ロボット掃除機ルンバのメーカー・アイロボット社の社長は、ルンバ i7+の発表時「創業当時に作りたいものが作れた。」と宣言しました。17年もの間、形や大きさをいじらず開発を続けたのは「理想とするロボット掃除機のプロトタイプ」を作りたいと創業当初の理念を曲げなかったから。そしてできたのがプロトモデル「ルンバi7+」なのです。今回は、2020年に登場した洗練モデル「ルンバ s9+」を紹介しましょう。
令和時代の三種の神器は?
市民権を得た時短家電
令和時代の家電三種の神器として挙げられるのが「ロボット掃除機」「食器洗浄機」「乾燥機付き洗濯機」です。これ、全て時短家電でもあります。ただし、未完成な部分が多いことや、日本人はランニングコストがかかるものを嫌うなどの理由により、必ずしもこれらの家電が日本で成功を収めているとは言い難いですが、世界的には、これらが標準になりつつあります。
昔のように男女で役割分担をする時代が終わり、男女同権で働きに出るのが一般的な世の中となりました。となると、日中家事はできません。夜戻って、掃除、洗濯、掃除、お風呂に食事、ボディケアにメンタルケア。どれ一つとして、時間に余裕があるわけではありません。
忙しいと言う字は、心を亡くすと書きます。なんとかして機械代行はできないか?と思ってもおかしくないでしょう。そこで登場したのが「ロボット掃除機」「食器洗浄機」「乾燥機付き洗濯機」なのです。
今回はこの中のロボット掃除機「ルンバ」にフォーカスしましょう。
アイロボット社が目指したもの
アイロボット社の集大成「ルンバi7+」
ルンバ i7+の発表の時、アイロボット社の社長は「創業当時に作りたいモノが作れた。」と宣言しました。アイロボットの狙いは、スマートホームをプロデュース。ここでいうスマートホームは、家事を人にさせないという意味です。それで作ったのがロボット掃除機「ルンバ」です。
ルンバのデビューは、2002年。そして、アイロボット社が、目的を達したと言うモデル i7+が出たのが、2019年ですから、17年もの時が経っています。ルンバで彼らが目指したのは「床掃除からの解放」。床掃除を思い出さなくてもいいようにすると言うことでした。ルンバは2002年の初モデルから、この最終目標を掲げてきました。
目標は一言ですが、実際にしてみると、どうすりゃいいんだと言うことが目白押し。例えは、ヘッドブラシ一つをとっても、髪の毛が付くとブラシは回らなくなりますので、効果は数段落ちます。手があるなら、ハサミなどで髪の毛をカットし取り除いてやればいいのですが、ロボット掃除機に手はありません。それを解決したのが「デュアルアクションブラシ」。これだけでもすごい技術ですが、ルンバの最終目標からすると、一つの要素技術ができたに過ぎません。
賢いAIによる室内のマッピング。各種センサーによる確実な掃除。半年以上ゴミを溜めておき、簡単に捨てられるクリーンベースなど、アイロボットが理想とする「床掃除という家事を忘れることができる」を実現するための、各種技術を開発してきました。それの集大成が、ルンバ i7+です。17年かけてでも、目標に向かってひたむきに開発を重ねたアイロボット社。ご立派と言うしかありません。
目的を達成するまで大きさ・形を変更しなかった理由
私は数年前に、アイロボット社の副社長に独占取材をしたことがあります。その時、サイズのことを聞きました。理由は、ルンバは日本で使うには少々大きいと思ったからです。
副社長は、うなずきながら答えてくれました。「我々は、早く自分らが理想とするロボット掃除機のプロトタイプを作りたいと思っている。その開発スピードを維持するためには、サイズを変えることはできない。このため、それができるまで、形、サイズはいじらない。」
これは、スゴイと思いましたね。さすが創業メンバー。自分のやりたいことをしっかり持っています。この呪縛から解き放たれた2020年モデル「ルンバ s9+」は、どんなモデルなのでしょうか?
目的達成後のモデル「ルンバ s9+」
前モデルとの違いは?
スバリ大幅に違うのは、洗練度です。物としてではなく、掃除が実に洗練されています。2019年モデルが、バイトが掃除しているのだったら、こちらはあなたの部屋を心得た執事、メイドの手際良さがあります。
このために形状をD型に変え、吸引力をアップさせ、vSLAMという最新のナビゲーションシステムを入れたのも、より洗練度を上げるためです。
半年は床掃除を忘れていられる
結果は、素晴らしく、実に適格に、要を得た感じで動くのです。また、スマホでもAmazon Alexaでも動かせます。実に便利。電池が無くなれば、自動的にクリーンベースまでもどり充電しますし、掃除も丁寧。何たって、その日のゴミは、クリーンベースの定位置に来た時、ベース内の紙パックに送られますので、トラブルがない限り、半年位床掃除を忘れていることができます。
プロトモデルと洗練モデルの価格差
クルマもそうですが、洗練はお金と時間がかかります。段々コストマフォーマンスが、悪くなります。オンラインショップで確認すると、ルンバ s9+は、186780円(税込)。前のルンバ i7+が、142868円(税込)ですから、差は43921円。最安価モデルのルンバ e5の49800円(税込)がほぼ買えてしまうに近しい金額です。
しかし考えて見てください。掃除20分/日とすれば、年間で5日がフリーとなります。5年で25日。10年で1ヶ月以上ですから、高いと言うには値しないかもしれません。そう言う意味では、働く人全員におすすめしてもいいかもしれません。
ルンバs9+
まとめ
ルンバs9+は少々高くても元が取れるクオリティ
アイロボットの新しい一歩、ルンバ s9+は、ロボット掃除機をより洗練させました。そして、それは床掃除を忘れていることができるレベル。もう、昔の様に、一週間に一度は人が掃除しなければならないということはありません。少々お高いのですが、ライフスタイルにハマれば、確実に元が取れます。
また、アイロボットは、サブスクリプションを行なっています。まだ s9+はラインナップされていませんが、そのプロト、i7+ はラインナップされています。それでチェックして、よければ買うという形はどうでしょうか?
自分に合った買い方を模索するのも、一つの面白みだと思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。