カメラ付きで中身を撮影できる冷蔵庫が2社から発売されます。実は2013年にすでに登場していたのですが、10年近くたった今、このカメラ付き冷蔵庫が再度注目されています。その一つにスマホの普及も関係しているでしょう。この記事では、日立、アイリスオーヤマの最新モデルをご紹介します。
カメラ付き冷蔵庫が相次いで発売
2021年の2nd冷蔵庫を皮切りに、冷蔵庫は中身がスマートフォンで分かるものが増えました。2nd冷蔵庫というのは基本ストック用です。このため、中に入れるものは決まっているものとして、重量による在庫管理を実施。日立、アイリスオーヤマなどを始め、その機能は、シャープ、パナソニックなども採用しました。
そして2022年。今度はメイン冷蔵庫の中身が外出先からでも分かるという冷蔵庫が、日立、アイリスオーヤマから連続して出されました。今回は、この最新冷蔵庫をレポートします。
中身がわかる冷蔵庫は2013年にすでに登場
IoTは2015年の米国の展示会:CESの基調講演で一躍有名になりました。しかし、それ以前から日本メーカーは、HEMS(Home Energy Management Service)で、どうにかして省エネが必要な家電をネットに繋げることを考えていました。ここでいう省エネが必要な三大家電は、「照明」「冷蔵庫」「エアコン」です。
省エネはみんな好きですが、そのために、数万円高くなっても買ってもらえるかと言うとNOです。それを電気代に回せば、多分、お釣りがきます。省エネだけでは、当時まだ普及途中だった家庭内Wi-Fi、そして家電に取り付けるWi-Fiシステムを是とする理由にはならなかったのです。
このため、各メーカーは照明、冷蔵庫、エアコンのキラーコンテンツを探ります。ところがなかなか見つかりません。それはそうですよね。なくてはならない家電ですが、基本受け身な家電ですから、エンターティメント性に欠けるのです。
しかし、メーカーは様々な工夫を凝らしましたよ。その中の一つが、東芝が2013年のCEATECで見せたデジカメ付きの外出先でも冷蔵庫に何が入っているのかが分かる「スマート冷蔵庫」です。
冷蔵庫内にデジカメユニットを搭載。必要な時に写真を撮り、その写真をクラウドに上げ、それをスマホで確認する方法でした。しかし如何せん、コストが高かった。クラウドの管理費も入れて、通常品より5万円高かった記憶があります。冷蔵庫の中身を見るのに、それまではただ、一方便利だとしても、プラス5万円。一月分の食費が掛かる訳です。ないなぁと言うのが私の思いでした。
最近、東芝ブランドの白物家電を扱っている東芝ライフスタイルの取締役に、当時の話を聞くチャンスに恵まれたのですが、「キラーコンテンツではなかったですね。」と言われました。
2022年になってなぜ再度投入したか?
ではなぜ10年経った今になって、この2社は再度トライしたのでしょうか?
両者とも、その一つに、スマホを取り巻く環境が大幅に変わったことが挙げられます。スマホの普及率もそうですし、ほとんどの家でWi-Fi接続が当たり前のようにできるようになりました。2013年の当時は考えられなかったことです。また、いろいろなメーカーがIoTサービスを手がけており、ユーザーも楽に接続できるようになりました。
環境は整ったと言えるでしょう。
ではコストはどうでしょうか? 2022年現在、コンパクトデジカメ(コンデジ)の市場は、普及したスマホに取られ、特殊なカメラしか残っていません。あるのは、スマホに搭載する遠近両用のカメラデバイスです。スマホで大量に消費されていますので、コストもそれなりに抑えられているはずです。
あと変わったのは、クラウド環境です。当時はビッグデータとしないデータは、有料でという考え方で管理費が必要とされていました。今では、これらはサービス料の中に含み対応します。特殊なことではなくなったので、値が下がったのですね。
それまでは、性能以外に、環境、コストが採用時の壁としてありましたが、その2つがなくなったという訳です。
日立 HXCCタイプ R-HXCC62SKXCCタイプ R-KXCC50S
日立は、このデジカメで中身を写す機能、冷蔵庫カメラを、617LのR-HXCC62Sと、498LのR-HXCC62Sという大容量冷蔵庫に搭載しました。今、大型冷蔵庫は人気ですから、より魅力を高めようという考え方です。
しかし、これはどうでしょうか? 時代劇のお殿様よろしく、ドアの上から黒いものがにょっきり出ています。実はここにデジカメユニットが入っています。今の時代、冷蔵庫は悪目立ちせず、生活空間に溶け込むのが良いとされ、冷蔵庫の基本となる白色より、ダーク系の色が主流です。その扉の上から、デジタルカメラがにょっきり出ていますので、ちょっと類をみないデザインです。
この「外観をキレイに」というニーズとともに強いニーズが「内容量を少しでも大きく」です。デジカメを付ける場合、中につけると内容量が減ります。そうかといって外に出すと、今までにない外観になります。どちらを選択するのかは、メーカーの判断になります。
冷蔵庫を開けた瞬間を狙いすまして撮影します。
撮影されるのは、左ポッケ、冷蔵庫、右ポッケの冷蔵庫の上側。また、前の食材で隠れてしまうと、当然のことながら撮影できません。上半分の60%くらいが撮影できます。カメラですからね、完全というのは無理です。
このため、切れかかっている食材は常に前に置くなどちょっと気を付けるとプラスです。場合によっては、前後の入れ替えもありです。逆に、そうしないと廃棄食品にしてしまうこともあります。小まめにいじっていると、多分1分位で形になると思います。何かと面倒臭さが付きまとう冷蔵庫の整理ですが、デジカメで撮るということで、扱いも改善されるかも知れませんね。
あと、これらの冷蔵庫には「丸ごとチルド」が採用されています。冷蔵室の湿度を高くすることにより食材乾燥を防ぐ機能です。これ「ラップなし」での保管がOK。食材が見え易く、バックでデジカメ撮影を盛り上げてくれます。
このようなところも、2013年とは大きく異なります。
アイリスオーヤマカメラ付き冷凍冷蔵庫296L STOCK EYE(ストックアイ)
日立と全く逆な構成を取るのが、アイリスオーヤマです。容量は296L。一人だとちょっと大きく感じられる容量。2ドアで中々いい感じに仕上がっています。
そのイケメンを活かすためでしょうか、デジカメは中に設定されています。レンズの曇り防止、耐寒仕様にしたためだと思いますが、設置されたデジカメサイズは、個人所有のiPhone 8とほぼ同等の大きさです。
大したことないように感じますが、有限な冷蔵庫の中では、ちょっとスペースを取ります。日立が内容量を稼ぐために外観を犠牲にしたのと逆で、こちらは内容量がちょっと犠牲になっています。
こちらは扉を閉めたあと撮影します。このため、冷蔵庫の一番上の棚、ドアポケットの一番上の棚は撮ることができません。日立より、写るものは少なめです。
しかし、これに日立と同じで、写るところをうまく活用すべきでしょうね。
内容量が内容量なので、新婚〜赤ちゃん一人の共働きを想定しているそうです。買い物はできる方がする。当然、買い物リストは共通化しておきますが、スーパーに行くと、安売り品が気になりますね。過剰にあったら買ったらダメですが、ないなら買うのは有り。そんな時に頼りになりますというものです。説明員が実に熱心に話してくれました。かなりリアルでしたね。
まとめ
この機能が復活したのは、2013年も、2022年も「外出先から冷蔵庫の中身を見たい」というニーズは変わらずにあるということです。これの意味は、多分、何も覚えていないので全部みたいではなく、買うものを思い出すために、きっかけが欲しいというものだと思います。記憶は連鎖で覚えていきますので、数箇所思い出せれば、多くの場合問題はありません。それに対しては、問題ありません。
また、アイリスオーヤマのアプリは、手入力ですが自分の食材リストを作る機能を持っています。賞味期限欄もあるので、うまく使えばとても便利です。作るのは面倒ですが、一度作ってしまうと、管理しやすいものも事実。
IoTの環境が整ってきた今、冷蔵庫はよりの能動的に使う時が来たのかも知れません。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。