炊飯器で料理もできます。これはわりと知られた話です。しかし、今の炊飯器の「炊飯モード」では、料理はちと厳しい場合が多いです。それは、進化してしまったが故です。
「はじめチョロチョロ、なかパッパ」が「炊飯モード」
「はじめチョロチョロ、なかパッパ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤ちゃん泣いてもふた取るな」
これは、ご飯をかまどで炊くときの火加減です。
ガスもそうですが、火の温度は強烈です。ガスより安定しない薪で上手く炊き上げるためには、火加減がとても重要なので、できた唄です。
しかし、炊飯の間じゅう火加減を気にしていると、何もできません。
このため出来たのが、電気炊飯器です。
はじは、火の代わりに電気で加熱するだけの炊飯器でしたが、かなり美味しかったといいます。
理由は、お米の「旨み」にあります。お米は、適当に炊いてもかなり美味い。私は、だからこそ「主食」になったと思っています。
お米は、炊かなければ、人間は栄養分を吸収できません。
小麦は、一度粉にしなければ、人間は取り入れることができません。
しかし、これらは世界三大穀物で、人間に欠かせません。手間はかかるのですが、適当でもナントカなる。主食になる穀物は、そんな鷹揚さと美味しさが同居しています。
さて、時は移り、平成最後の年。
中級機以上の炊飯器は、その理想を追求され、火力は電気最強のIT。圧力鍋に近い密閉性を持ち、コントロールはコンピューターが行います。熱のかけ方は「はじめチョロチョロ、なかパッパ」です。炊飯器の「炊飯モード」は、お米に特化したモードなのです。
タイガーは2014年から「調理モード」を追加
海外でしたら「炊飯器はお米を炊くためのもの。調理をしないでください」となるのでしょうが、日本メーカーは、機能を切り捨てることは基本しません。「気に入って使ってくれているユーザーに申し訳ない」という考えをします。
このため今、精密な「炊飯モード」を持つ炊飯器は「調理モード」を持っています。
炊飯器で知られるタイガー魔法瓶に問い合わせてみますと、「2014年から調理モードを搭載させています」ということでした。
タイガー
炊きたて 炊飯 ジャー
JPE-A100-K Tiger
炊飯器
JPE-A100-K
炊飯器が電気鍋に
調理家電のイイところは、食材をセットすると「お任せ。後はお願いね」と他のことができることです。
では、その実力はどれ位のものなのでしょうか?
例えば煮物。
写真は、甘塩鮭と長芋の煮物ですが、基本鍋ですから、こんなのは大得意。材料をカットするところから始めても30分位で出来上がります。
しかし、和食にご飯は付きものです。
では、パンに対する洋食という眼で見ると、これも簡単。ソーセージとひよこ豆のトマトソース煮です。
また最近のモノは「調理モード」どころか「ケーキモード」まであり、これならオムレツなどもラクラクできます。ホットケーキも裏返すことなくほったらかしでOK。手間の少ない子供おやつとして使えると思います。
炊飯器を炊飯にしか使わない。もうそんな時代ではなくなったよう思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。
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