が残っていれば、赤信号を無視した側に100%の責任を負わせることができる。
交差点での飛び出し事故などにも有効。歩行者や自転車との事故は、画像という証拠がなければ自動車側が責任を負うしかない。明らかな飛び出しで避けられないようなケースだと、これまた自動車側の過失を大きく減らすことができるのだ。
次に、警察の不当な取り締まりにも有効。例えば、一時停止をしたのに取り締まられてしまったという事案は少なくない。そんなときも、ドライブレコーダーの画像があれば、反証することができるのだ。
このほかにも、さまざまな記録を残しておける点が心強い。例えば、目の前で起きた事故や事件、危険運転をしている車などの動画があれば、後々、役に立てることができる。
また、単純に車窓からの景色を記録しておけるので、例えばドライブ旅行をしたときの思い出を残しておく一助としても使えるだろう。
シェアエコノミー
民泊の仲介を発祥として、あらゆるモノやサービスをシェアする仕組みが、世界中で急成長している
シェアエコノミーとは、モノやサービス、場所などを多くの人と共有・交換して有効活用する仕組みのことであり、シェアリングエコノミーとも呼ばれる。
その発祥は、2008年に民泊の仲介サービスを始めたAirbnbとされており、さまざまな分野で広がってきた。UberやLyftなどの自家用車を利用した配車サービスもアメリカを中心に普及が進んでいる。
日本でも、先のAirbnbはもちろん、ソフトバンクとOpenStreetが共同で提供している自転車のシェアサービス「HELLO CYCLE」 など、注目のシェアエコノミーがスタートしている。
ワイドFM
雑音が発生しやすく、ビルの中では受信できなかったAMラジオを、FM波でクリアに聴くことができる
AM放送の番組を、FMで放送する「FM補完放送」の愛称が「ワイドFM」である。
AM放送は広い範囲に届く半面、障害物や混信に弱く、雑音が発生しやすい。対して、FM放送は到達距離こそ短いものの、混信しにくく、雑音も発生しにくい性質があり、ビルの中などでもクリアに聴くことができる。
この特性の違いを踏まえ、AM放送の難聴対策、災害対策として、かつてテレビのVHF1〜3チャンネル音声が使用していたFMの周波数帯を使って、AM放送番組をワイドFMとしてサイマル放送しているのだ。
ワイドFMを聴くためには、ワイドFM対応ラジオか、旧来のテレビ音声受信機能付きのラジオが必要になる。
加熱式たばこ
煙が出ず、ニオイも少ないため周囲に大きな迷惑をかけないのが加熱式たばこ。その仕組みには、いくつかのタイプがある
火をつけて吸う紙巻きたばこの代替えとして、注目を集めているのが火を使わない「加熱式たばこ」である。
加熱式たばこは煙が出ず、喫煙時のニオイも紙巻きより少ないため、周囲に大きな迷惑をかけずにたばこを楽しめるというメリットがある。
仕組みとしては、たばこの葉にグリセリンなどを添加したカートリッジを用い、それを吸引機に内蔵されたバッテリーとヒーターで加熱。発生した蒸気でたばこ葉の成分を抽出し、それを吸引するというもの。
現在、日本で買えるのは、フィリップモリスの「iQOS」、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「グロー」、JTの「プルーム・テック」の3製品だ。
iQOSは、ヒーターをカートリッジに差し込んで、中心から加熱する方式で、紙巻きたばこに近い吸い心地や味を実現。
グローは、カートリッジを周囲から加熱する方式で、iQOSに比べてクリーニングの手間がかからない。
iQOSとグローは、吸引を中断することができず、カートリッジを使い切る前に吸引をやめると、そのカートリッジは廃棄することになる。
その点、プルーム・テックは、たばこ葉と蒸気成分が分離したカートリッジを採用しており、1本のカートリッジを吸引する際に、吸引の中断、再開ができるのが特徴だ。
自動翻訳機
しゃべった内容を瞬時に翻訳してスピーカーから再生してくれる自動翻訳機。世界50ヵ国語に対応できる仕組みとは?
端末に話しかけることで、知りたい言語へと翻訳を行ってくれる専用端末が自動翻訳機だ。
音声入力・出力の翻訳機能は、スマホで「Google翻訳」アプリを使う方法もあるが、接客などの業務で使うとなれば、電池のもちやスマホを相手に渡す不安感など、いくつかの壁が存在する。
その点、専用機ならば操作は簡単だし、抵抗なく相手に渡すことが可能。本機の場合、電池のもちもスマホよりはるかに優れている。
自動翻訳機で今注目なのが、ソースネクストの「ポケトーク」。世界50ヵ国の言語の相互翻訳に対応するスグレモノだ。
使い方も簡単。まず、翻訳したい二つの言語を設定し、本体液晶画面に表示される国旗の下にあるボタンを押す。続いてその言語で話せば、それを音声認識してテキスト化。翻訳されて相手側の言語で音声出力とテキスト表示がされる。
翻訳精度はかなり高いのだが、それだけの能力が本機に内蔵されているわけでなく、翻訳自体はネット上で行われている。本体にはWi-Fiと専用の3G回線用SIMが装備されており、本機のマイクがとらえた音声をネット上に送っているわけだ。
翻訳はネット上の翻訳サービスが利用されるが、英語なら「Google翻訳」、中国語なら「バイドゥ」といったように、その言語に強い翻訳エンジンが用いられる。
遠隔通訳サービス
急増する外国人観光客に対応するために、タブレット端末を使った通訳のサービスが注目されている
東京オリンピックを控え、急増する外国人観光客に対応する手段として注目を集めているのが「遠隔通訳サービス」である。
これは、主にタブレット端末のテレビ電話機能を使い、通訳さんに外国人と直接話をしてもらい、日本語に訳してもらうというもの。商店の店頭やホテルのフロントなどで、外国人と込み入った会話をするときに役立つサービスである。
遠隔通訳サービスのセンターには、英語をはじめ、中国語や韓国語、ポルトガル語、スペイン語など、さまざまな国の言葉に対応した通訳が待機しており、24時間対応可能。これが月額数千円から1万数千円のコストで導入できる。
クラウドファンディング
モノ作り、研究、アート、飲食店まで、あらゆる分野でネットを通じた資金調達が行われている
クラウドファンディングとは、群衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)を組み合わせた造語。さまざまな理由でお金を必要としている人に対し、それに共感した人がインターネット経由で出資、支援を行う仕組みだ。
ものづくり系プロジェクトを支援する「Kickstarter」の急成長により、国内でも「Makuake」や「Readyfor」などのクラウドファンディングサイトが続々誕生。
最近は、映画や研究、アート、飲食店など、さまざまな分野で利用されるようになっている。映画「この世界の片隅に」のパイロットフィルムの製作資金もクラウドファンディングによって賄われた。
高齢者見守りサービス
インターネット環境の普及によって、センサーや家電機器を活用して一人暮らしの高齢者の生活を見守るサービスが拡大
日本は、世界でも類を見ないほどの少子高齢化社会へと変貌しつつある。そうした中、注目を集めているのが高齢者見守りサービスだ。
高齢者見守りサービスとは、センサーや家電機器などを利用して、一人暮らしの高齢者の見守りや安全確認を行うサービス。
以前から、セコムやALSOKなどの警備会社がそうしたサービスを提供しているが、最近はTEPCOや東京ガス、郵便局などのインフラ企業が高齢者見守りサービスを提供するようになってきた。
例えば、TEPCOが2017年8月に開始した「TEPCOスマートホーム」の「遠くても安心プラン」は、離れて住んでいる家族が、いつどのような家電を使ったかを知らせてくれるサービスだ。猛暑の日にエアコンを使っていない場合に、メールを送る機能もあり、遠くに住んでいても状況を把握することができる。
郵便局も、2017年10月から、月に1回、郵便局社員が利用者宅などに直接訪問し、生活状況を確認、報告する「みまもり訪問サービス」と、利用者に毎日自動音声で体調確認を行い、その内容をメールで連絡する「みまもりでんわサービス」の二つのサービスを開始した。
今後も、こうした見守りサービスへの需要が高まることが予想され、競争も激化しそうだ。
解説/国沢光宏(自動車評論家)/石井英男(テクニカルライター)/福多利夫(フリーライター)
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