【ロボット掃除機の完成形?】ルンバ i7+ はどこがスゴいのか

リビング家電

ルンバ 900シリーズに搭載されているナビゲーションシステム「iAdapt2.0」が発表された時、これはスゴいと思いました。フロア全体のマップを作りながら掃除をしていくのです。それまでのiAdaptが、限定されたエリア(多くの場合は部屋)を掃除するのに対し、放っておけば、家中を掃除してくれるわけです。しかし今回、iRobotの創業者 コリン・アングル氏は、「ルンバi7+こそ創業当時からターゲットにしてきたルンバだ」と言います。家全体を掃除してくれる満足度の高い900シリーズと、どこがどのように違うのでしょう?

「ルンバ、キッチンを掃除して!」

夕方、お母さんは子供に言います。
「ご飯だから、リビングに出したおもちゃを片付けて、きれいにして!」
「はぁーい。」
ごくありふれた、よくある会話です。

しかし、今のロボット掃除機では、これは無理な話です。
それは「リビング」がどこか分からないからです。
確かに効率よく、家全体を掃除するために、マップを作ります。
しかし、それは基本的に、掃除をしたか否かを判断するために使われます。

人間のように、地図があれば、行ったことがないところでも誤りなく行ける、という芸当などは出来ません。
一番近いのは、クルマで言う「自動操縦システム」です。しかもこれは、共通地図が予め与えられているわけですが、家の間取りなどは地図に出ていません。

「ルンバ、キッチンを掃除して!」というオーダーをこなすことは、非常に難易度が高いのです。

今回搭載された iAdapt2 の発展型、iAdapt3 は一度マッピングした地図を覚えます。
そして、人が「ここはリビング」「ここはキッチン」と教えてやり、「キッチンを掃除して!」とオーダーすると、そこまで行き掃除をします。

実は、iAdapt2 では、掃除のために地図を作り、そして破棄していました。
理由は、椅子の位置が変わったり、模様替えなどし、記憶していた地図と違うとトラブルになってしまうからです。

iAdapt3 は地図を覚え、そしてそれに小修正を加えて対応する方法を取ります。これをするためになんと、9880MIPS(※)のチップを積んでいます。
iAdapt2 が298MIPSですから、実に33.7倍の処理能力があるわけです。ちょっとした変化に柔軟に対応するというのは、これほどまでに難しいことなのです。
※MIPS(ミップス):million instructions per second。1秒間に100万回の命令を処理できることを意味する。

「掃除という家事があることを忘れてもらう」ためのロボット掃除機

ルンバは、スマートハウスを担う掃除機として、iRobot社は開発しています。
スマートハウスというのは、いろいろと定義することができますが、コリン氏は、出来る限り家事は自動。で、その様な家事があること自体を忘れられることがいい、と考えています。

床掃除なら、ロボット掃除機が常に隅々まで掃除しているので、住んでいる人は「掃除をすること自体が頭からなくなる」のがベストということです。

そのためには「ゴミ捨て」も自動の方がいいと、ゴミの吸い上げシステムを作りました。
使用するのは、紙パックです。
ルンバi7+の充電台は、充電器の上に紙パックが中に入ったダストボックスがあります。充電台に戻る度に移し替えが行われます。
紙パックの容量は、ルンバのダストボックスの30個分だそうです。
週1回、ロボット掃除機のダストボックスが満タンになるとすると、30週間、実に半年、掃除機のケアすらしなくていいわけです。

万が一、ポップコーンを落とすなどのトラブルが発生しても、前述の通り「××をキレイにして」とオーダーできますので、問題ありません。

「その家事をなくしてしまう。」
単なる「自動」とは違う、コリン・アングルが考える究極のホーム・システムが、ルンバi7+なのです。

この充電器、東芝にも同様の機能があるとか言う声が聞こえてきそうですが、ルンバ900シリーズを使っている私から言わせると、掃除機本体のレベルが全く違います。
コリン・アングルの言葉がリアルなのは、掃除機本体のレベルがいいからです。
それは、全ロボット掃除機メーカーが目指すべきレベルですが、そのハードルは限りなく高く、特に家の隅から隅までくまなく、といった条件を付けると、どのメーカーも追従できていません。

それほどの開発ができたのも、元々のゴールレベルが非常に高かったためで、iRobotがその目標に向かい、追求の手を休めなかったためであることが分かります。

アイロボット ルンバ i7 プラス

アイロボット ルンバ i7 プラス/iRobot Roomba i7+

ルンバという、ずば抜けたロボット掃除機を開発したiRobotは、2018年の年間売上額は、10億ドル。売上金額は前年比:+24%。累計販売台数:2500万台だそうですが、この独走態勢。当分の間続きそうです。

◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。
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