成長分野である冷凍食品。中でもここ15年で売り上げを約3倍に伸ばす人気商品が、味の素冷凍食品の「ギョーザ」。ところで、2018年にリニューアルがあったのをご存じだろうか。羽・具・皮の改良点、そして今や女性に大人気の新商品「しょうがギョーザ」開発秘話まで、同社担当者のアツい「ギョーザ」へのこだわりを訊いてきた!
キーパーソンに訊け!味の素冷凍食品「ギョーザ」
1972年の発売以来いまだに右肩上がりの成長を続ける冷凍食品界のナンバーワン商品
味の素冷凍食品の「ギョーザ」は、1972年の発売以来、“毎日でも食べたい王道の味”を追求し、不動の人気を誇るロングセラー商品。ここ15年では売上規模を約3倍に伸ばしており、2003年度以降は15年連続で冷凍食品単品売り上げナンバーワンの座を保持している。2018年8月の商品リニューアルの意図と新定番商品「しょうがギョーザ」発売の背景などを、担当者に訊いた。
味の素冷凍食品 ギョーザ
ギョーザ(12個入)
味の素 しょうがギョーザ(12個入)
購入経験がない人がまだ7割も存在する
夕飯のおかずにもう一品が必要とか、晩酌のお供に何かが欲しいといったときに便利なのが、冷凍食品だ。長期保存が可能で、下ごしらえもいらず、調理の手間は最小限。日本冷凍食品協会の調査によると、日本人一人当たりの消費量は、この半世紀の間、右肩上がりの状態がずっと続いているという。
成長分野である冷凍食品の中でも、ここ15年で売り上げ規模を約3倍に伸ばすなど、不動の人気を誇る商品がある。それが、味の素冷凍食品の「ギョーザ」。スーパーの冷凍食品売り場には必ず置かれているというほどの定番商品で、2018年8月にリニューアルが行われた。
「『ギョーザ』は、1972年の発売以来、技術開発と品質改良によって進化を続けてきた、味の素冷凍食品の看板商品です。今回のリニューアルに当たっては、毎日でも食べたい餃子にするにはどうしたらいいかという視点から商品を見つめ直し、さまざまな改良を加えました」
こう話すのは、同社開発マーケティング部の鈴木誠志さん。同社が行った調査では、過去3年間で「ギョーザ」の購入経験なし、という人が約7割もいることが判明。まだまだ市場成長の可能性が残されていると感じたことも、リニューアルのきっかけだったという。
リニューアルの過程では、料理研究家などの知見も取り入れながら、改良ポイントを探っていった。その結果、まず浮かび上がったのは、よりパリッとした羽根を実現するための「羽根の素」のレシピ改良だ。
「餃子はとてもシンプルな食べ物。中身がジューシーで、羽根や皮がパリッとしていればおいしいものです。でも、シンプルだからこそ、羽根を本当にパリッとさせるのは難しい。詳細は企業秘密なのですが、羽根の素の成分バランスを調整することで、これを実現しました」
羽根の素は、冷凍状態では、餃子本体の底面や側面の一部に付着している。これがフライパンの上で加熱されると、溶け出して羽根になる仕組みだが、単に餃子のおいしさをアップさせるだけでなく、調理の手間を減らすことにも役立っている。
「ギョーザ」の調理はとても簡単だ。フライパンに凍ったままの餃子を並べ、フタをして蒸し焼きにしたあと、フタなしでパリッと焼き上げれば完成。油も水も必要ない。これを可能にしているのが、油分と水分をベースにした羽根の素というわけだ。
具と皮のバランス上、皮は薄いほうがいい
今回のリニューアルのポイントとしては、具と皮のバランスを見直したことも挙げられる。具体的には、皮をこれまでよりも薄くした。
「以前の『ギョーザ』は、皮はややモチッとしていたのですが、リニューアルに向けて評価し直した結果、現行の具の量だと、皮はもっと薄いほうが理想の状態に近づくという結論になりました。これらの点を改訂することによって、より“毎日でも食べたい味”に近づけられたと自負しています」
リニューアルのもう一つのポイントは、具に使用する素材をすべて国産にしたこと。野菜については2014年に国産へと切り替えていたが、肉も国産に変更したのだ。
「これまで使用していた海外産の素材が安全ではないというわけでは、決してありません。ですが、社会全体として『国産のほうが安心』という意識が高まっているのは我々も感じていましたので、それに対応するかたちで変更に踏み切りました」
これに加えて、今回のリニューアルでは、「ギョーザ」の改良と並ぶ、大きな変化があった。新たな定番商品として「しょうがギョーザ」が加わったのだ。
「『しょうがギョーザ』は、にんにくを使用せず、その名のとおり、しょうがの風味を味のベースにした商品です。開発チームが真剣に議論を重ねて“食べ飽きない餃子”を追求した結果、この味にたどり着きました。もちろん、パリッとした羽根や油・水なし調理などの特徴は『ギョーザ』と同じ。発売以降、女性を中心に好評の声を多数いただいています」
実は筆者宅では、「ギョーザ」も「しょうがギョーザ」も、冷凍庫に常備されている。共働きの家庭では、平日の夕飯に手の込んだ料理を作るのはなかなか大変で、毎日は不可能に近い。「あと一品、何か!」というときに、手間なくおいしく仕上がるこの商品は、とても重宝するのだ。
味のほうは、にんにく入りの「ギョーザ」がパンチの効いた濃い味という印象であるのに対し、「しょうがギョーザ」はあっさりした爽やかな味わいが特徴。両者とも箸が進む味で、優劣はつけがたいが、「しょうがギョーザ」は食後のニオイを気にしなくていいのがうれしいところだ。
王道の味を今後も追い求めていきたい
鈴木さんのいうように餃子はシンプルな食べ物だが、同時に、自由度が高い食べ物でもある。今後、変わり種の具を入れた餃子を商品化することはあるのだろうか。
「それは今は考えていません。『ギョーザ』シリーズは食べ飽きない、王道の味を今後も追い求めていくと思います。ただ、36個入りの『みんなわいわいギョーザ』も発売しており、これは家族みんなで食べるシーンを想定した商品。お酒のおつまみに特化した『チャーシュー餃子』という商品もありますし、さまざまなシーンにマッチする商品展開はありうると思います」
みんなわいわいギョーザ(36個入り)
味のアレンジについては、同社では公式サイト上でレシピを提案している。工夫を凝らしたタレのほか、“ギョーザのブルスケッタ”などの斬新な料理も並ぶ。鈴木さんにおすすめを訊くと「焼き上がった『ギョーザ』をサンチュに包んで食べるとおいしいですよ」との答えだった。
冷凍食品は、共働き世帯や単身世帯の増加といった社会の変化を受け、成長を続けてきた。「ギョーザ」が売り上げを伸ばし続けているのは、社会の変化を常に見逃さずにキャッチアップし、技術開発と品質改良の地道な努力を続けているからなのだろう。
「永久改良宣言」をうたう味の素の「ギョーザ」
Memo
鈴木さんによると、「ギョーザ」が焼き上がったら、濡れタオルなどに載せてフライパンを冷やすのがいいという。餃子をフライパンから剥がしやすくなり、羽根を壊してしまう危険性も減るそうだ。
インタビュー、執筆/加藤肇(フリーライター)