ドイツのエラックは、音楽性が豊潤なスピーカーの作り手として知られる。そのエラックに新風を吹き込んできた、世界的なスピーカー・エンジニアのアンドリュー・ジョーンズ氏が、退社するに当たって遺した作品を中心に編んだシステムだ。オーディオ性と音楽性がみごとに調和した名スピーカーだ。
本稿は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
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スピーカー
エラック「UBR62」
ドイツ
実売価格例:14万1080円(ペア)
●幅208mm×高さ359mm×奥行き334mm
●11.7kg(1本)
「Uni-Fi Reference」シリーズの一作。25ミリ・ツイーター+100ミリ・ミッドレンジと165ミリ・ウーハーの同軸ユニットによるバスレフ型3ウエイ。
ネットワークCDレシーバー
テクニクス「SA-C600」
日本
実売価格例:11万円
●幅340mm×高さ94mm×奥行き341mm
●4.8kg
CDドライブ、ストリーミング機能などを内蔵した一体型のプリメインアンプ。MM型カートリッジ対応のフォノイコライザーまでも搭載する、オールメディア対応機だ。
組み合わせ価格:25万1080円
世界的スピーカー設計者の最終スピーカーは大傑作
ドイツのエラックは、音楽性が豊潤なスピーカーの作り手として知られる。そのエラックに新風を吹き込んできた、世界的なスピーカー・エンジニアのアンドリュー・ジョーンズ氏が、退社するに当たって遺した作品を中心に編んだシステムだ。
ジョーンズ氏は、英国KEF、日本TADを経て、エラックに入社。まずはアメリカ市場を開拓するスピーカーの開発を任された。2015年の「Debut」、2016年の「Uni-Fi」、2017年の「ADANTE」と毎年、新作を開発。2019年の「CARINA」から、ヨーロッパ市場向けの本流製品も手掛けた。
そして最後のエラック製品が、Uni-Fiのモデルチェンジ版「Uni-Fi Reference」。今回は、ブックシェルフ型スピーカー、UBR62を選んだ。同軸ユニットを改良し、格段の音質向上を実現し、みごと有終の美を飾った。
組み合わせるのは、一体型システムのテクニクス・SA-C600だ。かつてアンプで「一体型」というと、CDプレーヤー内蔵という意味だったが、今では、ディスクメディアからハイレゾ、ストリーミング機能まで含有するものを呼ぶ。
トップローディング方式のCDドライブにより、再生中に回転CDが見える仕掛けもグッド。MM型カートリッジ対応のフォノイコライザーを搭載しているので、レコードプレーヤーの接続も可能だ。本アンプ自体の音調は低域から高域まで、ウエルバランス。音楽を軽やかに演奏し、その進行にチャーミングなアクセントを付け、明朗に前向きに奏でる。
SA-C600で鳴らしたUBR62は、質感の高さが印象的。音場の出方もすがすがしい。まるで自然に、そこから音がわき出るという雰囲気。音の粒子が細やかでグラデーションも緻密。「チーク・トゥ・チーク」冒頭の「HEAVEN♪」という歌詞の優しい発音が素敵だ。ボーカル音像の立体感もいい。「フィガロの結婚」では、まさに空間そのものから、躍動的な弦楽が浮かび上がる。音楽的表情が上質で、空間に放出される音には、生命力がみなぎる。
さすが、アンドリュー・ジョーンズの作品は違う。オーディオ性と音楽性がみごとに調和した名スピーカーだ。
■解説/麻倉怜士(デジタル・メディア評論家)
※情報は記事作成時のものです。
※この記事は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)に掲載されています。