ストリーミング形式で音楽を聴くことが一般化した今でも、好きなCDの音源をパソコンやスマホなどの端末にインポートする人は多いでしょう。とはいえ、具体的にどんなファイル形式になるかは意外と知られていないものです。今回は音楽ファイルの形式について、MP3などの圧縮音源と非圧縮音源の違いなども含めて、分かりやすく解説します。
ビットレートとは?
音楽ファイルの形式について説明する前に、まずは基礎知識となる「ビットレート」という概念について簡単に解説します。
ビットレートとは、1秒間で送受信できるデータ量を表す数値です。より分かりやすく解説すると、「1秒あたりに含まれる情報量」を示す指標のようなものになります。
音楽ファイルにおけるビットレートは「〇〇kbps」という数値で算出され、この値が大きければ大きいほど高音質になり、データ量も膨大なものになります。
音楽ファイルの形式まとめ
MP3
1993年に誕生した音声ファイルフォーマットで、最もメジャーな形式です。もともとは映像データの圧縮方式から派生したファイル形式で、CDなどに収録された音楽データのうち、人間の可聴域から外れた音声をカットすることでデータ容量の圧縮を実現しています。
CDと比較して、その圧縮率は5分の1から10分の1となっており、iPodやウォークマンに代表されるポータブルプレイヤーの普及に繋がりました。一般的なMP3ファイルは128kbps~320kbps前後の容量となっており、320kbpsになるとCDと遜色ない高音質の音楽ファイルとして利用できます。
WAV
圧縮処理を施さない音楽ファイルで、CDに収録されたデータと同一の音質をそのまま楽しむことができます。高音質の音楽ファイルの総称である「ロスレス」にも該当するデータ形式です。
なお、一般的なCDのデータは44.1kHz/16bitというフォーマットになっており、ビットレートに置き換えると1411.2kbpsとなります。1分間あたり10MBという大容量ファイルになるため、保存先のストレージ容量を圧迫してしまうデメリットも存在します。320kbpsの圧縮音源と大きな差異はないとされているものの、可聴域以外の音も内包しているため、視聴環境によっては圧縮音源で感じられない音質の良さを体験できます。
AAC
1997年に誕生した、MP3の後継フォーマットです。同一のビットレートであればMP3に勝る高水準の音質が特徴で、圧縮率も高いため音楽ファイルの形式としては現状主流のひとつと目されています。
Apple社のiPodやiTunesなどがこの形式を主要フォーマットとして採用していたこともあり、登場以降急速に普及しました。
FLAC
ロスレス音源(可逆圧縮音源)の一種で、MP3などの圧縮音源、WAVなどの非圧縮音源の中間的な存在です。高音質を追求しつつ、データ容量を節約したい場合に用いられるファイル形式です。
その他
以上が現在主流とされる音楽ファイルの形式ですが、ほかにもAppleが開発したApple Lossless(アップルロスレス)やSONYが開発したATRAC、Windowsが開発したWMA、ガラケー時代に広く普及した3gpなどさまざまなファイル形式が存在します。現在でもデータとして利用できるものの、主流のファイル形式に比べて品質や対応機器の種類などで一歩劣るため、あまり一般的ではありません。
非圧縮・可逆圧縮・非可逆圧縮の違いとは?
音楽ファイルは、非圧縮音源・可逆圧縮音源・非可逆圧縮音源の3種に大別されます。
非圧縮音源は、先述したwavファイルのように、CDなどのデータを圧縮せずそのまま利用するファイル形式です。容量の重さと引き換えに、高音質を実現しています。
可逆圧縮音源は、ロスレス音源とも呼ばれ、圧縮時に発生するデータの劣化を最小限に抑え、非圧縮へと再変換可能な形式として開発されました。
非可逆圧縮音源はMP3、AACなどが該当し、音質をある程度保ちつつデータを軽くする代わりに、圧縮前のファイルへ復元することが困難になっています。
ハイレゾ音源とは?非圧縮音源と何が違う?
ここまで音楽ファイルの基礎知識について解説しましたが、昨今注目を集めているハイレゾ音源はどのような立ち位置なのでしょうか。
ハイレゾ音源とは、CD内に含まれる情報より更に大容量のデータで高音質を追求した音声規格の総称です。CDに限りなく近いwavファイルよりも、更に大きな96kHz/24bitから192kHz/24bitの音源がこれに該当し、主にロスレス音源のFLACファイルを採用してクリアな音質を追求しています。
通常のイヤホンやプレイヤーとは異なり、それぞれハイレゾ再生に対応した機種を利用することで真価を発揮する音楽ファイルです。
まとめ
今回は音楽ファイルの形式について、基礎知識や大まかな種類などを整理して解説しました。音楽ファイルの形式については、用途や視聴環境、保存容量などによって適したものが異なります。そのため、一概にこれ!というオススメは存在せず、自分のニーズに沿って選択していくことが求められます。