【麻倉怜士の4K8K感動探訪(11)】NHKBS4K・アニメ『ムーミン谷のなかまたち』は素晴らしく繊細な映像美!

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アニメに4Kは合うのか? 実写と異なり、そもそもディテールがないのだがら、4Kの有り難みはあまりないのでは? 確かに、輪郭がはっきりとして、その内側はまったく平面的な色だけの日本的なアニメは「4Kはどうなのか」と思うが、すでに昨年4月からNHK4Kで放送が始まっている、フィンランド・イギリス共同制作の『ムーミン谷のなかまたち』は、まさに「4Kアニメとはこれだ!」と快哉を叫ぶ、高品質で4K的なのである。日本では埼玉県飯能市でムーミンテーマパークが開場するなど、ムーミン人気がとても高い。私もその程度の知識で、4Kムーミンを見たのだが、実に素晴らしいではないか。

執筆者のプロフィール

麻倉怜士(あさくら・れいじ)

デジタルメディア評論家、ジャーナリスト。津田塾大学講師(音楽理論)、日本画質学会副会長。岡山県岡山市出身。1973年、横浜市立大学卒業。日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。高音質ジャズレーベル「ウルトラアートレコード」を主宰。
▼麻倉怜士(Wikipedia)
▼@ReijiAsakura(Twitter)
▼ウルトラアートレコード(レーベル)

アニメと4K?

『ムーミン谷のなかまたち』(原題:Moominvalley)は、トーベ・ヤンソンとラルス・ヤンソンのムーミン・シリーズを原作とする、フィンランドのガッツィ・アニメーションズ(Gutsy Animations)、フィンランドの国営放送YLE、およびイギリスのSkyが共同で製作した3Dアニメ作品だ。アニメーション制作は、フィンランドのアニマ。ムーミン谷を舞台に、好奇心旺盛で心優しいムーミントロールの日常を描く。

私がこの作品に興味を持ったのは昨年4月、フランスはカンヌのMIPTV「世界のアニメ」セッションに、ガッツィ・アニメーションズCEOでクリエイティブ・ディレクターズのマリカ・マカロフ(Marika Makaroff)氏が登壇したからだ。

「最初にムーミンを4Kでやろうと思った時は、周りから反対されました。4Kは製作費が掛かることと、せっかく制作しても、フィンランドではプライムタイムにアニメを放映しないからです。でもイギリス・スカイとの共同制作のおかげで、4Kの素晴らしさが内外に分かってもらえ、世界的に放送が始まったのは、たいへん嬉しい」と述べた。

ムーミンの肌の「毛羽立ち」や「布的な質感」が細やかに表現

その後、帰国してからエアチェックしてあった『ムーミン谷のなかまたち』を見た。だから取材が先、体験が後という逆順になったのだが、映像を見ると、制作者の思いがとてもよく分かった。

ムーミンの肌の細かなけばだちや、布的な質感が実にこまやかに表現され、立体感も豊穣だ。思わず抱き締めたくなるような可愛い、4Kならではのナチュラルさも素敵。白いムーミンの体に、回りのオブジェクトの色が微妙に映り込むところなど、実に芸が細かいのである。

マカロフ氏はこう言った。

「一番悩んだのはムーミンの造形です。スティーブ・ボックス監督(「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」でアカデミー賞受賞)と一緒に、2D、ストップ・モーション…など、あらゆる方向性を試しました。そんな中、当時3歳だった私の息子が、『ハグできるムーミンがいい』って言ったんです。やわらかくて手触りがいいぬいぐるみ、みたいな。それで、かわいくて思わずハグしたくなるムーミンを目指しました」

確かに。4Kのムーミンは、感触が柔らかく、それでいて、のっぺりとはせずに、肌のうぶ毛まで、繊細に表現されている。まさに「やわらかくて手触りがいいぬいぐるみ」の触感が4Kならではだ。

3Dの絵の上に、さらに手描きで絵を加え、筆跡を残した背景も暖かく、ヒューマンだ。2Dの手書きの風合いと3Dを融合させ、リアルにして、絵画のような温度感は、4Kの描写力の賜物だろう。

大事なのは、4Kの画質力がムーミンの絵画的な質感を見事に伝えているに留まらず、 その手書き的な感触がムーミンのヒューマンな世界観と感情に見事にシンクロし、ムーミンの世界にまさに没入させてくれることだ。4Kアニメは大いに可能性、ありと思った。

©MOOMIN CHARACTERS TM ©GUTSY ANIMATIONS 2019

「ひかりTV」でも配信スタート

NHK・BS4Kにて2019年4月から第1シーズン全13話が始まり、現在は2020年1月から第2シーズン全13話が放送されている。NHK・BS4Kは毎週日曜午後10時50分、翌週日曜午前9時45分再放送、翌週月曜午後11時15分再放送が、放送シークエンスだ。

8月の放送予定

・8月16日(日)午前9時45分「飛行おにの帽子」 (再)
・8月16日(日)午後10時50分「トフスランとビフスラン」 (再)
・8月17日(月)午後11時15分「飛行おにの帽子」 (再)
・8月23日(日)午前9時45分「トフスランとビフスラン」 (再)
・8月23日(日)午後10時50分「ルビーの王様」 (再)
・8月24日(月)午後11時15分「トフスランとビフスラン」 (再)
・8月30日(日)午前9時45分「ルビーの王様」 (再)
・8月30日(日)午後10時50分「お別れの時」 (再)
・8月31日(月)午後11時15分「ルビーの王様」 (再)
※9月の放送時間も同じ。後期(10月~3月)も放送予定。

8月1日からは、NTTぷららの映像配信「ひかりTV」VODサービスにて、4K配信が開始された。9月21日からはテレビサービスで配信がスタートする。21日9時に初回配信、以降、毎週月曜~金曜9時にレギュラー配信の予定だ。VODでは字幕と吹替を、テレビサービスでは吹替版のみの配信する。

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麻倉怜士(AV評論家)

デジタルメディア評論家、ジャーナリスト。津田塾大学講師(音楽理論)、日本画質学会副会長。岡山県岡山市出身。1973年、横浜市立大学卒業。日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。高音質ジャズレーベル「ウルトラアートレコード」を主宰。

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