手軽さから、いまやアイロンより市民権を得ている「衣類スチーマー」。衣類スチーマーはスチームアイロンからプレス機能を取り除いたものです。それなのに、衣類スチーマーにわざわざ取り除いた「プレス機能」をまた追加したというのです。一体どういうことでしょうか。アイロンとの違いはあるのでしょうか。
アイリスオーヤマのプレススチーマー
昔はアイロン、今は衣類スチーマー
ちょっと前まで、衣類メンテと言うと、アイロンとアイロン台を持ち出し、えんやこらでした。和服の文化から始まっているためでしょうか。日本は、洋服のメンテナンスに対し、少々冷たいところがあります。和服は、寝押しといい、布団の下にキチンと折り畳んだ着物を置き、皺伸ばし、折りをつけたものです。お金のいらないズボンプレッサーですね。
しかし、それも布団を使わなくなって以降、廃れました。それに代わり、シワになりにくい形状記憶衣類とかが世に普及したわけですが、やはり、アイロンは必需品でした。
ところが、衣類スチーマーが出てきて以来、ちょっとしたことでアイロンは使わなくなりました。
このスチームアイロンを横にして、手でシワを伸ばしながら、そこにスチームを当てる。これだけでシワは伸びるし、においも取れる。ついでに言うと、殺菌、ウイルスの不活化もできます。
しかし逆にできないこともあります。折り目をつけることです。アイロンは持ち続けなければならないのか? と思っていたことろへ、出てきたのが、今回の衣類スチーマー アイリスオーヤマの「プレススチーマー IRS-P2-B」。「プレス」とあります。プレスを捨てることにより、アイロンから進化した衣類スチーマーが、また「プレス」を取り込もうとしています。
衣類スチーマーにプレス機能をどう持たせるか?
シワを伸ばすスチーム機能
アイロンには、2つの機能があります。
1つはシワを伸ばすこと。2つ目は形を整えることです。シワを伸ばすのに必要なのが、スチームです。シワというのは、水を吸った繊維が変な形のまま乾燥してしまったために発生します。このとき繊維は絡み合っています。力を入れて伸ばしてもシワが元に戻らないのは、この繊維の絡みが力だけでは元に戻らないためです。
シワを取るには、繊維に水を含ませ絡みをとってやることが必要です。このためにアイロンに取り入れられたのがスチーム。その前は、アイロンの相棒として、霧吹きがマストアイテムでした。この頃はまだ、家は和服、仕事は洋服の人もあった時代です。s
スチームアイロンは、双方とも熱を使う、一台で両方ともできと、極めて理になっていたので、今は特殊な用途以外全てスチームアイロンとなっています。
実際、アイロンをセレクトする時、私もスチーム量がプアなものは勧めておりません。その位、ストーム機能は重要なのです。
折り目をつける「プレス機能」
アイロンは、アイロンとアイロン台の間の衣類をプレスします。そのアイロンを立たせた状態で使うような衣類スチーマーは、アイロン台がありません。専門職なら壁などに作るでしょうが、素人ではまぁ1日24時間として、一週間に数分。毎日に換算すると、多分秒単位の家事のためにわざわざアイロン台を作ることは大きなニーズにはなりません。
そう考えると、衣類スチーマーにその機能を持たせた方がベターです。
さて、どうするのか?
挟み込むのです。
幸い、衣類スチーマーのスチーム吐出面の多くはセラミックコーティングされています。これはアイロンと同じ。スチームは、1cmも離れると10℃近く温度が下がります。このため衣類スチーマーは、衣類に接触するようにスチームを当てるのが正しい使い方です。
そうなら、逆面にアイロン台の役目をするプレートで挟んだらどうだという考え方です。実際はアイロン台ではなく、熱を持った金属プレートで挟み込みます。挟み込んで、スチームと熱を浴びせるのです。
実際に使ってみた
蒸気量は、アイリスオーヤマ史上最高とのことだが、普段、ティファール社製の強力な衣類スチーマーを使っている自分には、正直物足らない感じです。スチーム量が多いと、繊維の絡みがあっという間にほどけるのでとても使いやすいのですが…。擦れるところまで近接で使うということを知らなければ、シワが伸びない場合もあるでしょう。これは正しく使っていないからといえば、その通りなのですが、やはりイマイチという感じですね。
当モデルは、ちゃんと擦るように使うとシワは伸びるので、スチーム量的には問題ないのかもしれないですが、もう少し、押し出す力を上げたほうが、繊維の中にも吸収されやすいし、伸びもしやすいと思われます。そう意味では、今後に改善を期待したいと思います。
さて、「プレス」について見ていきましょう。アイロンの温度帯が、「高」「中」「低」と3つあるのは周知の通り。通常は衣類によって温度を変えます。一方、アイリスオーヤマのプレススチーマーは、温度は「低」のみ。要するに時間を長くプレスすることにより、差を出す考え方なのでしょう。
残念ながら、通常はアイロンの「低」でかける「ベルベット」「ウール、カシミヤ、アクリル」「シルク」は当モデルではNG。「混紡、化繊」で4〜5秒、「麻、綿」で5〜6秒、「毛」で6〜10秒が目安となっています。プレスしては放し、位置を変えてプレスで進めます。ズボンのように、折り線を全面ピシッと出す場合は、アイロン、もしくはズボンプレッサーですが、折り目がなくなりやすい膝だけ対応するなら、十分です。
しかし、やってはだめだと止められるとやってみたくなるのが常。プレスしてそのまま動かしてみると、実に滑らかに動きます。これをNGとした理由は、布が伸びる可能性があるからですね。かなり分かります。
アイロンの代わりにはならないけど…有り!
正直、アイロンの代わりはできませんが、一部の折り目付けなら、いいのではという感じです。といより、今まで折りが気になった場合、ほんの少しでもアイロンを持ち出していたわけですから、その便利さは全くというほど、違います。
私的に「有り」ですね。大きな金属プレートに免じ、「鉄仮面」と言う称号を与えたいです。衣類の着こなしを守る、鉄仮面スチーマーの登場です。
アイロン面処理:セラミックコート / アイロン面温度:約120℃ / 水タンク容量:約100mL
商品寸法(cm):幅約12.4×奥行約13.8×高さ約25(電源コード含まず) / 質量:約960g(電源コード含まず) / 電源コード長さ:約2.5m
付属品:計量カップ
※衣類のラベルなどに表示されている取扱絵表示を参照し、使用して下さい。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。