花粉症対策として注目が集まる「空気清浄機」。今季はコロナの影響で、例年以上にニーズが伸びている。とはいえ、空気清浄機は選ぶのが難しい製品。機能やこだわりについても、メーカーによって取り組みがさまざまだ。今回は、注目の6モデルを取り上げ、それぞれの特徴を見ていこう。
監修◆中村剛
「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権で優勝の実績を持つ家電の達人。家電製品総合アドバイザー。東京電力「くらしのラボ」所長。
目指せ!家電選びの達人今回の家電は「空気清浄機」
コロナ禍で需要が急上昇! 部屋に適したサイズと必要な機能を選ぶことが大切!
この時期、花粉症対策として注目が集まる空気清浄機だが、今季はコロナの影響で、例年以上にニーズが伸びている。とはいえ、空気清浄機は価格も機能もさまざまで、選ぶのが難しい製品。今回は改めて、基本的な選び方と、各メーカーの注目機種を見ていこう。
タイプ選びとメンテナンス
多彩な機種があるので、事前に細部をチェック
家庭用空気清浄機は、直径0.1マイクロメートル以上の粒子を99.9%以上除去できるものが一般的だ。電源を入れれば、花粉やPM2.5、ウイルスなどが集じんでき、室内環境をクリーンに整えてくれる。
製品には、空気清浄機能のみに特化した単機能タイプと、加湿などの付加機能をプラスしたハイブリッド型があり、現在販売されている製品の多くは、加湿機能が付いた加湿空気清浄機だ。一台2役で使えるほか、トレンド機能を搭載した人気製品が多いといったメリットがある。ただし、加湿トレーやフィルターなどを放置するとカビなどが発生するため、こまめなメンテナンスが必要になる。
一方、単機能モデルは、ケアをする箇所が少なく、お手入れも簡単。作りがシンプルなので、長く確実に使いたいという人に人気がある。ただし、現状では加湿空気清浄機に比べて商品ラインアップが少なめだ。
また、搭載している集じんフィルターも、製品によって違いがある。10年交換不要をうたうタイプは、月1回程度の掃除が必要だが、交換の手間はかからない(シャープ、ダイキン、パナソニック)。半年〜1年ごとに交換するタイプは、コストはかかるものの、常に新品同様の性能を維持することが可能だ(アイリスオーヤマ、ダイソン、ブルーエア)。
これらの違いは、一見するだけではわかりづらいが、長く使うためには大切な要素なので、しっかりと把握しておきたい。
空気清浄機選びの基礎知識
●単機能か、加湿機能付きか
単機能の機種は、加湿部分がないぶん比較的コンパクトで、メンテナンスの手間が少ない。加湿機能付きはやや大ぶりなモデルが多く、加湿部分のお手入れも必要だが、製品が多彩で、価格やサイズ、機能など、選択肢は豊富だ。
●適用床面積
日本電機工業会が定めた基準で、「たばこ5本分の煙を30分かけてきれいにできる広さの目安」のこと。対応畳数が小さい機種だと部屋の浄化に時間がかかるため、大きめの機種を選ぶのが一般的。
●HEPA(へパ)フィルター
多くの空気清浄機が採用する集じんフィルターで、粒径が0.3マイクロメートルの粒子に対して、99.97%以上の捕集効率を持つ。ダイキンのTAFUフィルターもHEPAフィルターの一種で、10年交換不要をうたう。
●イオン機能(プラズマクラスター、ナノイー)
カビ菌の除去やウイルスの抑制のほか、消臭や静電気の除電、保湿などに効果が見られる人気機能。空気の循環がしにくいソファーの下やカーテン裏に入り込み、浄化をサポートする役割もある。
●Wi-Fi対応
Wi-Fi機能を内蔵し、専用アプリを使って部屋の空気の状態を数値やグラフで確認できたり、外出先から電源をオン・オフしたり、運転モードを切り替えたりなどが可能。シャープ、ダイキン、パナソニックでは、自社のエアコンとの連係運転もできる。
このほか、機能やこだわりについても、メーカーによって取り組みがさまざまだ。今回は、注目の6モデルを取り上げ、それぞれの特徴を見ていこう。
単機能タイプ
さらに性能アップされたブルーエアに注目
●ブルーエア
ブランド史上初めて、フラッグシップモデルを一新。その最上位モデルが、Protect 7770iだ。デザインの変更で、設置性を高めつつ圧迫感を解消したほか、空気の循環スピードもアップさせた。
フィルターの性能も強化され、粒子イオン化技術により、0.03マイクロメートルの超微粒子まで99%以上除去が可能。また、状況に応じてフィルターを乾燥させ、ウイルスを不活化する新機能も搭載した。さらに、RFIDチップを用いてフィルターの使用状況を分析。ユーザーに合わせた交換のタイミングを計算することで、寿命が延ばせるようになった。
空気清浄機
ブルーエア
Blueair Protect 7770i
実売価格例:15万7080円
フラッグシップを一新し、性能が進化
スウェーデン生まれの高性能モデル。独自のフィルターとテクノロジーで、高い除去率とハイスピード清浄を実現。25年のブランド史上、初めてフラッグシップモデルを一新し、性能をより進化させた
●インタラクティブタッチスクリーン
温度や湿度、フィルターの使用率をお知らせする。空気の汚れやニオイの度合いは、5色のLEDライトで表示。
●スマートフィルター
RFIDチップを内蔵し、さまざまな計測データで使用状況を分析。最適なフィルター交換のタイミングを導き出す。フィルターの寿命は、最大1年。
●HEPASilent Ultra/GermShield
イオンバリアによる静電効果で0.03マイクロメートルの超微粒子まで除去。フィルター内を見張ってウイルスや菌を不活化させる機能も新搭載。
●アイリスオーヤマ
IAP-A25は、10畳用のコンパクトな単機能モデル。スペースが限られている個室にも置きやすく、軽いので移動も楽だ。運転モードは、弱・中・強の3段階+おやすみモードのシンプル設計。円形状のフィルターは、花粉やPM2.5のほか、微細な粒子を99.7%以上除去する。
同社では、10畳用から45畳まで、5機種が用意されているのも特徴的。子供部屋から会社の会議室まで、幅広いニーズに対応する。
空気清浄機
アイリスオーヤマ
IAP-A25
実売価格例:9878円
静音モードも備えるコンパクトモデル
21センチ×21センチのコンパクトボディを実現した10畳用モデル。運転は3段階+おやすみモードの四つ。おやすみモード時は、31デシベルの静音で快眠をサポートする。ブルーのインテリアライト付き。
●集じん脱臭フィルター
網状のプレフィルターを装着した集じん脱臭フィルター。汚れたら、掃除機などできれいにする必要がある。交換は、年1回。
●光で癒しを演出
電源を入れると、ブルーのLEDライトが点灯。下部が光るので、インテリアとしてもいい。おやすみモード時は消灯。
●10畳用から45畳用までラインアップ
10畳用のほか、16/28/36/45畳と計5機種のラインアップを用意。28畳用からは、自動運転モードや空気の汚れを色で知らせるモニター表示などの機能も搭載する。
加湿・除湿・ヒーター付き
機種数も多く、各社が独自機能でアピール
●シャープ
人気機能が詰まった欲張りモデルといえるのが、KI-NP100。従来の2倍となった高濃度プラズマクラスターNEXTを搭載し、ウイルス抑制や消臭スピードが向上。ニオイの原因菌も抑えられるようになり、ペットのいる家庭に注目されている。
人感センサーで人の不在を検知するとパワフル運転を行い、帰宅時にクリーンな空気で迎えるハイテク機能も装備。クラウドとAIの連係で、ユーザーの使い方を学習して、最適な運転をしてくれる点も好評だ。
加湿空気清浄機
シャープ
KI-NP100
実売価格例:13万8900円
イオン濃度アップで空清効果が向上
イオン濃度の高いプラズマクラスターNEXTを搭載し、空清効果が格段に向上。ユーザーの使い方を学習するAIoTサービス「COCORO AIR」にも対応し、快適な空間作りを行う。
●三つのフィルターで脱臭・集じん
プレ+脱臭+HEPAの3段構造。静電気を帯びたHEPAフィルターは汚れを吸着して目詰まりしにくい。脱臭、HEPAフィルターは10年交換不要。
●3方向気流制御ルーバー
前方、斜め上方、斜め後方の3方向の気流制御ルーバーにより、広い部屋でもイオンが効率よく行き届く。
●自動掃除パワーユニット
プレフィルターは、巻き取りながらホコリを除去する自掃型。48時間運転ごとに行われ、掃除の手間を削減。
●パナソニック
F-VXT90は、高濃度ナノイーXがニオイやウイルスを抑えるほか、花粉の除去にも効果を発揮。新搭載の「3Dフロー花粉撃退気流」との組み合わせで、花粉の集じん量が従来の約1.5倍に増えたほか、花粉を99%以上抑制するまでの時間が、約半分まで短縮された。
専用アプリにも進化が見られ、ユーザーが気になる空気の汚れの種類に合わせて運転モードが設定できる新機能を開発。個々のユーザーが抱える空気の悩みに、より細かくこたえてくれる。
加湿空気清浄機
パナソニック
F-VXT90
実売価格例:9万9790円
高精度センサーにより効果的に集じん
五つの高精度センサーで、汚れや人の動きを検知して効果的に集じん。花粉などの重い物質も、下部の吸引口からしっかり吸引する。新搭載の高濃度ナノイーXで、有害物質も抑制。
●三つのフィルターがキャッチ
プレ+HEPA+脱臭の3段構造で10年交換不要。脱臭フィルターは、活性炭を粒状にした独自仕様で、ニオイを強力に吸収する。
●3Dフロー花粉撃退気流
開口部と2枚のルーバー形状をリニューアル。3方向への立体的な気流で、部屋全体を効率よく循環させる。
●わたし流運転
アプリの新機能で、花粉やハウスダストなど、気になる汚れの種類を設定。それに合わせて、最適な空気の環境作りを行う。
●ダイキン
家の空気をトータルできれいにするため、除湿も加湿も搭載したオールインワンタイプのMCZ70X。ボディは大きいが、部屋の快適性に重要な水分量のコントロールが、これ一台に任せられる。
除湿はヒートポンプ式を使っており、省エネかつ快適に使用可能。加湿と除湿で行う独自の消臭機能も搭載する。
除加湿空気清浄機
ダイキン
MCZ70X
実売価格例:13万2000円
加湿+除湿を備え、多彩に使える一台
加湿機能に加えて、除湿機能も備え、部屋の脱臭や衣類乾燥など、多彩に使える一台。独自のテクノロジー「ストリーマ」が、有害物質を分解。加湿フィルターの除菌も行う。
●ツインストリーマ&TAFUフィルター
持続力が高いTAFUフィルター(10年交換不要)と、強い酸化分解力を持つストリーマを2倍にしたツインストリーマが、フィルターの汚れを素早く分解。
●除湿、加湿、脱臭に対応
除湿&加湿で快適性アップ。加湿で浮き立たせたニオイを除湿で回収する独自機能も搭載。
●抗菌加湿フィルター
加湿フィルターには、潜水艦用に開発された持続性抗菌剤、KOBA-GUARDを採用。菌の増殖を効果的に抑制。
●ダイソン
空気清浄機でありながら、ヒーターや扇風機としても使える、Dyson Pure Hot+Cool。
A4サイズで置けるコンパクト設計だが、パワフルな風が遠くまで届くため、広い部屋でもしっかり空気を循環。空気の状態は本体のディスプレイに表示され、リアルタイムで確認することができる。軽量なので、簡単に移動させて使えるのも特徴だ。
空気清浄ファンヒーター
ダイソン
Dyson Pure Hot + Cool
実売価格例:7万7000円
空気清浄、扇風機、ヒーターの一台3役
設置面積A4サイズのコンパクトボディに、空気清浄機、扇風機、ヒーターの3役が詰まった一台。毎秒320リットルの空気を送り出す「Air Multiplierテクノロジー」で、きれいな空気を遠くまで届ける。
●360°グラスHEPAフィルター
密閉度の高い360度グラスHEPAフィルターでPM0.1レベルの微粒子を捕獲。活性炭フィルターが有害ガスやニオイを除去する。交換は、年1回。
●LCDディスプレイでお知らせ
VOCやPM2.5など、空気中に浮遊する粒子やガスをセンサーで検知。本体に、空気の状態を表示する。
●夏は扇風機、冬はファンヒーター
毎秒320リットルの風を送り出す独自機構で、きれいな空気を遠くまで放出し、空気を循環。ヒーターを搭載し、冬はファンヒーターとして活用できる。
まとめ
空気清浄機は、適用床面積が大きいものほど高い効果が望める(清浄時間が短い)ため、実際に使う部屋より広めのものを選ぶといい。また、加湿やイオンなどの付加機能は、自身の使い方を踏まえて要否を検討しよう。気になる電気代は、標準モードで24時間稼働しても月に100〜200円程度。低コストなので、電源は常時オンにしておき、いつでも部屋の空気をきれいに保っておきたい。
※価格は記事作成時のものです。
取材・執筆/諏訪圭伊子(フリーライター)