日本電線工業会の資料では、『一般の電線・ケーブルの設計上の耐用年数は、その絶縁体に対する熱的、電気的ストレスの面から20~30年が基準』とされています。接点の掃除などメンテナンスを心がけ、音質が気になったら、オーディオケーブルは日々進化していますし思い切って新調しましょう。
オーディオ用ケーブルに使用期限はある?
読者からの質問
以前、雑誌『特選街』の誌面で「家庭用の電源タップの使用期限は5年」といった内容の記事を読んだ記憶があります。そうすると、オーディオ用に使うさまざまなケーブル(電源ケーブル、スピーカーケーブル、白と赤の同軸ケーブル)にも使用期限があるのでしょうか?(K.Eさん 山口県 63歳)
編集部:
この質問は、AV評論家の林正儀さんに聞きましょう。
専門家の回答
専門家:
「日本電線工業会の資料では、『一般の電線・ケーブルの設計上の耐用年数は、その絶縁体に対する熱的、電気的ストレスの面から20~30年が基準』とされていますが、もちろん使用する環境や状況によって大きく変化します。
電源タップは屋内配線と違い、露出しているため、劣化が早く進行します。経年変化に加え、抜き差しによる物理的接触の負担などを考えると、5年以上使っている電源タップは、新しいものと替えるのがいいといえます。漏電の危険性もあるし、最悪、火災を引き起こすこともあります。
では、オーディオケーブルの寿命はどうでしょう。断線でもしない限り、まず使用不能になることはなさそうですが……。電源ケーブル以外のケーブルは、火災とまではいわなくても、ヘタってきて、音が悪くなることが懸念されますね。
音質については、新品時からしだいに音がなじんできてピークになり、そこからまた下がるというのがオーディオの定説です。一概に何年で交換とはいえないのですが、筆者の経験からいうと、オーディオケーブルの使用期限は、温度や湿度、ケーブルの作りにより違いがあるものの、だいたい5~10年くらいのものが多いようです。
見た目にも劣化がわかりやすいのが、端末処理のされていないスピーカーケーブルです。裸の銅線が変色(酸化で黒ずむ)していれば、信号の通りが悪くなり、音も悪くなりますね。先を切り落としたり、むき直したりして一時的に音が新鮮になることもありますが、長くはもちません。端子付きであっても、メーカーで被覆をはいで付けるため、ここから少しずつ湿気を吸ってケーブルは傷んでいくのです」
編集部:
確かに、スピーカーケーブルは、末端が黒ずんでいることがよくありますね。
専門家:
「電源ケーブルやRCAピンケーブルの場合も基本的に同じです。いいパーツを使った高級製品ほどダメージは少ないのですが、プラグの抜き差しで細かな傷が付いたりして接点に酸化被膜ができ、音質劣化の要因となります。長い間には湿気が入り込み、ケーブル内部のシールドがベタベタになったり、銅線そのものの酸化や経年劣化が生じたりするのです。
オーディオケーブルは日々進化しています。接点の掃除など、メンテナンスを心がけながら、音質が気になったら、思い切って新調しましょう。マキノムックの『大人のオーディオ大百科』の記事などを参考に、時には2~3年で新製品に買い替えることをおすすめします」
編集部:
音が劣化したと感じたら、新品に取り替えるということですね。ありがとうございました!
イラスト/はやし・ひろ