【読者から質問】
このたび、新しいヘッドホンを買いました! ビクター製のHA-FX33X-Bです! ずばり、「エージング」って効果はあるのでしょうか? 僕は今、17歳です。17歳でもわかるように説明してもらえるとありがたいです!(K・Oさん 山口県 17歳)
編集部:この質問は、AV評論家の藤原陽祐さんに聞きます。
【専門家から回答】
エージングを直訳すると、時を経ること(経年)となりますが、オーディオ機器の世界では、ちょっと意味合いが変わります。新品の状態から一定の時間、動作させることをエージングといい、安定的に稼働し、音がこなれて、なじみがよくなるまでの作業のようなものを指します。
特に、ユニットの振動板を駆動して音楽を奏でるスピーカーなどは、音質の変化が顕著ですが、プリメインアンプの場合でも、コンデンサーや各種ICチップに電気信号を通すことで、響きの広がりがスムーズになり、ボーカルの艶っぽさも感じられるようになります。
最近、人間の加齢に伴う症状を緩和させるという意味でアンチエージングという言葉をよく耳にしますが、オーディオの世界では、逆に、エージングのほうが重要というわけです。
編集部:ヘッドホンでも、エージングの効果はあるのでしょうか?
専門家: もちろん、一定の効果が期待できます。お使いのHA-FX-Bはダイナミック型の一般的なインイヤ型ですから、音楽信号は磁気回路、ボイスコイルを経由して、ユニットのコーン(振動板)、エッジといった稼働部分を振動させて、発音します。これはスピーカーとまったく一緒です。一部の高価なヘッドホンでは、エージング後に出荷するという話を聞いたことがありますが、ほとんどのヘッドホン(特に1万円以下の製品)は、購入時、コーンもエッジもまっさらの状態で、音楽を奏でたことがありません。ですから、使い始めはどうしても動作がぎこちなく、硬質な音質になりがちですし、振動板のストロークも制限され、低音の量に物足りなさを感じてしまうことが少なくありません。
製品にもよりますが、インイヤ型のヘッドホンの場合、私の経験では、50時間前後のエージングが効果的です。スマホやDAP(デジタルオーディオプレーヤー)と接続し、いろいろな音源を再生しているだけでもエージングは可能ですが、できれば、実際に自分の好みの曲を聴きながらエージングするのが理想です。
もちろん、連続して50時間聴き続ける必要はありません。1日数時間、自分のペースで、無理なく、好きな曲を楽しんでください。その結果として、音がなじんで、リズム感が整い、帯域バランスの癖っぽさも改善され、エージング効果が得られるというわけです。ただ、同じ曲ばかり再生し続けると、その癖がついてしまう危険性があるので、さまざまなな曲を再生するようにしてください。
使っているうちに、音の表現が豊かになり、自分の耳も心地よく感じられるようになったら、エージングは終了。ただその後、使い続けていく中でも、当然、エージングは進み、音は変わっていきます。そしていつの日か、HA-FX-Bの円熟のサウンドに出会えるときが、必ず来るはずです。その日を心待ちにして、大切に使ってください。
編集部:なるほど。K・Oさん、おわかりになりましたか? ありがとうございました!