映画やゲームを、迫力あるサラウンドで手軽に楽しめるバーチャルサラウンド技術。基本的には、バーチャルサラウンド機能を持ったサウンドバータイプのスピーカーやサラウンドヘッドフォンなどが必要だが、Windows PCやゲーム機、ブルーレイソフト(BDソフト)には、手持ちのヘッドフォンで、バーチャルサラウンドを楽しめる技術がある。より手軽にヘッドフォンでサラウンドを楽しめる数々の技術を紹介しよう。
バーチャルサラウンド技術をPCやゲーム機で採用
バーチャルサラウンド技術は、頭部伝達関数などの人間の耳の特性を応用し、仮想的にサラウンド音響を再現するもの。
映画やゲームの音声信号を元に電気的に加工して実現するわけだ。
そんなバーチャルサラウンド技術を活かして、あらかじめサラウンド効果を加えた信号に作りかえて出力すれば、ふつうのヘッドフォンでもバーチャルサラウンドを楽しむことができる。
これは、Windows 10 採用のPCや、Xbox One S、PS4といったゲーム機で採用されているほか、BDソフトでもヘッドフォン用サラウンド音声を収録したタイトルも増えてきている。
Windows 10 や Xbox One S で楽しめる「Dolby Atmos for Headphone」
「Dolby Atmos for Headphone」は、ドルビーアトモスで知られる映画用サラウンド技術の代表格である、ドルビー社が開発したヘッドフォン用バーチャルサラウンド技術。
ドルビーデジタルやドルビーアトモス音声にも対応し、前後左右、高さの表現が可能となっている。
これは、Windows 10やXbox One Sのアプリケーションとして有償(1650円)で提供されており、それぞれのWindowsストアで「Doliby Access」というアプリをダウンロードし、課金することで使えるようになる。
このアプリは、自動セットアップ機能も盛り込まれているので、インストール後にセットアップを行えば、映画再生ソフトやゲームの音声をバーチャルサラウンドで楽しめるようになる。
もちろん、ヘッドフォンは手持ちのものを使える。多少お金はかかるが、ヘッドフォンを買い替えるほどのコストではないので、試しやすいだろう。
PS4でもバーチャルサラウンド機能を持ったソフトが増加中
PS4では、発売される数々のゲームソフトの多くでバーチャルサラウンド機能を持ったタイトルが増えてきている。
人気作では「モンスターハンター:ワールド」などがヘッドフォン用のバーチャルサラウンド機能を備えている。
使い方は簡単で、ゲームの設定で音声をヘッドフォンに切り替え、ヘッドフォンサラウンドをONするというような感じだ。
こちらも、手持ちのヘッドフォンでバーチャルサラウンドを楽しめるのは同様。
すべてのゲームでサラウンド音声を楽しめるというわけではないが、ヘッドフォン用バーチャルサラウンドを楽しめるタイトルも増えているので、さまざまな作品をサラウンドで楽しめる。
BDソフトでヘッドフォン用のサラウンド音声を収録した「DTS Headphone:X」
BDソフトには、ドルビー社と並ぶサラウンド音声の代表メーカーであるDTS社の「DTS Headphone:X」という技術を採用したものが増えている。
これは、BD音声のサラウンド音声やステレオ音声のほかに、あらかじめ制作したヘッドフォン用のサラウンド音声を収録したもの。「DTS Headphone:X」はそのバーチャルサラウンド技術の名称だ。
こちらも設定は簡単で、BDのメニュー画面で「DTS Headphone:X」を選択し、再生するBDプレーヤーやテレビのヘッドフォン端子に手持ちのヘッドフォンをつなげるだけだ。
きちんとサラウンド音声が再生できているかを確認できるチェック用コンテンツもあるので、間違えずに使うことができるはず。
これも、すべてのBDソフトで楽しめるというわけではなく、パッケージのスペック欄に「DTSHeadphone:X」の名称があるソフトでしか使えないが、手持ちのソフトで「DTS Headphone:X」のタイトルがあれば試してみよう。
少々残念なのは、レンタル版に収録されることはなく、市販のBD版でないと「DTS Headphone:X」を楽しむことができない点だ。
使用するヘッドフォンにより効果の差はあるが、手軽にサラウンドを楽しめる
こうしたヘッドフォン用のサラウンド音声は、どれもなかなか優れたサラウンド音響を再現でき、手軽さもあって注目度が高まっている。
もちろん、使用するヘッドフォンの実力によって再現されるサラウンド音響にも違いはあるが、前後左右の音の定位や移動感はしっかりと感じられるはず。
個人的に試した印象では、音場感に優れたヘッドフォンではサラウンド感の広がりも大きく、情報量の多いタイプでは細かな音まで鮮明に楽しめると感じた。
ヘッドフォンのタイプで言うと、開放型のヘッドフォンは音場が極めて広く、リアルサラウンドに匹敵するほど。
まとめ
ここで紹介したヘッドフォン向けのサラウンド技術は、使用する機器を選ぶほか、すべての映画やゲームソフトでバーチャルサラウンドを楽しめるわけでもなく、その点ではサラウンドヘッドフォンと呼ばれる製品と比べて活用の幅には制限がある。
とはいえ、手持ちのヘッドフォンで手軽に試せるのは大きな魅力なので、機会があればぜひとも試してみてほしい。
また、先に触れたようにヘッドフォンの実力によってはサラウンドの表現力が変化するので、ぜひともヘッドフォンのグレードアップも検討してみてほしい。
◆鳥居一豊
オーディオ、AVの分野で活躍するAVライター。専門的な知識をわかりやすく紹介することをモットーとしている。自らも大の映画・アニメ好きで自宅に専用の視聴室を備え、120インチのスクリーン、有機ELテレビなどを所有。サラウンド再生環境は6.2.4ch構成。