悪質なあおり運転などが問題化している。万が一の事態に備えるのに有効なのがドライブレコーダーで、現在は360度撮影が可能なモデルが注目されている。中でも人気なのが、駐車監視カメラ、アクションカメラの機能も持つ、カーメイトの「ダクション360」シリーズだ。
話題の商品徹底解剖!カーメイト「ダクション360 S」のキーパーソンに訊け!
悪質なあおり運転による事件や事故がたびたび起こり、社会問題化している。万が一の事態に備えるのに有効なのがドライブレコーダーで、現在は、360度撮影が可能なモデルが注目されている。中でも人気なのが、ドライブレコーダーと駐車監視カメラ、さらにはアクションカメラの1台3役をこなすカーメイトの「ダクション360」シリーズ。開発の経緯や苦労、今後の展開などを訊いた。
●キーパーソンはこの人!
専門は画像処理によるスイカ果実の選別
万が一の事故やトラブルに備えて、運転中や駐車中の映像を記録しておけるドライブレコーダー。ここ数年、悪質なあおり運転などが話題になるたびに、ドライバーへの認知度がアップ。販売も好調に推移している。
そのドライブレコーダーで、昨今、注目を集めているのが、クルマの前方や側方、後方まで360度撮影が可能なモデル。中でも人気なのが、カーメイトから発売されている「ダクション360」シリーズだ。
「ダクション360シリーズの特徴は、一台で360度の映像を記録できるドライブレコーダーと駐車監視カメラ、さらにはアクションカメラの3役をこなせること。無線LAN搭載により、スマホアプリから映像の確認などが行えます。
2017年2月に、業界に先駆けて全天周撮影対応の『ダクション360』を発売。その後、2018年11月には、全天球撮影が可能な『ダクション360 S』を発売しました」
こう話すのは、同社代表取締役社長の徳田勝さん。芳香剤やタイヤチェーンなどのカー用品が主力商品だったカーメイトでドライブレコーダーの開発に取り組み、ダクション360シリーズへとつなげた人物だ。
農学博士の肩書きを持つ徳田さんは、京都大学などで「画像処理によるスイカ果実の識別」というテーマを研究していた。そのため、2003年にカーメイトに入社した当初から、専門分野である画像処理を生かせる商品の開発を構想。2008年に、その機会を得た。
「前方衝突検知・警告機能と、車線逸脱検知機能を備えたドライブレコーダーを開発したのです。いわゆる“ADAS”(先進運転支援システム)の商品で、将来性には自信があったのですが、採算の問題から、2009年に開発はいったん中止となってしまいました」
先進的なドライブレコーダーの開発を断念した徳田さんだったが、すぐに次なる商品の開発に取りかかる。それがiPhone向けの燃費管理アプリ「DriveMate Fuel」。このアプリは多くのユーザーに支持され、有料にもかかわらずヒットを記録した。
「アプリ開発の経験と実績が、ダクション360シリーズ開発のベースになっています。アプリを内製できる体制が整いましたし、使い勝手の部分などでノウハウも蓄積できました。また、実車でテストする環境も構築できました」
その後、同社は2011年の東京モーターショーでスマホ連係機器を出展。2013年の同ショーでは、スマホアプリとカメラ機器の連係をコンセプトで示した。それを発展させて、ダクション 360シリーズにつなげたというわけだ。
アプリ開発と、実車でのテストをすぐ行えるのが我が社の強みです。
ナンバープレートもしっかり読み取れる
こうして2017年2月に発売されたダクション 360だが、メディアから好意的に取り上げられるなど反響は大きかったものの、当初の販売はあまり順調ではなかった。しかし、悪質なあおり運転の事件が報じられて社会問題化すると、売り上げは急激に伸びていった。
「クルマの前方だけでなく、後方や側方も記録することの重要性が理解されたのかなと思います。また、車内の様子を撮影することへの抵抗感も徐々に払拭されていきました。ダクション360は他社商品の数倍の価格ですが、その価値があると認識されたのは大きかったです」
2018年11月には、後継となるダクション360 Sが発売された。レンズが2基に増えて、画角が全天球(水平垂直360度)に進化。また、全天球録画と同時に、前方の映像を高解像度で記録する“デュアルレック機能”も搭載された。
「全天球の映像は画素数が多いため、記録する際に小さくリサイズします。すると、前方のクルマのナンバープレート部分などを拡大した際、画像が粗く、読み取りが難しくなってしまいます。デュアルレック機能では、リサイズ前の映像から前方の一部を切り出すので、高解像度で記録することができるのです」
これが実現できたのは、高性能なプロセッサーを搭載しているからだが、このことは別の問題も生んでしまった。それは、本体内で発生する熱の問題だ。
「熱を多く発生する部品には、プロセッサーのほか、カメラのCMOSセンサーなどがあります。ダクション 360Sは、高性能なプロセッサーと2基のCMOSセンサーを搭載しているので、かなりの熱が発生します。加えて、夏の車内は相当な高温です。熱で故障したり、動作が止まってしまったりするのは、ドライブレコーダーとしては致命的ですので、本体の設計に当たっては熱対策を最優先しました」
開発チームは当初、ダクション360 Sを球形のデザインにすることで進めていた。ダクション360の半球型のデザインを踏襲し、シリーズの統一感を出すためだったが、球形だとどうやっても熱問題を解決できないということで断念。結果として、現在のデザインに落ち着いたのだという。
シビアな条件でも安定して動くことがドラレコとしての必須条件です。
安全運転支援機能の搭載も構想している
さて、ダクション360シリーズの特徴としては、アクションカメラとしても使用できることが挙げられる。
「万が一の事故に備えるのがドライブレコーダーの役割ですが、それ以外でも使えるようにと考え出したのがアクションカメラ機能です。ドライブの目的地でのアクティビティの様子や景色などを、360度撮影できます」
筆者は別の360度カメラを所有しているが、旅先ではとても重宝している。オプションのバッテリーは必要だが、ドライブレコーダーをそのまま車外に持ち出すことで全天球/全天周撮影が可能になるのは、確かに魅力的だといえる。
最後に、ダクション360シリーズの今後を訊いてみた。
「一度は断念した前方衝突検知や車線逸脱検知などの機能は、今後の構想には入っています。また、プライバシーに配慮しつつ、カメラからの映像を社会で共有して役立てることも考えていきたいですね。アイデアはいろいろとあるので、ダクション360シリーズをもっと進化させていきたいと思っています」
Memo
現在、ダクション360とダクション360 Sは併売されている。価格差が約2万円あるため、アクションカメラや駐車監視など、自分の用途や求める機能を見極め、比較して選ぶようにしたい。
◆インタビュー、執筆/加藤肇(フリーライター)