大切なビデオテープやフィルム写真は、今すぐデジタル化して保存! 覚えておきたい基礎の基礎を大公開

家電・AV

アナログメディアの保存性が心配される一方、最近は、デジタルメディアによる保存も完璧ではないとされている。では、どうすればいいのか、まずは、各メディアの保存性を知って、最適な保存方法を探してみよう。

再生機器が手に入らなくなってきているVHS&8ミリビデオ

写真や動画は、その瞬間を切り取ったもので、二度と撮り直すことができない。それだけ大切なものだから、撮影から何年たっていようと、確実に見られるようにしておかなければならない。そのためには、さまざまな「保存術」を知っておくことが必要である。

一口に写真や動画といっても、その“カタチ”はさまざまだ。特に、一昔前の写真や動画は、フィルム、プリント、ビデオテープといったアナログのメディアに記録されており、メディアの破損が心配。

中でも、ビデオテープは、8ミリビデオカメラやビデオデッキなど、再生する機器がすでに製造終了していることが多く、手持ちの再生機器がなく、新たに入手もできないと、内容を見ることができなくなる。デジタル記録時代になってからのビデオカメラでも、DV方式のように、記録メディアがテープであると、再生機器がなければ見られなくなってしまう。

■アナログ再生機器が入手困難!

ビデオカメラやビデオデッキは、すでに入手困難になっている方式もある。再生機材が入手できるうちにデジタル化しておこう。

保存術の第一歩は、「見られなくなる」ことを避けるための「デジタル化」から始まる。再生機器が入手できるうちに、メディアが再生できるうちに、その時点で最高レベルの品質でデジタル化し、パソコンなどにファイルとして保存する必要があるのだ。

デジタル化しておけば、それ以降の品質劣化を防ぐことができるうえ、再生機器に頼らず、パソコンやスマホといった汎用のデジタル機器で、いつでも再生できる。「このHDDに全部のデータが入っている」と家族に伝えておけば、大切な思い出を引き継ぐこともできる。

また、デジタルデータであれば、ただ見るだけでなく、印刷物にするといった、ほかの用途に転用することも容易。旧来のメディアのまま死蔵しておくより、活用する可能性がはるかに高くなるわけだ。

■デジタル化が保存術の第一歩だ

アナログデータは、まずデジタル化することが大切。パソコンなどにデータを保存しておけば、汎用の機器でいつでも再生することができる。

デジタルデータも、ただ保存しているだけでは危険!バックアップが必須

では、旧来のメディアからデジタル化すれば、それで安心かといえば、そうではない。デジタルデータでも、データを喪失する可能性はゼロではない。それどころか、デジタル化したデータをただ保存しているだけでは、将来見られなくなってしまう可能性が高いといえるのだ。

デジタルデータを喪失してしまう可能性と、それに対する対策をいくつか考えてみよう。

まず考えられるのが、パソコンが故障してしまい、内蔵HDDに保存したデータが取り出せなくなってしまう事態。これは、データの保存場所を内蔵HDDではなく、外付けHDDや光学ディスクにすることで解消できる。

次に、HDD自体の故障や破損によるデータの喪失。これは、単一のHDDに保存するのではなく、常時別のHDDにもデータをバックアップすることで回避できる。なお、HDDが壊れた場合も、中身のデータをあきらめる必要はない。壊れたHDDからデータを救出するサービスがあるので、覚えておこう。

万全のバックアップ体制を取っていても、データを保存しているHDDを設置している自宅が災害などに遭遇する可能性もある。このような場合でも、データをインターネット上の保存サービス「クラウドストレージ」に預けておけば、写真や動画は守られる。

そして、永続的にデジタルデータを保存したいならば、これらの対策を複数組み合わせる必要がある。基本的な考え方は「デジタル化したものを、さらにコピーして何重にもバックアッブしておく」ということである。

もちろん、アナログの写真や動画を、デジタル化したからといって、元のアナログメディアを放置していいわけではない。アナログメディアも経年劣化を極力避ける対策を施して保存しておいたほうがいい。というのも、今後、現在よりもさらに高品質なデジタル化の方法が登場したときに、再度オリジナルのアナログメディアからのデジタル化ができるかもしれないからだ。だから、アナログメディアはきちんと保存しておくことが大切。

写真のフィルムやプリント、ビデオテープといったアナログメディアは、高温と湿気、大きな温度変化を嫌う。特にビデオテープは、高湿度の環境に置いておくと、テープが固着したりカビが生えたりといった、致命的なダメージを負いやすい。高温・多湿を避け、冷暗所で保存しよう。

なお、すでにカビなどで傷んでしまったアナログメディアも、専門業者の力を借りれば、ある程度まで、つまり内容を見ることができる程度に復元できることも多い。貴重な思い出が記録されているものならば、プロに任せて、コストをかけて復元するというのも一つの方法である。

アナログ/デジタルメディア、それぞれの特徴をつかんでおこう

アナログにしろ、デジタルにしろ永続的な保存をしたいなら、各メディアの保存性の特徴を把握しておく必要がある。ここでは、代表的なメディアの主な特徴を挙げていく。

アナログメディアの中で、最も繊細で、保存に向いていないのがビデオテープ(8ミリテープなども含む)だ。ビデオテープは、非常に薄いフィルムでできており、熱によって変形することがある。また、湿気によってテープどうしが固着してしまい、デッキに入れるとテープが切れてしまうこともあるし、表面にホコリが付いたり、カビが生えたりといったトラブルもある。長期保存にはあまり向かず、高温・多湿を避けて慎重に保管する必要がある。

■ビデオテープ、8ミリテープ

アナログメディアの中でも、極めて扱いが難しい。テープの素材が非常に薄いため、高温多湿で変形・変質しやすい。

写真フィルムは、ビデオテープほどもろくはないが、高温多湿に弱いのは同じ。また、写真が写っている部分に物理的な傷がつくと、画像が部分的に失われてしまうので、フィルム保存専用の袋(スリーブ)に入れて保存するのが正解。冷暗所で保存すれば、100年たっても画像が失われることはない。

写真プリントは、土台が紙なので、フィルムほど強くはないが、ビデオテープほど弱くもない。ほかのメディアと同様、高温多湿の環境を嫌う。プリントの場合、フォトフレームになどに入れて飾っておくこともあるだろうが、直射日光や蛍光灯の光を長期間浴びることで、色あせや変色が発生する。これも、保存版なら冷暗所保管が正解。きちんと保存すれば、100年程度は見られるはずだ。

■プリント写真、フィルム

高温多湿に弱いが、ビデオテープより扱いはラク。プリントどうしの張りつきやキズ、カビに注意して保管すれば100年はもつ。

光学ディスクはさまざまな機器で再生することが可能

一方、デジタルメディアは、大別すると「光学ディスク」「HDD」「フラッシュメモリー」の3種類に分けることができる。

光学ディスクのうち、CD-R、DVD-Rはほとんどのパソコン用光学ドライブとBD/DVDレコーダー、プレーヤーが対応しており、汎用性はまずまず。パソコンで写真や動画データを書き込んだディスクも、レコーダーやプレーヤーの多くで読み込めるので、再生しやすさは優秀だ。冷暗所で長期保存した場合の安定性もかなり高いが、DVD-Rに関しては記録面の色素が経年劣化で消えてしまう可能性があり、長期保存には向かないと思われる。

■DVD、BD

ドライブがないと読み書きができない。DVDは書き込み面の耐久性が低いものがある。BDのほうが耐久性はいい。

HDDは、大容量化するデジタルデータを大量に保存できるため、保存メディアの本命といえるが、駆動部品があることから、故障と無縁ではない。また、パソコン内蔵型、USB接続型、ネットワーク接続型(NAS)では、汎用性や保存性で大きな差がある。

結論をいえば、RAID(※)に対応したNASを常時通電状態で運用し、メンテナンスしながら維持していくのが、最も保存性が高いといえる。

※RAIDとは、複数のHDDを一つのHDDのように扱う技術で、二つのHDDに同時に同じデータを書き込むRAID1など、さまざまなモードがある。

■内蔵HDD

パソコンが故障すると、HDDが壊れていなくても中身を読み出せなくなる。外付けHDDも、中には同等のHDDが入っている。

■外付けHDD、NAS

USB接続でも、NASでも、複数のドライブを装備して、RAIDなど分散記録するタイプを使うことが、保存性の高い方法となる。

一般的に、HDDはパソコンと組み合わせて使うことが多いが、近年ではパソコンを使わず、直接スマホやデジカメからデータを受け取って保存する単体型のHDD、いわゆるフォトストレージも人気がある。

また、SDカードやUSBメモリー、外付けのSSDといった、メモリーチップにデータを記録するメディアを総称して「フラッシュメモリー」という。USB接続の外付けHDDと同様、パソコンに接続するだけで使える手軽さに加え、汎用性が高く、駆動部分がないため、物理的に故障する可能性が低いという特徴がある。しかし、原理上、長期間データにアクセスしないと、保存したデータが自然消滅するという特性があり、長期保存には向いていない。

■SDカード、USBメモリー

定期的に通電し、データにアクセスしないと、自然にデータが消失する。故障しにくく収納しやすいが、長期保存には向かない。

■主なデジタルメディアの特徴

解説/福多利夫(フリーライター)

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