蒸し暑い梅雨や夏を目前に控え、扇風機を引っ張り出している家庭も多いことだろう。実は、扇風機は、2010年ごろから大きく様変わりをしていて、安全性はもとより、機能もかなり進化している。今回は、そんな扇風機の最新事情を注目機種の紹介とともにお伝えしよう。
扇風機のトレンド 細かい風量調節、優しい風、上下の首振りなどに注目
2010年、扇風機に革新的なモデルが登場した。
バルミューダのThe GreenFanだ。
それまでの常識だったACモーターではなく、DCモーターを搭載したのが最大の特徴で、そのぶん価格も高かったが、DCモーターのメリットが知られるにつれて人気が高まり、以来、上級扇風機のトレンド機能として各社に波及し、定着している。
DCモーターは、とても細かく風量を調節できるのがメリットだ。強すぎず弱すぎず、ちょうどいい風を選べるから気持ちいい。
通常、6〜8段階、機種によっては無段階に切り替えられる。ACモーターより動作音が静かで省エネなのも利点だ。
また、近年は、風の質にも変化が生まれている。
直線的にぶつかってくる風だと不快なので、滑らかに広がる優しい風になるように、羽根の枚数を増やしてムラを少なくしたり、羽根を流線形にして空気抵抗を減らしたりしている。
カモメや蝶など、自然界の羽をヒントに形状を工夫しているモデルもある。
そして、エアコン使用時に、扇風機をサーキュレーターとして使うケースも増えている。
夏は足元の冷気を、冬は上方に集まる暖気を、扇風機の風で散らして部屋全体を均一な温度にするもので、このとき注目されるのが上下の首振り機能だ。
もちろん、左右の首振りでもサーキュレーターとして使えるが、上下の首振りが加わることで、部屋の空気をより効率よく攪拌できるので、エアコンの省エネ運転にもつながる。
最新トレンドとして見逃せない機能といえる。
最新扇風機 六つのトレンド
(1)羽根の枚数や形状の工夫
羽根の枚数が多いほど風のムラが少なくなり、優しい風になる。上級モデルは7〜9枚が主流だ。流線形デザイン、蝶の羽根の応用、二重構造など形状も工夫され、滑らかで心地いい風を生み出す。
(2)DCモーターの採用
きめ細かく風量を調節でき、強すぎず弱すぎず、ちょうどいい風を選べる。動作音が静かなので、睡眠時にも使いやすい。
(3)上下左右の立体的な首振り
左右の首振りに加えて、上下にも首を振る製品が登場。より効率よく部屋の空気を攪拌できるので、エアコン使用時にサーキュレーターとして併用したいとき、便利さを実感する。
(4)室温センサーで見張り
温度センサーで室温を感知し、室温が下がると弱めに、室温が上がると強めに、風量を自動で切り替える。温度と湿度の両方を見張ったり、調節の度合いを選べるモデルもある。
(5)快眠向け「おやすみモード」
段階的に風量を下げていき、数時間後に自動的に電源がオフになる。表示パネルの明るさを下げる「減灯」や、自動で電源が切れる「切タイマー」は、通常、個別にも操作できる。
(6)イオン・消臭機能の搭載
シャープの「プラズマクラスター」、パナソニックの「ナノイー」が著名。ソファー、クッション、部屋干しの衣類などに直に風を当てると、微細なイオンが繊維の奥まで入り込んで消臭する。
注目モデルの特徴 羽根の形状や枚数には各社が独自のこだわりを持つ
バルミューダ・The GreenFanは、DCモーター採用の先駆けとして有名だが、速度の異なる風を同時に送り出す二重構造の羽根にも特徴がある。
内側の遅い風が外側の速い風を引き込み、やがて一点でぶつかって面状に広がるので、まるで自然界の風に優しく包み込まれるような気持ちよさがある。
首振り角度を自由に設定でき、ポールを外せば卓上型にできる。
バルミューダ
The GreenFan EGF-1600
実売価格例:3万8880円
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シャープ・PJ-H3DGは、蝶の羽を応用した形状がユニークだ。
7枚羽根の一枚一枚にくびれと突起を持たせ、これが回転すると三重の軌跡を生み、都合21枚羽根相当の風を送り出す。風がとても滑らかで心地いい。
●シャープ
PJ-H3DG
実売価格例:2万4180円
羽根の形状では、ドウシシャ・カモメファンも注目だ。
渡り鳥であるカモメの羽をヒントに、肌当たりのいい風が効率よく遠くまで届くように工夫されている。
3年前から羽根に柔らかい素材が採用され、風量や静音性がアップしたのも特徴。
フレキシブルアーム採用の最新モデルでは、好みの向きや高さに首振りを調節できて快適だ。
●ドウシシャ
カモメファン TLKF-1232D
実売価格例:2万6870円
東芝のF-DLW75は、9枚羽根が特徴で、きめ細かくて滑らかな風を実現。
羽根の枚数を9枚にしたことで、ムラの少ない自然に近い風を生み出す。
温度センサーによる自動風量コントロールは2モード装備。
高原に吹く風をデータ化したという「ランダム風」やそよ風のような「ふわり風」も良好。
東芝
F-DLW75
実売価格例:2万510円
日立のHEF-DC6000も羽根が8枚と多く、風の切れ目の少ない、優しい風を実現している。
温度センサーは2モード、リズム運転も2モードから選べる。「うちわ風」や「やわらかリズム運転」も心地いい。
組み立て不要で、箱から出してすぐ使えるのも快適だ。
日立
HEF-DC6000
実売価格例:2万9780円
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パナソニックのF-CR339は、立体首振り、温度センサー、おやすみモード、ナノイーなど、便利機能を満載している。
流線形のデザインにして空気抵抗を減らし、バランスの取れた滑らかな風を生み出す。
上下左右の立体首振りが部屋の空気をかき回し、室温のムラを抑える。「1/fゆらぎ」は、高原の風のような心地よさ。
パナソニック
F-CR339
実売価格例:2万9520円
以上は、どれもリビング向きだが、ほかに、個性的なモデルも登場している。
例えば、パナソニック・創風機Qは、羽根のない扇風機。背後の吸気口から空気を吸い込み、高圧化した空気を前面から勢いよく吹き出す。
このとき、周辺の空気を巻き込みながら加速するので、パワフルで直線的な風が生み出される。
パナソニック
創風機 Q F-BP25T
実売価格例:3万5140円
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ドウシシャ・FLT-254Dは、厚さ7センチに折り畳める扇風機。
家具のすき間などに収納できるので、出し入れが軽快。
ドウシシャ
FLT-254D
実売価格例:1万1810円
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シャープ・PJ-H2DBGは、コードレスでも使えるのが特徴。小型・軽量で持ち運びしやすく、コンセントのない場所で使えるのが便利だ。
3D首振り、温度・湿度の見張り、プラズマクラスターなど機能も充実している。
シャープ
PJ-H2DBG
実売価格例:3万1460円
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買い替え時の注意点経年劣化には要注意。購入時には必要機能を見極めたい
過去5年間に100件以上と、近年、扇風機を原因とする火災事故が頻発しているという。
古い製品でも、問題なく動作しているから大丈夫だと考えがちだが、長く使っている間にモーターやコンデンサーなどの部品が経年劣化してくる。
異音や異臭がしないか、コードが劣化していないかなど、よく確かめてみよう。
2009年以降に登場した製品には「標準使用期間」を記したラベルが貼られているので、これを一つの目安にするといい。
この期間を過ぎたら、不具合が起きていないかを必ずチェック。もし異常に気づいたら、メーカーに相談したり、買い替えを検討したりしよう。
買い替える場合は、やはりDCモーター搭載モデルがおすすめ。
風が柔らかく、音は静かだし、サーキュレーターとしても使いやすい。
ただし、どれも比較的高価なので、室温センサーやイオン・消臭機能、上下の首振り機能といった付加機能など、必要な装備をしっかり見極めよう。
「標準使用期間」が記されている
まとめ
エコや健康の観点から、再び注目されている扇風機。
DCモーター採用のモデルなら、風は驚くほど柔らかいし、音も静か。
涼風を得るだけでなく、冬もサーキュレーターとして使えるので、とても魅力的なアイテムだ。
もし、長年使い続けている古い扇風機があるなら、モーターやコンデンサーなどの経年劣化により、異常発熱や火災事故の原因になるおそれもあるので、早めに買い替えたい。
監修/中村 剛(「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権優勝)
◆Profile/「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権で優勝の実績を持つ家電の達人。家電製品総合アドバイザー、消費生活アドバイザー。東京電力「くらしのラボ」所長。現在、暮らしに役立つ情報を動画(Facebook)で配信中。→「くらしのラボ」はこちら
取材・執筆/市川政樹(テクニカルライター)
※価格は記事制作時のものです。