欧米ではアナログレコード盤の売り上げがCDを超え、この10年で10倍以上だという。サブスクなどのネット配信に押されCDが低迷する一方で、デジタルとは違う暖かな音質と、ジャケットのインテリア性も喜ばれているようだ。今や静かなブームどころか、本格的な復活といえるような状況だ。
アーティストもメーカーも動きがとても活発
サブスクなどのネット配信に押され、CDが低迷している。
その一方で、右肩上がりで人気が高まっているのがアナログレコードだ。欧米ではレコード盤の売り上げがCDを超え、この10年で10倍以上だという。
静かなブームどころか、本格的な復活といえるような状況だ。
そのきっかけは、ビートルズのLPボックスだといわれ、著名アーティストが次々とアナログ盤をリリースした。国内では、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅなどの若手ミュージシャンが起爆剤となり、ベテラン歌手も加わって売り上げアップの流れを加速している。
また、このところ伸長著しいのが、シティ・ポップ。さらに、王道のジャズやクラシックなど、音質重視派に向けては、往年の名盤のリマスター版なども熱い高まりを見せる。
それを裏づけるようにレコードメーカーの動きも活発になった。
ソニーミュージックが約30年ぶりにレコード生産工場を再開。ご存じのように、その第1弾がビリー・ジョエルの「ニューヨーク52番街」だ。もちろん、老舗の東洋化成はプレス機をフル稼働で増産中である。
そして、ソフトとハードは車の両輪。こうしたレコードの復活を大きく後押ししたのが、低価格で買えるプレーヤーだ。加えて、10万円前後のミドル機の健闘も頼もしい。
筆者なりに分析してみると、スマホなどで音楽を聴くのでは物足りなくなり、巣ごもり需要も相まってアナログの音を楽しみたい人が増えているのではないか。デジタルのCDとは違う暖かな音質と、ジャケットのインテリア性も喜ばれている。
ネットでも聴けるが、ぜひレコードで聴きたい
老若男女を問わず、レコード復活はうれしい。アナログ歴の長い筆者にとっても続々と登場する新譜は魅力だし、愛聴盤には想い出がいっぱいだ。
●絶対に手放せない、筆者の愛聴盤
ジャズではビル・エヴァンスの豪華3枚組「ビハインド・ザ・ダイクス」が大本命で、1969年オランダでの貴重な音源が公式作品として初登場したもの。完全限定プレスで、マーティ・モレルが参加した初期のトリオによる圧倒的な熱量とリアルさに包まれる。
クラシックは、管弦楽やピアノ、室内楽など数知れず。ここではオーディオマニア御用達の「カンターテ・ドミノ」が必聴だ。教会に響きわたる合唱とオルガンの深々とした低音域に感動する。
シティ・ポップでは竹内まりやが外せない。歌詞が想い出深く、息の流れが自然でビブラートがきれい。ネットでも聴ける曲だが、ぜひレコードで聴いてほしい。
■解説/林正儀 (AV評論家)