今回は、エレクトロラックスのスティック型掃除機の2020年モデル「Pure Q9」についてレポートします。「エルゴラピード」という名前を捨て、大きくスタイルを変えました。今までは、全て似たデザインだったのですが、それが変わりよりモダンに。また、使い勝手も向上しています。私が持っている「エルゴラピード パワープロプラス(2019年モデル)」と比較してみました。
2大掃除機が「洗練化」
基本開発が終わった
先日、ロボット型掃除機の「アイロボット ルンバs9+」が、基本的な開発を全て終え、より洗練度を高めたことをレポートしました。今回は、スティック型掃除機の「エレクトロラックス Pure Q9」についてレポートします。
ロボット型掃除機、スティック型掃除機が、ほぼ同時に基本開発を終えています。共通項は何でしょうか?それはバッテリーです。双方とも、エネルギーはバッテリーです。その容量内で、掃除を終わらせなければならない。ということは、あるレベル以上強いバッテリーがないとダメだということです。
バッテリー容量で、モーターパワーと使用時間が決まります。皆さん、吸引力が強い掃除機を好みます。私もそうです。しかし、それが5分しかもたなかったらどうでしょうか? 使えませんよね。このため全メーカー、バッテリーを色々な方法で求めます。
十分実用に足るバッテリーがスティック型掃除機に搭載されるようになったのは、2018年頃。エレクトロラックスの2019年は、ヘッドのブラシをローラーに変えました。これが一つの完成系でした。
そして、 この2020年モデル「Pure Q9」は、洗練に踏み出したのです。今後を担う2大掃除機メーカーが、同時に洗練に踏み出したのは、バッテリーというハードルを超えたためなのです。
エレクトロラックス「Pure Q9」
エレクトロラックスの変化
名前が変わった!
名前の「Pure」です。もともと、エレクトロラックスのメイン品番は「エルゴラピード」シリーズです。2in1の考え方を世に打ち出したモデルです。その他に「Pure」もあります。その名が冠された「Pure F9」は、重心を変えることができるユニークなモデルです。
普通に使っている間は、それなりに使えるモデルなのですが、重いのです。自立型としても重い。スティック型掃除機は軽快さが売りですから、このモデルの評判はイマイチです。しかしコンセプトは秀逸、今後のスティック型掃除機はこうあるべきだという意志が伝わって来ます。そのためでしょうか、エレクトロラックスは、「Pure」という名前を使ってきました。こういうところは、海外メーカーですね。勝つまで頑張る感じです。
「エルゴラピード」という名前を捨てた今回の「Pure Q9」。大きくスタイルを変えました。非常に使いやすい2in1は変わりませんが、見栄えがすごく変わりました。
スティック型掃除機の本体は、ハンディ掃除機です。今までは、全て似たデザインだったのですが、それが変わりました。もともとシンプルかつ美しいデザインだったのですが、メタルフレームを使ったことによりすごくモダンになりました。大体、フレームとハンディ掃除機の間に、魅せる隙間を作るなど、誰が考えたでしょうか?未来的で、かつ古典的な優雅さを持っています。実用品ながらアートに近い。しかし、それが全て実用に結び付いている。すごいと思いました。
また、以前の記事でも書きましたが、開発途中でデザインを大きく変えないのは、ルンバと同じですね。
キャッチコピーは「踊るように、奏でるように」
Pure Q9のキャッチコピーは「踊るように、奏でるように」。実際に使って見ると、キャッチコピーは少々オーバーですが、洗練されていることがわかります。
もともとエレクトロラックス社のスティック型掃除機は、自立式ですから、掃除するときあまり力が要りません。力が必要なのは、充電スタンドにセットする時ですね。エルゴラピードは、一度上に上げて、はめ込む感じでセットします。この一度上にあげる時、力が要るのです。掃除始めはいいですね。まだ余力があります。掃除をやり遂げると、チョッチ疲れ気味。そんな時のヨイショ、ドッコイショは、あまり嬉しくありません。で、今回はそれがない。掃除機をスタンドにバシッと合わせる感じです。しかもその時、正常にホールドすると、音がします。ちょっと気持ちの良い音です。気持ちよく使うために、光と音もデザインする。最近の欧州で流行っているデザイン手法です。
「エルゴラピード パワープロプラス」との比較
パワーアップした吸引力と動作音
ここからは、小職私物のエルゴラピード パワープロプラス(2019年モデル)と比較してみましょう。私物なので、褒めるわけではないですが、実に気持ちよく使えるモデルで随分気に入っています。
外観が大きく変わったのは、前述の通りですが、書いていないところがあります。それはヘッドローラーです。Pure Q9はエルゴラピード パワープロプラスに比べて、圧倒的にローラーが大きい。これはダイソンに習ったのかもしれません。床を磨くように掃除する感じです。自室で使ってみましたが、問題ありません。というより、エルゴでも、吸引力にほとんど不満がないので、明確な差は感じられませんが、不十分と感じることは全くなかってたです。隅の方も、押し付けると1回で取れたりします。また、ブラックにアクセントグリーンが入っているので、汚れがわかりにくく、気品もあります。これも良い感じです。
ただ差もあります。エルゴラピード パワープロプラスは強、標準の2種類。それぞれ、持続時間は16分と48分。私の掃除エリアは狭いので、強で対応します。対しQ9は、強、中、低の3種類。それぞれ、14分、25分、53分。これから推測すると、中はちょっと強力に、強はかなり強力になっています。
しかし動作音は全く違います。どのモードでも高音がカットされています。言い換えると、なんか口籠もったような感じ。モーターの勢いを音から感じられません。ただ、それなりに音は大きく感じられます。これもプラス要因です。ただ日本メーカーほど、念入りではありません。
ハンディ掃除機の外しが楽
次は、高さがないところに突っ込んだときの追従性。こちらもグッドです。これはエルゴラピード パワープロプラスでも美点で、Pure Q9にもその良さは受け継がれています。
本体、ハンディ掃除機を外す時です。エルゴラピード パワープロプラスでは、フレームを支えて、ボタンを押して、本体を持つ感じでした。3アクションです。これ自立させて行うのですが、結構力がいる時が多かったのです。しかし、Pure Q9は、それが、引けば取れる、押し込めばパチリと入るように変わりました。これ実に楽です。
排気フィルターのスペックを開示
性能は高性能空気清浄機並
Pure エレクトロラックスは、排気フィルターのスペックを数値で出します。Pure Q9の場合は「5段階フィルターシステム搭載により、 0.3μm-10μmの微粒子を99.9%カット」とされています。
これは、普通のように思えますが、これがなかなか。掃除機でフィルタースペックを開示しているメーカーはほとんどありません。エレクトロラックスも数年前は出してませんでした。質問しても「答えられません」。私が、このスペックを重視するのは、吸引された花粉、ハウスダストが排気で部屋にまき散らかされる可能性、窓を閉めて使っても問題ないかを確認するためです。しかし、いろいろな理由で、ここを開示しないメーカーが多いのは残念なことです。
しかし、余裕が出たのでしょうか。エレクトロラックスは開示を始めました。しかも出てきた数字は、十分すぎる性能を示します。ほとんど、高性能空気清浄機並みです。
まとめ
一歩前進した「2020年モデル」に期待
コードレススティック型掃除機の元祖、エレクトロラックスが作った2020年モデルは、今までの集大成を一歩前進した、2020年代のプロトタイプと言えるモデルです。
しかし、この洗練度と使いやすさ。2019年モデルを持っている私ですが、この未来と古典的な優雅さを合わせたスティック型掃除機かなり心を惹かれています。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。