【機動戦士ガンダム】劇場版 三部作が4Kリマスターで蘇った!あの名セリフ、音楽、効果音を臨場感たっぷりに楽しめる

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音の良いアニメを紹介するシリーズの第5回は、筆者が首を長くして待っていた「機動戦士ガンダム 劇場版三部作 4KリマスターBOX」。5Kスキャン&4Kリマスターの映像に加え、音声は最新のサラウンド方式であるドルビーアトモスでの収録となった。まさに決定版と言えるパッケージが、ついに登場。ロボットアニメの金字塔であり、社会的にも大きなムーブメントとなった偉大な作品を改めて体験してみた。

もはや説明不要。「ガンダム」の原点となる劇場版三部作

1979年にTV放映を開始。当初は人気が低迷しており放映話数も短縮になってしまったものの、熱心なファンの声に支えられて徐々に人気を高め、TV再放送や劇場版三部作、ガンプラの販売などによって人気が爆発。いまや誰もが知っている「ガンダム」の原点だ。作品についての詳しい説明は、もはや不要だろう。少年の成長物語であり、宇宙を舞台にした独立戦争というドラマ、宇宙を生活の場とした人類の革新など、さまざまな要素が盛り込まれたエポックメイキングな作品だ。

この作品は、ビデオやLD、DVD、BDとパッケージメディアが移りかわるごとにリニューアルされて発売されてきた。いまや最初の劇場公開当時に見た人よりも、ビデオなどで見たというファンの方が多いだろう。筆者も劇場公開版を見て以来、DVDやBD版が出るたびに購入して見てきたが、今見るとどうしても“古さ”を感じてしまいがちだった。40年以上前のTVアニメを再編集した作品なのだから、仕方のないところではある。作品としての素晴らしさや見どころ、聴きどころはわざわざ視聴するまでもなく頭と身体が覚えているので、なおさら、現代の最新のアニメとの違いが気になってしまった。

「機動戦士ガンダム 劇場版三部作 4KリマスターBOX」のボックスと同梱物。ブックレットは100ページに及ぶ。

【発売・販売元】バンダイナムコアーツ(C)創通・サンライズ

筆致や色の濃淡まではっきりと見える4K版映像

しかし、今回は違った。フィルムに記録された情報をすべて収録するため、フィルムの余白にあたる部分まで5K解像度でスキャンし、キズやゴミの除去といった修復、色調整、HDR化を施して完成した4K版の映像は、とても新鮮だった。子供のころ、劇場で見たときの衝撃を思い出すような出来だ。

宇宙空間の微妙な濃淡も豊かに再現されている。戦闘の迫力もさらに増している。

(C)創通・サンライズ

暗い宇宙に浮かぶ円筒型のコロニーの中には、空の向こうに市街が見えていて、人々が宇宙に住んでいることがわかる。何度も見たスペースコロニーの描写だが、筆致や色の濃淡まではっきりと見える。

キャラクターの描線も実にくっきりとしていて、描き手のタッチがしっかり出ている。余計なノイズが少なく、撮影時のズレによる不自然な画面のガタ付きもなく、できたてホヤホヤの新作を見ているような新鮮さに驚かされた。もちろん、作画をやり直したということはなく、素材はオリジナルのままだから、現代とは異なる当時のアニメであることは間違いない。荒さや古さは感じないが、フィルムならではの粒子感が適度に残っていて、フィルムらしい感触も味わえる。

「機動戦士ガンダム 劇場版三部作 4KリマスターBOX」を見始めると、余計なことが一切気にならず、物語に没頭してしまった。これまで、DVDやBDで見たというだけの人は、きっと驚くに違いない。「これが40年以上前のアニメなのか」と。改めて、現代まで続く大きなムーブメントを起こした作品の凄さに気付くと思う。

映像は極めて鮮明。HDR化でビームサーベルの発色も鮮やかだ。

(C)創通・サンライズ

声の力が、音楽が、身体を震わせるドルビーアトモスの力

この記事の本題である「音」も素晴らしい。といっても、音源そのものは劇場版オリジナルのモノラル音声だ。ドルビーアトモスだからといって、ガンダムのビームライフルなどの射撃音がビュンビュン前後左右に移動することもないし、最新のアクション映画のような派手な音の演出などはない。最初のうちはモノラル音声そのままかと思ってしまうほど、違和感がない。

しかし、宇宙空間のシーンで聴こえる呼吸音のようなシュー、シューという音は、すべてのスピーカーから出て、自分が宇宙服を着て宇宙空間に浮かんでいるような感覚になる。ホワイトベースの館内の空調音や機械の動作音などの環境音も同様で、自分がその場に居るような臨場感がある。

音楽は、前方を中心とした音場感で再現される。正確にはドルビーアトモスの特徴であるトップスピーカー(天井など高い位置に配置するスピーカー)からも再生されるので、前方のやや高めの位置になる。そして、画面を見ているとほとんど気付かないが、後方のスピーカーからも小さな音で音楽が流れていることがわかる。この感じは、音楽ソフトのサラウンド音声に近い音の配置だ。目の前にあるステージのオーケストラや楽団の生演奏を聴いている感じ。高い天井のホール特有の降り注ぐような響き、ホール全体の美しい響きが含まれた音の再現だ。

「ガンダム」では、セリフや効果音はそのままに、音楽だけをオーケストラの生演奏に置きかえた「機動戦士ガンダム シネマ・コンサート」が行われたことがあり、BD版も発売されているが、そのときの感覚に近い再現だ。この作品はあくまでコンサートなので、生演奏の音圧の大きさに驚かされる。コンサートで見たときは、クライマックスで大きな音を出すとセリフなどがやや聴きづらくなる箇所があったほど。だが、音楽が目一杯の音量で鳴らしたときの迫力は素晴らしいものだ。「音が良くなると作品の面白さは倍加する」というのは筆者の長年の経験から得た言葉だが、音楽の力の凄さを体感できるものだ。これがオリジナルの音楽のままで、セリフや効果音とのバランスまで最適に調整されて収録されているのが、本作のドルビーアトモスの音だ。

一般に映画の音は、シーンによって優先順位が変わることはあっても、セリフをきちんと聴きやすくすることが一番重要。爆発音のような音も、セリフが聴きづらくならないように音量や音の出るタイミングを調整されている。音楽も同様で、クライマックスで一気に音が大きくなるとセリフとかぶってしまうので、音量差は控えめになる。このルールは本作でも基本的に同一だが、ドルビーアトモス化で音のチャンネル数がかなり増え、1つのチャンネルですべての音を記録したため、音が混濁したり、重なった音が聴きづらくなるということが少ない。だから、音楽もかなりダイナミックに鳴る。もちろん、セリフも今まで以上に力強く出てくる。声を出す直前に息を吸う感じ、セリフの合間の息継ぎのニュアンスまでも感じられるような生々しい声になっている。

テキサスコロニーで出会ったセイラとシャア。ジオンの遺児であるふたりのドラマも見どころ。

(C)創通・サンライズ

想像してみてほしい。「機動戦士ガンダム 劇場版」で、アムロがガンダムのコクピットに乗り込み、ガンダムが立ち上がるときのセリフと音楽を、アムロがブライトに殴られたときのセリフのやりとりを。「機動戦士ガンダムII 哀・戦士編」で、多くの戦士が必死に戦うときに放つ言葉を。「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」での、アムロとララァの出会いやニュータイプとして共感する場面で流れる「めぐりあい」が切々と流れる場面を。ア・バオア・クーへの侵攻が始まるクライマックスで静かにイントロが流れはじめ、ザクに乗る若いパイロットが被弾して爆発した後、“ジャジャン!”と鳴ってから歌い始める「ビギニング」を。

三部作の中の数々の名シーンのセリフと音楽が、記憶しているとおりのタイミングでより感動的に鳴り響く。もちろん、説明したとおりに、さまざまな環境音や戦闘シーンでの爆発音などが臨場感たっぷりに包み込んでいる。そこに力強いセリフと音楽が重なっていく。当時を知らない人でも身体が震えるような感動を覚えるはずだ。

宇宙で対峙する4人。それぞれの迫真の演技が実に生々しく再現されている。

(C)創通・サンライズ

まとめ

ガンダム最後の一撃。心に残る名シーンだ。

(C)創通・サンライズ

「ガンダム」の凄さが改めてわかるはず。劇場版の感動をもう一度

劇場版公開当時の熱狂は、多くの報道や記事で読むことができると思うが、当時を知らない人に、その熱気がどこまで伝わっているかはわからない。ビデオソフトで見直してみても、作品の古さなどが気になり、物語の良さなどはわかるものの、大きなムーブメントになったことが実感しにくいのではないだろうか。

だが、「機動戦士ガンダム 劇場版三部作 4KリマスターBOX」を見れば、当時の熱狂がきっと伝わると思う。数あるガンダム作品の中で、1年戦争時代を舞台にした作品は今でも人気が高いが、そこまで愛されている理由もわかると思う。当時を知っている人はもうすでに楽しんでいるはずなので、あえて当時を知らない若い世代の人達におすすめしたい。劇場版を初めて見たときの衝撃と感動をきっと体感できるはずだ。

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鳥居一豊(AVライター)

オーディオ、AVの分野で活躍するAVライター。専門的な知識をわかりやすく紹介することをモットーとしている。自らも大の映画・アニメ好きで自宅に専用の視聴室を備え、120インチのスクリーン、有機ELテレビなどを所有。サラウンド再生環境は6.2.4ch構成。

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