掃除機をかけても、床がべたついたり、ザラザラが気になったりする。梅雨や夏の床のべたつき解消にピッタリな家電が「床拭き掃除機」だ。基本的にはゴミを吸引する機能はないシンプルな機能のものが多く、ロボットタイプとスティックタイプの2種類に大別される。
目指せ!家電選びの達人今回の家電は「床拭き掃除機」
一般的なスティック掃除機やロボット掃除機に比べると、やや地味な印象がある「床拭き掃除機」。しかし、床拭きの重労働から解放される点で、ユーザー満足度が非常に高い家電である。今回は、親の世代に贈りたいアイテムとしても注目されている、代表的なモデルを見ていこう。
監修者のプロフィール
中村剛
「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権で優勝の実績を持つ家電の達人。家電製品総合アドバイザー、消費生活アドバイザー。東京電力「くらしのラボ」所長。現在、暮らしに役立つ情報を動画(Facebook)で配信中。
床拭き掃除機が続々登場
■水タンクを備えたロボット型が増えてきた
掃除機をかけたあとでも、フローリングのザラザラやべたつきが気になることがある。小さなチリや食べこぼしの汚れなどは、ふだんの掃除で取りきるのは難しい。より快適性を求めるなら、仕上げに拭き掃除をプラスすると、すっきり清潔に暮らせる。
床拭き掃除は、ぞうきんがけやモップがけが一般的だが、専用の掃除機に任せると、手間なくきれいに仕上げることができる。中でも、ロボットタイプの床拭き掃除機は、ボタンを押すだけで部屋中を自動で磨いてくれ、このうえなく便利。機種によっては、市販の使い捨て掃除シートが使えるので、クロスを洗う必要もない。かがむと腰や膝が痛く、小さなゴミが見えにくいという方には、とりわけ導入をおすすめしたい。
床拭きロボット掃除機は、2014年に、ルンバでおなじみのアイロボット社から、ブラーバが登場。その2年後には、ブラーバジェットが発売され、今年に入ってからは、パナソニックも市場に参入している。
基本的にはゴミを吸引する機能がなく、水タンクを備え、本体の構造は比較的シンプル。底面にシートを取り付けて走行することで床を拭き、ソファーの下の小さなゴミや、足の裏からの皮脂汚れ、食べこぼしのべたつきなど、通常の掃除では解消しきれなかった汚れをきれいにしてくれる。
シートは、専用のクロスやパッドが用意されているほか、市販の掃除シートが使えたりと、モデルによってさまざま。また、きれいにするための工夫も、個々に追求している。
ロボット型の特徴
■三度拭きするブラーバ、往復重ね拭きのローラン
今回紹介する4機種中、最もベーシックなのが、最初に発売されたブラーバ380jだ。
清掃モードは、ドライ(乾拭き)とウエット(水拭き)の2種類。ドライモードのときは直線的な走行で乾拭きするが、ウエットモードでは、左右にぞうきんがけをするような動きで、同じ場所を3回拭いていく。部屋全体を念入りに掃除するため時間はかかるが、そのぶん丁寧な仕上がりになる。
運転音が小さいのが特徴で、ほとんど無音といえるほど静か。テレビを見ている横で作動していてもまったく気にならないし、夜中に使用しても近所迷惑にならないだろう。この点が好評で、後発のブラーバ ジェット240より、380jを好む人も多いという。
大判のクロスで隅々まで磨く、床拭きの元祖
アイロボット
ブラーバ380j
実売価格例:3万7580円
本体からはみ出る大判のクロスで、部屋の隅々まできれいに磨く。広い面積に対応し、ウエットモードは最大20畳、ドライモードでは56畳まで一度に拭き掃除できる。
●給水
●ウエットモードの動作
ブラーバ380j
B380065
そのブラーバ ジェット240は、洗剤をしみ込ませた専用パッドを採用することで、さらに汚れ落としを追求したモデルだ。本体から水を噴射して汚れを浮かし、通過する際にパッドの振動でこすり取るという、独自のスタイルで掃除する。こびりついたベタつきも取り去るので、食べこぼしの多いキッチンや、ペットのいる家庭で利用価値が高い。
清掃モードは、水拭き(強)/水拭き(弱)/乾拭きの3種類。各モード専用のパッドをセットすると、本体が自動的に違いを判別、各モードに合わせた動き(水拭き強→三度拭き、水拭き弱→二度拭き、乾拭き→ひと拭き)で掃除をするようになっている。
そのため、使う際はモード選択の必要がなく、パッドをセットしてボタンを押すだけでOK。ただし、判別システムに対応している専用パッドしか使えないため、市販のお掃除シートは使用できず、ランニングコストはやや高くなる。
水を噴射しながら、洗剤入りパッドで掃除
アイロボット
ブラーバ ジェット240
実売価格例:3万2270円
コンパクトボディで、トイレなどの狭い場所もスイスイ走行。使用済みパッドは、手を触れずにボタン一つで捨てられる。スマホアプリで噴射量のコントロールも可能だ。
●本体底面
●掃除用パッド
ブラーバ ジェット240
B240060
パナソニックのローランは、ブラーバと同様、ドライとウエットの2モードを搭載。両モードとも直進走行を行い、折り返しの際に重ね拭きをしながら、丁寧に拭き掃除をしていく。「スポットモード」では、決まった範囲を縦・横に複数回拭くので、玄関先や食卓の周りなど、汚れの気になる場所は、こちらのモードが便利だ。
おもしろいのが、本体のシートの取り付け部分が、回転式ローラーになっていること。5分半の走行ごとにローラーが30度回転し、常にきれいなシート面で掃除ができる仕組みになっている。ローラーにシートを巻きつけるための自動巻きつけ機能も搭載し、ズレやシワを抑えて、ぴっちり巻くことが可能。ちなみに、この仕組みは、ヘッド部分にウエットシートが装着できる同社のサイクロン掃除機、エアシス(元三洋電機)の技術が応用されているとみられる。
回転式ローラーで常にきれいな掃除面をキープ
パナソニック
ローラン MC-RM10
実売価格例:5万1710円
日本発の床拭きロボット第1号。念入りに掃除をする「スポットモード」や、回転式ローラーの採用により、掃除力を向上させた。ドライ/ウエットともに、一度に最大20畳の拭き掃除が可能。
●本体底面
●水タンクと操作ボタン
Rollan(ローラン)
MC-RM10
このように、それぞれ個性が見られる床拭きロボット掃除機だが、最近は、吸引と床拭きの二刀流モデルも登場している。
それがエコバックスで、前方半分に吸引機能、後方半分に水拭きパッドを搭載し、一度の走行で「吸う」と「拭く」をまとめて行うハイブリッド型だ。マッピングにレーザー技術を採用しているほか、スマホやスマートスピーカーからの操作も可能。目新しい要素が盛りだくさんになっている。
ゴミの吸引と水拭きが可能なハイブリッド型
エコバックス
DEEBOT OZMO 901
直販価格:5万9900円
水拭きモップシステム(OZMO)搭載で、ゴミの吸引と水拭きが可能なハイブリッドタイプ。スマホと連動し、外からも水量調節やエリア指定などができる。4時間の充電で、最長90分の稼働が可能。
●本体底面
●マッピング/水量制御
DEEBOT OZMO 901
スティック型の特徴
■ゴミを吸い取ってから拭き上げるシャープ
ロボット型は、広い範囲をカバーするのに便利だが、狭いスペースを手軽にきれいにしたい、または、もっと徹底的に掃除したいという人には、自分のペースで使えるスティック型がおすすめだ。
シャークのスチームモップは、高温の蒸気で汚れを落とすパワフルモデル。皮脂汚れなども洗剤を使わずきれいに落とし、床をサラサラにする。同じ場所を繰り返し拭くことで、除菌も可能。ハンディ型としても使え、水回りの掃除のほか、洋服のシワ取りなどにも幅広く応用できる。
ただし、高温スチームなので、熱い状態のまま置きっぱなしにしないなど、扱いには注意が必要だ。
高温スチームで頑固な汚れも拭き取れる
シャーク
2-IN-1プロスチームモップ
実売価格例:1万7820円
スクラブ素材×マイクロファイバーの専用パッドで、床面のホコリや汚れをしっかり吸着。本体をモップ部から取り外せば、コンパクトなハンディスチーマーになり、家中の掃除に役立つ。
●高温スチーム
●床以外にも役立つスチーム
2-IN-1プロスチームモップ
シャープのコードレスワイパー掃除機は、その名のとおり、コードレス掃除機とフロアワイパーが合体した商品だ。ゴミを吸ってから、フローリングワイパーで仕上げる2ウエイ仕様で、手軽かつ効率的に床掃除ができる。
パイプを外すとハンディスタイルになるので、階段などの狭い場所の掃除に便利。なお、連続運転は最長10分なので、毎日のこまめな掃除に向いている。
「吸う」と「拭く」が一度に行えるスティック型
シャープ
EC-FW18
実売価格例:9370円
フローリングワイパーにクリーナー機能がついた2ウエイ掃除機。「吸う」と「拭く」が一度に行え、手軽に時短掃除ができる。ボディは1.3キロと軽量で、掃除や持ち運びも楽だ。
●吸い込み&拭き取り
コードレス スティック型クリーナー
EC-FW18
まとめ
ワンランク上の快適さが、手軽に得られる床拭き掃除機。シートの取り付けにコツが必要だったり、持ち上げる角度によっては水漏れがあったりと、"若い"製品特有の"こなれてない感"も見受けられたが、それを差し引いても、助けてもらえる部分はかなり大きい。拭き掃除後のサラサラ感は、一度味わうと癖になる。フローリングを素足で歩くことが増えるこれからの季節は、特に利用価値を実感できるだろう。
※価格は記事作成時のものです。
取材・執筆/諏訪圭伊子(フリーライター)