自分好みの機能をカスタマイズできるパナソニックの「マイスペック」。今回は炊飯器とオーブンレンジを使ってみて、筆者自身のスタイル=マイスタイルに合うかどうか検証しました。
マイスペックの炊飯器&オーブンレンジをレビュー
企画できる人で、モノが好きな人は、自分だけの「オリジナル」で周りを埋められたらなぁと言う夢に浸る時があります。
バルミューダの寺尾氏は、その一人でしょう。なんたってスマートフォンをプロデュースしてしまったわけですから。BALMUDA Phoneはスペックの割に高額では…と、ずっこけた人もいますが、逆に考えてみると、寺尾氏はそのスペックが実現するレベルのスマホで十分だったと言うだけの話です。
その話は置いておくとしても、自分好みの家電が欲しいと言うのは突拍子もない考えではありません。そんなコンセプトで立ち上げられたのが、パナソニックの「マイスペック」。炊飯器とオーブンレンジを使ってみました。
IHジャー炊飯器 「ライス&クッカー」SR-UNX1
炊飯機能の使い勝手
基本は、IH炊飯器です。圧力システムは付いていません。
「マイスペック」は白ベース。最近、黒の炊飯器が多く、ちょっと新鮮に感じられます。それとも、あなた色に染めてくださいと言うことでしょうか。SR-UNX1のデザインは悪くないのですが、形にメリハリが感じられない上に、白オンリーなので、ちょっとぼんやりしている様に感じられます。
まず、ネット接続せずに使ってみました。
この時のSR-UNX1は、単なる炊飯器です。プラスに感じられたのは、ややメニューが少ないのでセレクトしやすかったこと。逆もまた真なりで、メニューはこれだけ?と思ったのも事実です。
今回は千葉県のコシヒカリ(無洗米)を使いテストしました。お米の炊き上がりはOK。美味しい。ただし圧力をかけるシステムはないので、最上位クラス(IH+圧力)の様に、芯まで水分が感じるほどではありません。しかしIHクラスの炊飯器としては、十分美味しい。ここは辺は、さすがパナソニックと言えます。
さて、次は、スマートフォンのアプリをセットします。アプリ名は 「Kitchen Pocket(キッチン ポケット)」。接続難易度は普通です。問題になるところはありません。
アプリに接続すると、他の炊飯メニューがありました。この「炊飯メニュー」でできることは大きく言うと、自分が好きな条件を組み合わせたコース設定です。こう言うのは、スマホはとても便利です。コースは4つセットできます。十分です。また銘柄米のその年の出来により、炊き方を微妙に調整した方がベターなのですが、それもこのアプリで対応可能です。
一方、今の炊飯器は、前回の炊飯条件を覚えられるものが多いです。つまり、余り変わらない手間で、今回の「コース」と同じことができると言うわけです。確かに3つ設定できる、銘柄米のデータを入れ替えられると言うメリットはありますが、決定的に他の炊飯器に比べて操作が簡便になったとは言えないかも知れません。
調理機能の使い勝手
さて次は調理機能を見ていきましょう。本機を炊飯器ではなく、調理鍋として扱います。自分で加熱時間などの条件を指定できる手動調理と、レシピをアプリから送信する自動調理、この2つの機能があります。
当たり障りのないメニューとして「カレー」を作ってみました。ちなみに今できる自動メニューは、主食2メニュー(1つはカレーです)、主菜・副菜が7メニュー。ちょっと少ないですね。
カレーは、上手く、美味しくできました。炊飯器=優れた調理家電でした。パチパチパチパチ(拍手)でなく、作った後に気づきました。あ、ご飯を炊いてなかった・・・(汗)
その時は、スパゲティーに絡めて食べました。
しかし、一番思ったのは、流石にコンセプト的に無理は無いか?と言うことです。
メーカーホームページなどで提案されているのは、土日にしっかり炊飯。冷凍。ご飯は基本チン。他の曜日は調理に回すというやり方でした。一台で済ませたい理由にシンプルだから、台所が狭いからとありました。シンプルだからと言うのはわかります。しかし、台所が狭いと電子レンジは置けないのではないでしょうか? それとも中食が多くなった今、炊飯器を持たない人が増えたのでしょうか?
私も、炊飯器でホットケーキを焼きます。一番の簡単にほっくり焼けるからですが、もう一つの理由は、ホットケーキとお米を同時に食べることはないからです。つまり、空いているタイミングで炊飯器でホットケーキを焼くわけです。こんな私ですから、「必ず」ご飯を冷凍してと言うのに引っかかってしまいました。
ちなみに、2021年11月27日時点の価格.comでの平均価格は、4万6千円(税込)。これは、IH炊飯器とちょっと安めの電気鍋を合わせた位の価格です。ちなみに逆もまた真なりで、電気鍋には炊飯機能をが付いています。正直、何を基準の二刀流かちょっと悩みます。
実際に使用してみてわかったのは、機能はとてもいいのですが、私自身のスタイル「マイ・スタイル」には合い難いと言うことでした。
オーブンレンジ ビストロ NE-UBS5A
グリル皿のこと
こちらはオーブンレンジのメニューアップさせるもので、SR-UNX1の様に炊飯、調理のダブル機能で困ることはなさそうです。
まず、先に言っておきますが、現時点で、パナソニックのオーブンレンジの性能はトップ3に入ります。で、それを支える重要なパーツが「グリル皿」。なんたって、ひっくり返さすに両面焼くことができる優れもの。これを使うと、5分でトーストが焼けます。味も上の中〜下。高級オーブントースターの様に上の上とは行きませんが、なかなかのものです。焼き時間の5分は、忙しい朝ですがギリギリ許容範囲。
色々なメーカーのオーブンレンジをテストしましたが、ほとんどのメーカーがトーストは諦めていますね。7分、遅いものだと10分近い。しかも途中でひっくり返すことが必要です。この理由の一つは角皿。単なる鉄の皿です。軽くて扱いやすいのですが、蓄熱性もなく焼きにはプラスに働きません。
グリル皿は、上はヒーター加熱、下はレンジ加熱をを前提に開発された皿です。普通なら不可能なことをなんとかしてやろうと技術屋の想いが感じられ、「グリル皿のないビストロなんて」と言う感じさえしてきます。ちなみに、このグリル皿(メーカー希望小売価格:5,500円・税込)以外に、スチームポッド(メーカー希望小売価格:6,600円・税込)もあります。
接続前
すっきりとした直方体の白色ボディ。実にきれいです。しかし、気になることも。
まずは液晶画面の大きさです。しかもカラー、タッチパネルではありません。単色です。ビストロのトップモデルの液晶画面は縦長で、スマートフォンと同じような感覚で扱えます。見慣れていて見易い感じがする上に、タッチパネル。それに比較すると、新コンセプト、最新式を謳いながら、これはちょっとと言う感じです。
次は、パナソニックの考える、最低限必要とするメニュー(予め機器に搭載されているメニュー)を見て見ましょう。
大きくは、「ごはん・おかず あたため」「飲み物 あたため」「よく使う自動メニュー」「レンジ」「オーブン・発酵」「お手入れ・設定」「お気に入り」の7種。
オイオイと思いましたね。前述の通り、グリル皿は素晴らしいものですが、それを使わないと「グリル」ができないと言わんばかりに、メニューに入れていないのです。ご存知の通り、オーブンレンジは「オーブン」と「レンジ」だけでなく、料理で最もよく使う「グリル」を入れてきます。確かに「角皿」での「グリル」料理は、途中ひっくり返したりしなければならないので、「ほったらかし」と言うわけには行きませんが、できないわけではないのです。しかしパナソニックは、キッパリ割り切ってきました。これはこれで大きな考え方です。
このため初期メニューは、次のようになります。
「ごはん・おかずあたため」は、温度をセットし対応。「飲み物」は「牛乳・コーヒー」と「酒かん」に対応。
「よく使う自動メニュー」は、「お好みの温度あたため」「全解凍」「半解凍」「ゆで葉野菜」「ゆで根菜」「乾物を戻す」が入っています。全部「レンジ」メニューです。そして「レンジ」「オーブン・発酵」は、全部マニュアル。温度と時間を設定します。
「お手入れ・設定」のお手入れは、ちょっと凄まじい。中でちょっとしたスペクタルになっている感じが伝わってきます。終わって、乾拭きすると実にキレイです。また、無線LAN(WiFi)などとの接続も、ここでします。
最後の「お気に入りメニュー」。ここには自分がセレクトしたメニューが入るという仕組みですから、今は空いています。
全機能を試しましたが、どの機能もきちんと動作します。ここら辺はトップメーカーですから当然ですね。しかしメニューとしては、こなれが足らないように感じました。と言うのは、一覧表を見ながら探す、次を見ながら画面移動するなどができないので、少なくとも私はテンポよく選び出すことはできませんでした。加えて単色なので視認性もイマイチです。
もう少し、楽に、素早く操作できるようにして欲しいと思いました。
グリル皿登録で、メニューが変わった
接続後はアプリ「Kichen Pocket」も使います。家電メーカーでも、積極的にスマートフォンアプリを作り込んでいかないとダメということです。
まずは、「グリル皿」を登録しました。
すると、基本メニューに「グリル」が加わりました。そして、「よく使う自動メニュー」に「トースト」「フライをあたためる」が加わりました。なんか、武器が増えるたびに、使える技が増えるロールプレイング・ゲームのようです。
そして、「トースト」をパナソニックは大切にしていると思いましたね。オーブンレンジのトースト機能は、時間が長い、途中でひっくり返さなければならない、など、面倒くさいことが多く、使えない機能とされています。実際、多くのメーカーが余り力を入れていません。しかしパナソニックは違います。私も試しましたが、合格点を出せます。ここはパナソニックの矜持を感じました。
これでようやく、オーブンレンジらしくなりました。
お気に入りにメニューを
「お気に入り」の設定は、以下の通り。
まず、送りたいメニューを幾つかセレクトします。「お気に入りリスト」に入れるのですから、星で示される「マイリストマーク」を押し、セレクトした状態(=星が光った状態)にします。
次に「キッチン家電」の中から、「NE-UBS5A」をセレクトします。すると「機器のお気に入り」と言う項目があります。「追加・編集」を押します。
ここで「お気に入りは、10個しか入れらない」と書かれています。追加ボタンである「+」を押すと、「通信履歴から選ぶ」「マイリストから選ぶ」「手動設定から選ぶ」の3つがあります。
私は、ここでは「マイリスト」をセレクト。すると選んだメニューが並びます。その中から、自分が必要だと思う10個を入れます。当然、メニューの順は後で変えることができます。
そして「送信」。するとオーブンレンジの方に「お気に入り」メニューができます。
私はデジタルジャンキーなところがあり、何となく使ってしまうところもあるのですが、このアプリちょっとわかりにくいです。
ここで面倒なのは、ビストロのメニューの一番最後には「送信ボタン」があり、1つ1つメニューを選択可能なのですが、それはそのまま「スタート」を押さないと、送ったデータは消えてしまうと言うことです。ましてや「お気に入り」の中には残りません。
そのメニューを使うなら「通信履歴から選ぶ」から、セレクトし、「お気に入りメニュー」の中に入れなければなりません。私は「マイリスト」から選んでやって見ましたが、実際にやってみるとかなり大変です。送る前に、自分に合うか、材料、作り方をチェックするわけですが、スマホだとかなりレシピが読みづらい。何度もスクロールする必要があります。まとめてやるなら「タブレット」ですね。
元々、「Kichen Pocket」は、メニュー決定のためのアプリです。アプリが提案するメニューを自分のメニューに変えていく感じですので、メニューは沢山あります。そうして、メニューを決めていくうちに、料理などもより分かってきますし、好きなメニューも決まっていくと言う感じです。しかし、実際はそんな簡単には行きません。スーパーだって、広告に出していない安い食材が、今の時間だけ限定などと置かれている時があります。また保存が効くものなら、なるべく多くなってしまいます。それも含めると、電車の中で事前チェック、駅前で買い物し最終メニューを決定、家でメニュー転送。それ繰り返し、メニューが溜まったらお気に入りを作るのが一番便利そうです。
そして、これ以外に「スチームポット」を登録します。「スチームポット」はベースックなメニューにはほぼ影響がありません。温度設定が変わるくらいです。
しかし、セレクトできるメニューがどんと増えます。あとはメインディッシュ(ラスボス)目掛けて、頑張るだけという感じです。
まとめ
今回の2つのモデル。期待される性能はクリアしていると思います。ただ次のようにも感じました。IHジャー炊飯器 「ライス&クッカー」SR-UNX1は、自分のスタイル、「マイ・スタイル」とは合わないということです。つまり、自分好みに変えられる「マイ・スペック」は、その後に来る問題なのだということです。
そして、オーブンレンジ ビストロ NE-UBS5Aは、を使ってみて問に感じたのは、何故「グリル」機能を切り捨てた状態から始めたのだろうかということ。実は「オーブン」だけだと、日本の家庭料理にはほとんど出番がないのです。要するに単機能レンジを買った時とあまり変わりません。もしそうなら、きっと「オーブン」と「グリル」の機能を持つ「オーブントースター」を買うでしょう。しかし、実際は、オーブンレンジ ビストロ NE-UBS5Aは単機能オーブンレンジよりかなり高いですし、「トースト」機能にこだわると強みを発揮する「オーブントースター」も多くあります。確かに「グリル皿」無しで一週間過ごし、その後、「グリル皿」を手にすると、できることが劇的に違いますので、RPGで勇者の剣を手に入れたような爽快感があります。
私は、爽快感は、初めメニューがいっぱい、それを自分好みに削っていき、トライ&エラーで自分の好みだけ残す方が得られるのではと思っています。そしてその時は、今回、いじることができなかったベースメニューもいじることができるのがベターだと思います。
いろいろと書きましたが、マイ・スペックは、今回がファーストモデル。完璧なわけはありません。しかし手応えはかなりのもの。叩けばモノになると思います。この「マイ・スペック」が、色々な人の「マイ・スタイル」に合う日が来るのが楽しみです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。