現在、白物家電における世界No.1シェアはハイアールです。性能はともかく、コストパフォーマンスまで考慮すると、日本メーカーは及びません。そのハイアールが最新型自動調理器を作りました。名前は「無水かきまぜ自動調理器 HotDeli(ホットデリ)JJT-R10A」。この最新モデルをレポートします。
「HotDeli」という名前にこめられた思い
HotDeli(ホットデリ)という名前を聞いて、まず「よく商標化できたなぁ」と思いましたね。それくらいどこにでもありそうな名前です。この単純な名前には、プロデューサーの思いが詰まっていました。
まず、Hot(ホット)はいいですよね。料理には欠かせない形容詞です。料理は冷めたら美味しくありません。次のDeli(デリ)ですが、こちらには3つの意味が込められています。
一つ目は、デリカテッセンのデリ。デリカテッセンは、サンドイッチや持ち帰り用の西洋風惣菜を売る店。昔の日本でいうと惣菜屋。今だとコンビニがその役目も行います。日本人は色々なモノを、ちょっとつまみ食いするのが大好き。このため幕の内弁当は常にトップの人気を誇ります。ホットデリは多彩なメニューをサポートしているところから付けられました。
二つ目は、デリバリーのデリ。30分もあれば、温かい料理を届けてくれるあのサービスです。こちは、早く美味しいものができるということで取られました。
三つ目はもちろん、デリシャスのデリ。「美味い!」ということです。
だからすごいと言うわけではありませんが、覚えてもらいやすそうな名前は重要です。
電気調理なべは差別化が難しい
私は、発表会の時は、よほどのことが無い限り、事前情報なく行きます。映画とおんなじですね。道の方がより楽しめます。今度は、どんなモノが見られるのだろうとワクワクします。
しかし、出て来たものは「電気鍋」・・・
とはいえ、市場では「ほったらかし料理」の認知が進んでおり、家電に奥手の奥様方にも欲しい家電の一つになっています。
しかし、その割に、どのメーカーも差別化できないというジレンマがあるのです。ホットデリはどうでしょうか?
フタはコンソールパネルを兼ねており、「煮る/煮詰める」「煮込む」「炒める」「ゆでる/蒸す」「あたため直す」「低温/発酵」「パン・パンケーキ」「白米」「炊き込み/玄米」「クリーン」というメニューが並んでいます。ちなみに、人気の無水料理ですが、無水カレーの場合、「煮込む」を使って作ることができます。「クリーン」というのは、洗ってもニオイが取れない時に使います。
このメニューが多いのも、今ドキですね。
メニューで思い出しましたが、自動メニューも90種類と実に多いです。逆にそれだけのメニュー数を入れたためでしょうか、通信によるメニュー追加機能はありません。
また電気鍋らしく、「まぜスティック(かきまぜユニット)」も付いています。
二品同時調理ができる
しかし、チェックしているうちに、見慣れないトレイが付いていることに気付きました。上から見ると円の左右横をまっ直ぐ切り欠いた感じのトレイです。
通常は、こういう商品には蒸し台が付いています。私も、肉まん(豚まん)を温めるために、よく使っています。しかしこんなトレイはいまだかつて見たことがないです。取説で確認すると、「クックトレイ」とあります。要するに、炊飯しながらオカズを作る。もしくは、調理条件があえば、オカズニ品同時に作ることができます。
料理は手順がとても重要で、煮炊きの間に、次の料理を仕込んで行くのですが、家庭ではそうは問屋がおろしません。小さい子が「ママ、おしっこ」と来たり、宅配便が来たりと、何かと埋まってしまいます。こんな時、仕込みにはちょっと時間がかかりますが、二品同時はちょっと魅力的ですよね。
これと同じ考えの炊飯器があります。タイガーのマイコン炊飯ジャー「炊きたて」JAJ-G550。ペットネームは、「tacook(タクック)」(炊く+クッキング)。
後から、大メーカーが出すときはいつもそうですが、いいところの総取りです。
企画はハイアール・ジャパン
この企画、ハイアール本社(中国)が作ったのかと言うとそうではなく、ハイアール・ジャパン。日本に住む日本人が企画したモノです。日本市場は、このような家電がズラリと並んでいますので、どれくらいのレベルにないと成り立たないのがわかりますからね。
日本で成功したら、海外でもと言うのが本社の考えらしいです。もっと有り体にいうと、黒物家電はともかく、白物家電の新しいカテゴリーは、日本で成功したのを中国アレンジして中国で売るのではないでしょうか? そう言った意味では、この日本のユーザーの目の良さはまだ高い位置付けのようです。
価格は、市場導入時の価格は、約28,000円(税込)。発売は、ボーナス時、12月1日。まだ、電気鍋、電気圧力鍋をお持ちでない方には、候補モデルの中に含めてもいいのでは無いでしょうか? 令和より平成よりの、わかりやすい使い勝手のモデルです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。