昨年、クリーンヒットを飛ばした、象印マホービンの炊飯器「炎舞炊き」。象印がそれまで象徴でもあった「南部鉄器」を超えるモノとして開発した炊飯器ですが、完全ワンステージ上の美味しさを誇ります。ただ惜しむらくは、少量炊き(〜3.5合)がなかったこと。今年は揃えて来ましたが、その容量:4合。何故、この容量になったのでしょうか?
0.5合にどんな意味が秘められているのか?
お米の量を表す単位として、今でも使われる「合」。これは絶妙な単位です。お米は、重さ:150gで、体積:180ml。この体積が「合」という単位です。何故スゴいのかというと、米:1合に対し、水:1合が炊飯の基本だからです。炊きあがったお米は、ほぼ茶碗2杯分。しっかり食べる量としては適量です。実に上手く作ったもんだと思います。
それに対し、炊飯器は、通常:5合に5.5合。少量:3合に3.5合と、2つの容量が存在します。茶碗1杯分欲しいのではと考えてもいいのですが、米の量り方は基本すり切り。0.5合は、どちらかというと面倒です。
この0.5合は、どうして付けられたのでしょうか?
5.5合の場合
5.5合は、1L(1000ml)から来ていると言われています。1000mlを180mlで割ると5.55555・・・・・。です。法律ではメートル法が基本であることから、こうしたとも言われています。ちょっと面倒ですよね。
3.5合の場合
5.5合は分かりやすかったのですが、3.5合はどうしてでしょうか?
ちょっと計算すると分かりますが、こちらは合う数字が見当たりません。それもそのはず、由来が別なのです。
こちらの由来は、炊き込みご飯です。
炊き込みご飯は、白米の様に量は食べられないのですが、数膳なら是非食べたい、少量炊きにピッタリの食べ方です。しかし、これが3合炊きだと、具材のある炊込みは2合までしか炊けないのです。この0.5合分で、炊込みご飯を3合まで炊けるように、ということからでした。
さすが主食。奥が深い!
「炎舞炊き」の場合
象印「炎舞炊き」の特長の一つに「小さい」ことが上げられます。
昨年は5.5合炊きに加え、1升炊きまで出したのですが、これは小さかったからだそうです。少なくなったとは言え、お米をいっぱい食べる人はいます。その人たちが使うのが一升炊きなのですが、一升炊きは大きいです。
まぁ、戦艦ヤマト級というべきでしょうか。このため、一升炊きを作るときは、サイズをどう縮めるのかがポイントになります。しかし「炎舞炊き」は、元が普通の炊飯器より小型なので、そんなことをする必要がありません。昨年、5.5合と共に1升炊きがリリースされたのは、それが原因です。
では、今年の4合炊きは、どんな作りになっているのでしょうか?
「炎舞炊き」は、かまどで炎が揺らぐことから、均一沸騰しないことを突き止めて作られました。
どうするかというと、底面のIHヒーターを3分割、それを順繰りに使うことにより、沸騰の非均一化を行います。
少量炊きの場合、内釜の底が小さいため、3分割はできませんでした。2分割です。それでもお米はいろいろな方向へ動きます。少量炊きでも「炎舞炊き」なのです。
象印
炎舞炊き 4合炊き
NW-ES07
2019年7月下旬発売予定
「少量炎舞炊き」の場合
そして現在、少量炊きは人気があります。理由は、高齢化社会のため、どんどん世帯構成人数がすくなくなっているからです。
そして、その中には、5合炊きを指名買いする人がいます。そして、さらにその中には、自分のために5合を買うのではない人が多くいます。それは、孫が来たとき、お腹いっぱい食べさせてやりたい。だからお米は多く炊けなければならない、というわけです。
その人たちの中には、味を大切にするために、1合づつ炊き立てを食べる人もいます。私も、何回もテストしてみましたが、5.5合炊きで1合より、3.5合炊きで1合を炊いたときの方が、美味しいです。
炎舞炊きは幸いにして、小ぶりの炊飯器。このため、象印は思い切って、4合に挑戦。少量炊きのサイズながら、0.5合多い4合を実現したわけです。
こうして今までにないサイズ、4合炊きが出来上がったわけです。
1合でも美味しく炊け、いざとなれば4合炊きもでき、しかもサイズは小さい。今年は、欲張りな炊飯器がトレンドになりそうです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オ
フィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があ
り、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。