ふだんは楽天的な筆者だが、3月が近づくと災害に対する備えについて、かなり意識するようになる。そこで今回は、ポータブル電源を比較してみた。対象にしたのは、リチウムイオン電池を搭載し、AC100ボルト出力(コンセント)があり、容量が500ワットアワー(Wh)前後の4製品だ。
「ポータブル電源」はモバイルバッテリーの超大型版
リチウムイオン電池を搭載したポータブル電源というと、スマホを充電するために持ち歩くモバイルバッテリーを思い浮かべるかもしれないが、ここでいう「ポータブル電源」は、超大容量で大型のモバイルバッテリーである。
モバイルバッテリーの場合、出力端子はUSBのみだが、ポータブル電源ではAC100ボルトのコンセント出力も装備されている。
従来、コンセント出力が付いた屋外用電源といえば、ガソリンやカセットガスを使う発電機だったが、リチウムイオン電池の小型化・大容量化により、電池からAC100Vが取り出せるようになった。
これにより、排気・ニオイ・騒音・メンテナンスなどの煩わしから解放されたわけだ。
●注目の「ポータブル電源」
ホンダ
LIB-AID E500
本機は、「ホンダカーズ」で販売されている。
小型発電機で培った技術が投入されており、LIB-AID2台や同社のガソリン発電機、カセットガス発電機を並列接続して出力ワット数を上げることができる。
自動車のシガーソケットから充電できるモデルもある。
SmartTap
PowerArQ
619ワットアワーの大容量電池を搭載。変換効率がイマイチだが、実質容量でもクラストップで、実売価格も魅力的。
100ボルト出力が最大500ワットと余裕があり、電動工具なども使える。
同社の100ワット級ソーラーパネルによる充電にも対応している。
cheero
Energy Carry
モバイルバッテリーでおなじみのcheeroの製品。
500ワットアワーの電池を搭載し、100ボルト、USB、シガーソケットと出力も充実。
100ボルト出力は定格2.6アンペアで、常時260ワットの電気を取り出せる。本体側面にはLEDライトが装備されている。
ANKER
PowerHouse
こちらもモバイルバッテリーで有名なANKERの製品。
発売時期が早いためか容量と最大出力が控えめだが、2.4アンペアのUSBを4口装備しているので、ノートパソコンやスマホ、タブレットなどの情報機器の充電専用と割り切れば、価格的にも魅力がある。
ポータブル電源選びで、まず、見るべきは、その肝となる「電池の容量」である(スペックは下の表を参照)。
「○ワットアワー」というのは「○ワットの電気を1時間ぶんためておける」という意味で、搭載しているリチウムイオン電池のカタログ値がそのまま記載されていると考えればいいだろう。
ちなみに、スマホを充電するモバイルバッテリーの容量を表示する「ミリアンペアアワー」に換算したのが、表にある「3.6ボルト容量」である。
「LIB-AID」が377ワットアワーで最小、「PowerArQ」が619ワットアワーで最大となっていて、こう見ると、「PowerArQ」が圧勝かと思うが、実はそう単純ではない。
ポータブル電源では、ためている電気がそのまますべて取り出せるとは限らないのだ。
というのも、ポータブル電源の出力は、内蔵リチウムイオン電池からAC100ボルトやUSB(DC5ボルト)、DC12ボルトなどに変換される際に、必ずロスが発生する。
どの程度変換できるのかは「変換効率」として「%」で表され、「LIB-AID」の場合、変換効率は約79%。これは、「Energy Carry」も「PowerHouse」も、ほぼ同程度の性能だ。
これらに対し、「PowerArQ」はAC100ボルトの変換効率が68%とパッケージに記載されており、619ワットアワーの電池から取り出せる電気は、約420ワットアワーしかない。
それでも実質容量は1位なのだが、「Energy Carry」の実質容量400ワットアワーと大差なくなってしまう。ちなみに、100ワットアワーは50ワットの電気毛布を2時間使用できる程度の容量と考えておくといいだろう。
次に見るべきは、AC100ボルトの出力ワット数で、もちろん大きいほうがいろいろな電気製品を使え、これも「PowerArQ」が強い。
「最大」とあるのは、電動工具などで負荷がかかったとき瞬間的に発生する電力に何ワットまで耐えられるかという意味。これを超えると安全装置が作動し、電力供給が止まるようになっている。
なお、100ワットの出力があれば、液晶テレビや電気毛布、扇風機、ノートパソコンなどは問題なく利用できる。
そして、特に、気にしておきたいのはUSBの出力アンペア数である。
1アンペアはスマホ専用で、10型クラスのタブレットは2.1アンペア以上ないと充電できない。スマホを充電する場合も、2.1Aクラスのほうが早くフル充電できるので、2.4Aを4口持っている「PowerHouse」が有利だろう。
このように、防災やふだん使いなどといろいろ考慮していくと、価格と実質容量で「PowerArQ」がおすすめ。実売価格が下がれば、「Energy Carry」も魅力的だ。
解説/福多利夫 (フリーライター)
※価格は、記事制作時のものです。