今年は自然災害が目立つ。災害に見舞われれば、停電や避難を余儀なくされることもあるだろう。そういう非常事態に役立つのがラジオだ。とくに電源確保の心配をしなくていい手回しラジオをひとつ持っておくと安心。ここでは、どんなラジオを持てばいいのか主要製品の特徴を比較してみた。【2019年10月21日更新】

手回しラジオとは

手回しラジオは「手回し式充電ラジオ」のことである。ラジオ本体にレバーが付いており、それう回線させることで電気を発生させ、内蔵電池に電気をため、その電力でラジオを受信するというものである。電源確保が難しくなる非常時でも使えるため、国内外のメーカーから数多くの製品が発売されている。

多くの製品がラジオ以外の機能も搭載している

手回し「ラジオ」といわれているが、多くの製品でラジオ以外の機能も搭載している。どれも非常時に役立つものであり、自分にとってどれが必要な機能かを見極めれば、購入製品決定のキーポイントにもなる。

災害時に役立つ付加機能

手回しラジオの機能は、どれも非常時に役立つものだが、必須機能といえるものがいくつかある。それが以下に挙げる「ラジオ」「LEDライト」「スマホ充電」の機能である。

・情報収集するためのラジオ機能

当たり前だが、ラジオの機能がメインとなる。ラジオは非常時に情報収集するのに必須。テレビのほうが便利な気がするが、テレビのL字画面の情報はテレビを注視し続けないと必要な情報が得られない。ラジオの場合は、聴きながら別の作業をしていても、当該地域の地名などが流れたときだけ集中して聴けば必要な情報を逃すことがない。

・ワイドFM対応は必須

ラジオにはAM放送とFM放送の2種類がある。AM放送は高い建物がない開けた場所では、遠くの放送局の電波も受信できるという特性があるが、マンションのような鉄筋集合住宅やオフィスビルの室内では受信しにくい(ぼぼ受信できない)という難点もある。FM放送はAMほどの長距離受信はできないが、ビル内でも受信しやすいという特徴がある。
民放ラジオ局各社は、ビル内で受信しにくいAM放送の視聴者拡大のために、AMで放送中の番組をそのまま同時にFMでも放送するというサービスを行っている。これを通称「ワイドFM」という。非常時に情報収集するには、数多くの番組を聴けるようにしておかなければならないので、ラジオがワイドFMに対応していることは必須となる。今回ピックアップした機種はすべてワイドFMに対応している。

・安全確保のためのLEDライト

非常時に必要となるツールの筆頭に挙がるのが「懐中電灯」である。現在では、光源として低消費電力で明るいLEDが採用された「LEDライト」が主流となっており、わずかな電力でも長時間にわたり明かりを得ることができる。手回し発電で明かりが確保できれば、非常時に懐中電灯用の乾電池を確保するのに多くの時間を浪費するということがなくなるわけだ。

・スマホの予備電源

災害時にスマホが使えるか(電波があるか)どうかはわからないが、電波があるのにスマホが使えないとなれば、ストレスが大きいだけでなく、緊急連絡ができずに生死を分ける可能性もある。スマホを充電する手段を確保しているかどうかは非常に重要なことである。
ここで紹介する製品を含め、手回しラジオには、スマホを充電する機能を搭載しているものが多い。内蔵電池によって、スマホをフル充電の何分の1程度を充電することができるし、手回しを5分程度行うことで、スマホの通信や通話を1~3分できるとするものが多い。手回し発電でのスマホ充電は気休め程度の性能ではあるが、それが生死を分けることもあるので無視することはできない。
手回しラジオの多くがスマホ充電機能を搭載しているが、ラジオとスマホをつなぐケーブルが付属しているものは少ない。これは自分のスマホにあわせたケーブルを自分で用意して、非常持ち出し袋に入れておくといいだろう。

手回し以外の電源にも対応していると安心

手回しラジオというものの、すべての製品が手回し発電以外の電源にも対応している。どのような電源に対応しているか、何種類の電源に対応しているかは機種によって異なるが、より多くの電源に対応しているほうが便利で安心である。

ACアダプター

ACアダプターに対応していれば、家庭用の100ボルトコンセントで電源を確保できる。電池の消耗を気にせずラジオを聴いたりスマホを充電することが可能。現実的には災害時に便利というより、普段使いするときに便利である。基本的にACアダプターを接続することで、内蔵バッテリー(充電池)を充電することになり、ACアダプター接続で普段使いしている手回しラジオを非常時に持ち出せば、手回しをする以前に内蔵バッテリーの電力ですべての機能が利用できる。

乾電池

多くの機種で乾電池が利用できる。内蔵バッテリーとの併用であり、原則として内蔵バッテリーを使い切ったあとで乾電池が使われることになる。災害時でも乾電池を確保(非常持ち出し袋に乾電池も入れる)できれば、手回し充電せずに、各種機能が利用できる。ソーラーパネル

ソーラーパネル

いくつかの機種は、ソーラーパネルを搭載している。このパネル部分を炎天下で太陽の方向に向けておけば、太陽光発電で内蔵電池を充電できるというもの。手回しラジオの本体サイズが小さいため、搭載されているソーラーパネルも小さいので、発電量も大きくない。日中はラジオ等を使わずに充電に専念して、溜めた電気で夜間にラジオを聴いたり、LEDライトを使ったりというパターンを想定した装備といえるだろう。

代表的な手回しラジオ製品

ここで紹介する5つの機種が、代表的な手回しラジオである。これ以外にも海外メーカーや、ノーブランド製品など、数多くの製品が市販されている。市販されているどの製品も、この5機種のいずれかに似た特徴の製品といえるだろう。

ソニー ICF-B99 
おすすめ!

ソニーは、手回しラジオを2機種ラインナップしているが、このICF-B99はソーラーパネルを装備した上位モデルとなる。
手回し、ACアダプター、太陽光の3方式充電に対応しており、アルカリ乾電池(単3×2)でも駆動できる。太陽光による1時間の充電でAMラジオが60分聴ける。内蔵電池が満充電ならば、スマホ通話の場合、25分程度の充電が可能。単3電池でも、内蔵電池と同程度にスマホの充電ができる。

東芝 TY-JKR5
おすすめ!

東芝だけが採用している「スーパーキャパシタ」が最大の特徴。これは厳密には電池ではなく、コンデンサーという部品。10年程度は充電性能を失わないスーパーキャパシタを内蔵電池として採用している。電池としての容量は少ないが、数年間放置していても、緊急時に手回し充電すれば、すぐに使える。単4電池×2本での駆動も可能。ACアダプターには非対応。防水・防塵なのも安心できる。非常持ち出し袋に入れっぱなしにしておくならば、これがいちばんいい。

パナソニック RF-TJ20

2スピーカー搭載ながらコンパクトなボディで、ラジオをみんなで聴くのに向いている。ラジオ、LEDライト、スマホ充電のほかに、非常時に自分の居場所を知らせるサイレンも搭載している。ACアダプターには対応しておらず、内蔵電池か乾電池(単4×3)での駆動となる。単4電池でのラジオ、LEDライト駆動はできるが、スマホ充電は手回しのみとなる。

クマザキエイム SL-090

太陽光充電にも対応。ラジオ、LEDライト、スマホ充電のほかに、読書灯、SOSアラーム(サイレン+ランプ)機能も搭載している。
内蔵電池はリチウムイオン電池で、容量が2000ミリアンペアアワーある。この容量は、iPhone11/11proの3分の2程度、iPhone11 Pro Maxのおよそ半分程度の容量である。
内蔵電池の充電には、一般的なモバイルバッテリーと同様にUSB-ACアダプターが必要となる。

アイリスオーヤマ JTL-23

安価でコンパクトな機種。コンパクトゆえに、乾電池駆動には対応しない。ラジオ、LEDライトのほか、サイレンも搭載している。
内蔵バッテリーはリチウムイオンポリマー電池で、1年間放置しても容量が20%程度しか減らない。容量は450ミリアンペアーアワーで、これはニッケル水素電池採用の製品と同等か、それ以下の容量といえる。満充電なら、iPhone11/11proの15%程度の容量である。内蔵電池の充電には、一般的なモバイルバッテリーと同様にUSB-ACアダプターが必要となる。

各機種のスペックを比較

画像1: 各機種のスペックを比較

ここで取り挙げた5機種の主要なスペックを表にしてみた。電池の種類や、手回しによる発電力の差、乾電池が使えるかなどをチェックするといいだろう。

画像2: 各機種のスペックを比較

内蔵バッテリーにバリエーションがある

手回しラジオのキモは、内蔵バッテリーの種類にある。現状、ニッケル水素電池、リチウムイオン系、スーパーキャパシタの三種類があり、それぞれの特徴によって、非常用ラジオとしての扱い方が異なってくる。その特徴を把握していないと、万が一のときに思ったように使えない可能性もあるので注意したい。

ニッケル水素とリチウムイオンは放置すると自然に電気が抜けてしまう

ニッケル水素電池やリチウムイオン系の電池は、非常に身近な存在だが、非常用のツールに使うのには少々やっかいな特性がある。それは、長期間使用せずに放置すると溜めていた電気が自然に抜けてしまうということ。また、長期間使用しないことにより、内部の科学物質が不活性化してしまい、電池としての能力も失ってしまうことがある。つまり、数年間非常持ち出し袋のなかに入れっぱなしにしてしまうと、いざというときに動かない、手回しで発電しても、作った電気を溜めることができないという可能性があるわけだ。

ニッケル水素やリチウムイオンは普段使いすることで不活性化を防ぐ

ニッケル水素電池、リチウムイオン系の電池の不活性化を防ぐためには、非常時に使おうと思って購入したものであっても、普段使いするといい。つまり、日常からポータブルラジオとして使うことで内蔵電池を働かせておけば、いざというときに使用不能になってしまうことはない。例えば普段はベッドサイドに置いてラジオを聴くのに使い、災害時にはそれを持って避難すればいいわけだ。

不活性化しないスーパーキャパシタ

電池の不活性化に着目したのが、東芝の製品である。東芝が採用しているスーパーキャパシタは、溜めた電気が10年程度は抜けない。また不活性化が起きないので何年放置していても電池としての能力を失うことがないという特徴がある。電気を溜められる量はあまり多くないが、使いたいときにいつでも使えるという安心感がある。非常持ち出し袋に入れっぱなしにできるメリットは大きい。

何分の手回しで、どれくらい使えるのか把握しておこう

手回しラジオ、最大の特徴は手回し発電によって各種機能が使えること。電池切れを気にしなくていいのがメリットである。この特徴を最大限活かすには、手回し発電で、どの機能がどの程度(何分間)使えるのかを把握しておく必要がある。ここで挙げた各機種の大まかな性能は、表に参照して欲しい。

1分手回しで50分ラジオが聴けるソニーは優秀

メーカーが想定している1分間の回転数に差があるとはいうものの、ソニーは1分間の手回し発電でラジオをFMで50分、AMなら75分聴けるという。これはかなり優秀。3分間程度を一度に回して長時間駆動させるのもいい。

1分手回しで3時間LEDライトが使えるパナソニックもいい

LEDライトをメインに考えるなら、パナソニックがいい。各社でLEDライトの明るさに差があるはずだが、1分間の手回しで実用的な明るさのライトが3時間使えるのは頼もしい。この持続力ならば、災害時用のライトはこのモデルに任せてしまうという手もあるだろう。

スマホ充電に過度の期待はダメ

スマホの充電機能は、近年最も期待される機能だが、手回しラジオに全面的に頼るのは危険だ。手回しラジオの発電能力は、それほど高くないうえに、近年のスマホの消費電力は非常に大きい。手回し発電で、既存のモバイルバッテリーと同等レベルの充電ができるわけではない。
表を見てわかるとおり、手回し充電でスマホを充電する性能は、機種ごとにバラバラである。しかも、この数値が実際に自分のスマホに当てはまるとも限らない。なぜなら、メーカーが発表している数値は、その製品が開発された時点で計測したものだからだ。数年前の特定のスマホ(多くはその時点で最新版のiPhone)で測定した数値である可能性が高く、いま現在の主力スマホで計測した数値ではない。いまのスマホを充電した場合、メーカー発表の数値ほどの充電はできないと考えたほうがいい。
いざというときに失敗しないためには、一度実際に自分のスマホを手回しで充電してみて、何分回せはどの程度電気が溜まるのかを実験しておくといいだろう。

スマホの充電には、モバイルバッテリーの併用を

手回し発電によるスマホの充電は、スマホ充電の最後の手段として、ないよりはあったほうがはるかにマシである。とはいえ、停電になったり、避難した先で最初から手回し発電でスマホを充電するのは非効率的だ。
非常時にスマホを充電する場合、最初の手段はモバイルバッテリーを使うことである。普段からカバンのなかにモバイルバッテリーを入れている人は多いだろう。それを非常時に持ち出すことを忘れないようにしたい。

結論
「非常と割り切るなら東芝がいい」

今回取り挙げた機種で、非常時の持ち出し用途に限定すると東芝がいい。スーパーキャパシタを採用しており、非常持ち出し袋に年単位で入れっぱなしにできるのは安心感がある。

普段使いもするならソニーがいい

普段からラジオとして使い、非常時にそれを持ち出すことができる人、または非常持ち出し袋に入れておいても定期的(年2回程度)に内蔵バッテリーの使用・充電といったメンテナンスができる人ならば、ニッケル水素やリチウムイオン系の電池を採用したモデルもいい。
手回しでラジオが長時間聴けること、乾電池が併用できること、ソーラーパネルを装備していることなどを考慮するとソニーが適している。

◆福多利夫(フリーライター)
デジタル家電関連の記事を得意とする、モノ系ホビー系のフリーライター。一般財団法人家電製品協会認定の家電総合アドバイザーでもある。長年にわたり月刊『特選街』の制作に携わり、パソコン関連の著書も多い。

※価格は記事制作時のものです。

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