冷蔵庫の進化は地味です。ゆっくりしたものです。近年にあった大きな技術革新は「断熱材」。厚みが1/2になったので、内容量を劇的に増やすことができたのです。以降、ちょっと足踏み状態。そんな中、新しい手を打ってきた、2社の冷蔵庫を紹介します。
「見通し」の冷蔵庫を目指す「AQUA」
AQUA(アクア)は、元サンヨーの冷蔵庫事業と洗濯機事業を買った中国の家電メーカー「ハイアール」グループが作った、冷蔵庫&洗濯機ブランドです。先代の社長の時は、外見が派手な印象がありましたが、今は、腰を据えてイイものを開発しています。
冷蔵庫のテーマは「見渡し、見通し」です。
冷蔵庫は、食材の保存が大きな目的ですが、その中には食材の整理整頓が含まれています。買い物の「起点」であり「終着点」。料理の「起点」であり、ある意味「終着点」。この「何でも」という冷蔵庫に必要なのは、瞬時に何がどこにあるのか、分かること。
AQUAは、そこに着目します。イイ例がフラッグシップ「AQR-SBS45J」(内容量:449L)です。パノラマと呼ばれるこのモデル。扉を開けた瞬間、何がどこにあるのか丸わかりです。これはスゴいモデルですが、日本人の知っている冷蔵庫からは、ちょっとぶっ飛んでるかも知れません。日本人は、文句を言うわりに、他人と似たところがあるモノを好む癖がありますからね。
それで出たのが、「AQR-V46/43J」「AQR-V46/43」のDelie(デリエ)シリーズです。
こちらのレイアウトは、見慣れた四段構成で、上半分は、冷蔵室。以下、野菜室、冷凍室1、冷凍室2と続きます。面白いのは、冷蔵室から野菜室が俯瞰できるところです。奇異な感じがしますが、これ便利です。傷み易い、使わなければならない素材が、冷蔵室を開けると丸わかりです。冷凍室にある食材は、2〜3日で決定的な差はでませんが、こちらは出ますからね。
常に食材全体を把握しながら、料理ができるわけです。
「冷蔵室=チルド」で使いやすさを目指す「日立」
もう一つお知らせしたい冷蔵庫は、日立の最新モデル「HXタイプ、HWタイプ」です。こちらは、冷蔵室に区分けして作られていたチルドルームの環境を、冷蔵室に当てはめてしまいました。
チルドルームというのは、低温・高湿のルームです。冬場は皆さんご存じの通り、低温、低湿。冷蔵室もそうです。何故、チルドがでてきたかというと、低湿に弱い食材があるからです。例えば刺身。断面に潤いのなくなった刺身の何と不味そうなことか。同じくサラダ。切り口がしなびたサラダなどは嫌ですね。
ところが、低湿下の湿度コントロールはとても難しい。しかも冷蔵庫は、まちがっても結露などさせられません。ばい菌の温床になります。このため、チルド室を別に設けたわけです。
しかし、技術は進化します。そして、それをモノにしたのが「まるごとチルド」。何がすごいかというと、もう冷蔵庫に食材、食物を入れるときに、ラップ掛けが不要だというところです。どの棚でもサラダはしばらくはシャキシャキ。刺身も干からびません。
期待もしたし、欲しかったノーラップ冷蔵庫の登場です。テーブルの上の余りモノ、そのまま突っ込んでも、ノープログレム。しかも、どの棚も基本同じなので、庫内レイアウトは自在に組めます。要するに「見渡しやすい」。
まとめ
大きさと野菜室の上下ばかり問われる冷蔵庫ですが、この2つのモデルは、その先、使いやすさを突き詰めたモデル。冷蔵庫が使いやすいと、メニュー決め、料理のハードルを下げることにもなります。買い換えの際、実際に見ていただければと思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。