世の中いろいろな家電がありますが、「移動する家電」というのは、ほとんどありません。しかし、移動することを前提に作られている家電もあります。それが「掃除機」です。このため、掃除機ですごく重要なのが「軽さ」です。この課題を追い続けた日立のスティック型掃除機「ラクかる」シリーズのモデル「PV-BL20G」をレポートします。
掃除機の使いやすさは何で決まるのか?
掃除機の使いやすさは何で決まるのでしょうか。
それは機動力です。
掃除機の初期のものは、シリンダーの筐体にソリを履かせた構成です。要するにモーターは重いので引きずるという考えです。そのソリを車輪に変えたのがキャニスター型。長い間、キャニスター型は主流でした。しかし自在に移動できるのは、電源ケーブルの長さ分だけ。移動するには、コンセントからコンセントへ渡り歩く必要があります。20世記の機動力はここまでした。
ところが21世紀に入り変わりました。
充電池の進化と共に、電源を内蔵した掃除機が開発されたのです。同時に、それまでのホースが長く、もっさりとした感じのキャニスターから、スティック型掃除機が提案されました。
この時から、掃除機はコンセントから解放されました。どの部屋でもバッテリーが続く限り掃除できるようになったのです。もっさりしたキャニスターを使う場合は、納戸から出して、コンセントをさしてスタートですが、スティック型は違います。立てかけてあるのを取り、スイッチを入れる。ただそれだけです。例えるなら、車庫に入れてあるクルマと玄関横の自転車、そんな違いがあります。
当然ユーザーのハートをわしづかみです。
しかし、そこから各メーカーは開発に追われます。電池の使用時間、吸引力、そして総重量をどこに置くのか、色々なメーカーが模索、新製品を出してきました。
しかし、何と言ってもポイントは軽量化です。
F1などの競技用自動車やツールなどで使われる競技用自転車も同じ、極限まで軽くします。そう、機動性のイロハのイは、軽量化なのです。しかし過度な軽量化は製品寿命を縮めます。当然家電は、F1のように、1レースだけ持てば良いという極端な軽量化はできません。
ここ数年、充電池が小型高性能になり、いいスティック型掃除機が出始めました。
その中でも、この日立の「ラクかる PV-BL20G」は軽い。全部込みで、1.3kgです。
手が感じる重さが、1.2kg以下だと、振り回すように掃除機を扱える
2年前の冬、各メーカーから掃除機を借りて、手元荷重を計ったことがあります。再現性がかなり悪いのですが、手元荷重が1.2kg以下だと、極めて使いやすいようでした。本体荷重ではなく、手にかかる負荷です。本体重量とは違い、ヘッドを床につけた状態での重さです。
今回テストしたPV-BL20Gは、本体重量、ヘッドがつかない状態で1.3kg。軽量化もここまできたかという感じです。当然、手元荷重1.2kgはクリアです。
軽量化の一つに小型化があります。小さすぎる場合、持った時、前かがみになる時もあります。実際、そんなモデルもあります。「ラクかる PV-BL20G」は軽いのにそういうことがない。いい感じです。(筆者の身長は169cm)
「軽い」「軽快」で嬉しくなった
実際に持ってみると、びっくりするほど「軽い。」
これは重心が手もとあたりにあるためです。カタログにある実重量は、その一つにしか過ぎません。
スイッチを入れるとスルスルスルッと前へ、ヘッドの小ささと相まって実に軽快。クルマの「フィアット チェクチェント」を思い出しました。映画「ルパン三世 カリオストロの城」でのルパンの愛車、黄色いちっこいクルマです。チェクチェントはイタリア語でハツカネズミの意。そんな感じでちょこまか振り回すことができます。
使い勝手がいいのもそうですが、この軽快さは、面倒くさい家事である「掃除」をさっさと済ませられる気になります。人を前向きにさせる雰囲気が嬉しいです。
標準モードでOK
吸い込むモードには、「標準」「強」と「ターボ」があります。
しかし、ターボは5秒ほど使えるので、ここ一番の必殺技という感じです。が、「ラクかる PV-BL20G」は標準が弱くなく、いい塩梅です。しかも動作音もうるさくありません。消費電力を一定にするためでしょうが、いいバランスです。
小さなダストケースにも一工夫
軽量掃除機は、各パーツを小型にするのがセオリー。サイクロン掃除機の場合、吸引されたゴミは、ダストケースの中でくるくる回り、溜まっていきます。このため、ダストケースは大きな方が有利です。また、小さいゴミが排気とともに再度放出されないように、ダストケースの上側、排気口にはフィルターが付いています。
この排気フィルターはかなり目が細かいです。そうでなければ、細かい、ハウスダストのようなゴミが再度空中にばらまかれることになります。また、このフィルターが目詰まりと、吸い込んだ空気の行き先がなくなりますので、吸引力は著しく落ちます。小型のダストケースの場合、大きなゴミでこの排気フィルターを目詰まりさせることがあります。それを防がなければなりません。
日立が取った方法は、ダストケースを大きく上下2つに分け、大きなゴミを下のエリアに閉じ込めることでした。上下に2つに分けるものにネットを採用。このネットで大きなゴミをトラップします。割と目は荒いので、空気はどんどん上に行きます。また、ネットにトラップされたゴミは、次から次へ押し付けられながら回転しますので、ついには円周上に圧縮されたゴミとなります。
小さなダストケースですが、この仕切りを用いた技術のため、小さいダストケースでも、2〜3週間ぐらいはゴミを捨てずに済みます。また、捨てるときのゴミは大きなゴミなので、粉塵の舞い上がりがありません。これはかなりイイ工夫です。
では、細かいゴミはどうするのかと言うと、水で洗って流して捨てます。「ラクかる PV-BL20G」のダストケース、フィルターは全て水洗いできます。こちらのほうのゴミのたまりは遅いですから、大体1ヵ月にいっぺんぐらいを目安に、メンテナンスしていただければと思います。よく考えられているので、小さなダストケースですが、あまり意識せずに、普通の感じで使うことができます。
イマイチなところは?
かなりイケてる感じのスティック型掃除機「ラクかる PV-BL20G」ですが、イケてないところもあります。一番大きな不便さは、ハンディー型として使うには、ちょっと不便なところがあるところです。
それは、吸い込み口が、ダストケースの上側にあるということです。ハンディ型の場合、吸い込み口が下側でなければ使いにくいのです。日立は、ここに小型のアタッチメントを用意してますが、私は短すぎるような気がします。
ロングタイプのアタッチメントも用意されていて、こちらは使いやすいです。しかし、本体にアダプター収納機能がないので、ハンディー型として使うときには、毎回アダプターを取りに行く必要があります。致し方がないと言えば致し方がないことなのですが、ここは工夫が欲しいところです。
また「ラクかる PV-BL20G」は、スタンドが付属されてます。まぁなかなかよくできたスタンドです。ただし、スタンドにおけば、そのまま充電してくれる機能は付いていません。これは必ずしもコンセントの近くにスタンドを設置できるわけではないので、そうしたのだと思いますが、使うたびに毎回、充電ケーブルを差し込まなければならないのは、少々面倒です。スマートフォンも最近は、ケーブルレス充電化されています。次の課題として、ここら辺は検討いただきたいと思います。
まとめ
日立のスティック型掃除機「ラクかる PV-BL20G」は、その名の通り軽さに特化した掃除機です。軽さ優先のために、他の性能をないがしろにすることはなく、うまいバランスで組み立てられています。このため、軽いという特徴を素直に享受できる掃除機に仕上がってます。
非常に使いやすい掃除機で、掃除をするのが苦になりません。私はこの「ラクかる PV-BL20G」を、掃除が好きな人はもちろん、強く、掃除が嫌いな人に勧めたいと思います。気持ちが良い部屋が、楽にキープできます。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。