冬。感染症の季節です。平時ならインフルエンザ。今はコロナ。冬季は寒く、体力に余裕がなる上に、低湿。鼻、口、喉の粘膜への負担も大きいですからね。こんな時に頼りになるのが、空気清浄機。ウイルスは飛沫感染がほとんどです。くしゃみ、咳など直接かけられるものには、対応できませんが、気流に乗ったものは速やかにトラップしてくれます。また、国内メーカーの多くのモデルには加湿器が付いています。今回は、最近発表された、スウェーデンの「ブルーエア」、韓国の「コーウェイ」、そして日本の「シャープ」、3社の今ドキのモデルをレポートします。
ブルーエアDustMagnet(ダストマグネット)
創業25年のブルーエア社は空気清浄機の専業メーカー。空調家電ではなく空気清浄機、空気質センサーだけですからすごいものです。これはかなりの自信がないとできません。
そして、ここ数年でブルーエアはラインナップを一新。AI対応も含め、数段上がった各技術に対応したモデルを発表しています。主力の7000シリーズ(ブルーエア プロテクト)、3000シリーズ(ブルー3000)は市場導入済み。今回は、5000シリーズとなる「ブルーエア ダストマグネット」です。
デザインと性能がすごい
ここ最近ずーっと人気の北欧デザイン。オーソドックスなデザインも多いですが、中には照明のように変わっているものもあります。ただしそれは単に気を衒っているのではなく、機能美として、その形に集約されているので、使いよく飽きないですね。
「ダストマグネット」もその系統のモデル。デザインを見た時は、これが空気清浄機?と思ったほど、家具感覚の強いデザインですが、一目見ると忘れられません。個人的には一目惚れしましたね。テーブルトップ付きなので、ちょっとした小物が載せられることも併せ、側にあるととても便利なモデルです。
5000シリーズは、ラインナップでは真ん中になります。7000シリーズのように、0.03μm、飛まつ感染ウイルスどころか、浮遊ウイルスさえもトラップするほどの性能はありません。その代わり、空気清浄機に求められる「0.1μmまでのハウスダスト」と「VOC(揮発性有機化合物)」を確実に、手早く除去するというコンセプトで組み上げられています。
このコンセプトを具現化したダストマグネットは、ダストマグネットテクノロジーという新技術を搭載しています。どんなものかというと、ます吸引口が上下、2箇所。上の口は床から50cm位の位置にあります。この高さは、通常、ハウスダストが浮遊している高さと言われています。そして、フィルタリングされた空気を、両サイドから渦を巻くように、マイナスイオンと共に放出します。これにより、ハウスダストをマイナス帯電させます。帯電はハウスダストを引き寄せると共に、トラップし易くします。フィルタリングはブルーエアお得意のHEPASilent(ヘパサイレント)テクノロジー。実績のある技術です。
会社もすごい
ブルーエアは世界に浄化された空気を届けるのを使命としています。しかし世界の空気汚染は拡大しつつあり、特に今から経済発展を狙うと必ず空気環境は悪くなります。多くなりすぎた人類にとって大気汚染は重要問題です。
今、ブルーエアは、ユニセフの子どもの権利条約に対し、「きれいな空気を吸える権利」を追加するように運動しています。また同時に、子どもがいる公共施設に空気清浄機を無償提供するなど、少しでも良い空気環境を子どもに届けようとしています。当然、日本でも同様の活動をしています。
ちなみに、ブルーエアは、カビの原因となるのを嫌い、加湿器付きモデルは出さないそうです。この徹底した潔さは一つの魅力です。製品も男前ですが、会社もかなりの男前。伊達な会社です。
◆◆◆
コーウェイAIRMEGA(エアメガ)250H
数年前から日本でも扱われるようになった、韓国COWAY(コーウェイ)社の最新モデル。今年のモデル最大の特徴は、「加湿機能の追加」ですね。
加湿機能を空気清浄機に加えるのは、日本メーカーの十八番というより、日本独特の文化。日本はウェットな環境が当たり前なので、乾きにめっぽう弱いところがあります。そして狭い。必然的な流れと言うとその通りです。
しかし日本は世界でも有数に、カビ、酵母などが多いエリア。置きっぱなしの水周りにはカビが生えてしまいます。このため、各メーカー色々な方法でカビ対策をします。韓国メーカーとしても、この点は心得ており、コーウェイは4つの技術で防御します。
カビ対策がすごい
AIRMEGA 250Hのフロントドアを開けると、そこには見慣れぬ構造が開示されます。空気清浄機の上に加湿器があるのです。日本メーカーでは、まずお目にかかれない構成です。というのは水は重いです。このためまとまった量があると、一番重くなります。このため、安定するように下に設けられます。
しかし、その加湿器が上にあるのです。よく見ると加湿槽は浅く、水タンクも小さい。一瞬、「えっ」と思いましたが、それこそコーウェイの新発想。彼らは「加湿器を必要な時以外、働かせない。乾かして衛生を保つ。」という考えに基づき、カビ対策の優れた、加湿器にしたのでした。
一番顕著な技術は、「Water-Lock」機構でしょう。読んで字の如く、必要ない時は水タンクからの水の補給をシャットダウンする機能です。そして加湿フィルターにどんどん風を送り、トレイ内の水を蒸発させます。当然、最終的にはフィルターも、トレイも乾かします。
水の手を止められると、地球上の全生物は繁殖できません。コーウェイはテスト結果として、3時間稼働し、21時間ストップさせた時のテストデーターを提示、大腸菌が99.99%減少したそうです。冒頭、加湿器が小型であることを挙げましたが、乾かすなら水は少ない方がいい。というわけです。
しかし、乾かさずに使用する場合は、どうするのでしょうか? それにも彼らは一つの回答を出しています。それが、90分に1回、給水トレーの水を電気分解水して生成される次亜塩素酸水で自動除菌する「ジアフェクト」機能です。
通常、次亜塩素酸水を作るときは、塩水もしくは塩タブレットが用いられます。塩=NaClのClを使うわけです。効果はバツグンですが、ちょっと面倒。しかしコーウェイが使うのは水道水のみ。水道法で0.1mg/m3の残留遊離塩素があることが定められている残留遊離塩素を使います。高濃度になりませんが、彼らのテストデーターでは、4分で、大腸菌、黄色ブドウ球菌を99.9%以上不活性化させたそうですから、かなり有効と言えます。
確かに、盛大に加湿したい人には向いていませんが、温度が低い冬場の加湿は、ほとんどが結露してカビの温床になりかねませんので、この方法はありだと思います。
日本のように「恒久に」「確実に」「絶対的に」を重んじると、理想形態を作ることになり、その分、価格をあげなくてはならなかったり、とんでもない重装備になったりします。それに比べれるとAIRMEGA 250Hはとても現実的です。
フィルターもすごい
一方、清浄フィルターは、0.01μmまで対応していますから、かなりのモノです。遅れて日本市場参入したAIRMEGAは、どちらかというと、韓国を含む海外で売れたものを日本に持ってくるという感じでしたが、これは日本市場に寄り添った感じの空気清浄機になっています。
◆◆◆
シャープ プラズマクラスターNEXT搭載プレミアムモデルKI-PX100
プラズマクラスターの強化
日本の雄・シャープは、プラズマクラスターの強化をあげています。プラズマクラスターイオンは、空中浮遊物のタンパク質などを攻撃する以外にも、部屋の保湿、静電気除去に一役買っています。
かなり面白いイオンなのですが、その効果は濃度によります。またプラズマクラスターイオンは、一度作るとずっとそこにあるというモノではありません。時間と共に自己崩壊します。要するに、どんどん供給しなければなりません。
今、シャープの製品に使われているのは、「プラズマクラスター7000」「プラズマクラスター25000」そして「プラズマクラスターNEXT」です。7000、25000はそれぞれ、イオン濃度を表します。単位は個/cm3です。NEXTは50000個/cm3。これまでの倍のプラズマクラスターを作り出します。
加湿器を強化
あと、「加湿器も大幅強化」されています。業界初の1000mL/hr。ちょっと多すぎるような気もしますが、空気が乾いている時などは、このダッシュ力はプラスです。あとは気流と、自動お掃除が搭載されていること。フィルターのホコリは、カビ、バクテリアにとって栄養となりますので、これも重要ポイントです。
ただ、今まである技術を、今までの考え方で強化したモデルですので、前述の2モデルのような強さは感じられません。その分、安心だとも言えますが・・・。
まとめ
コロナ禍以降、空調家電は、色々強化されてきており、百人百様に競っています。しかし、それでは横並び。面白くありません。どれをチョイスするのかは、カタログスペックでなく、各メーカー主張を聞いて決めるのも一興かと思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。