片づいていない部屋の中では、人は集中できません。散らかったデスクの上でいちいち書類を探したり、毎朝整理されていないクローゼットを開けて着る服に迷ったりしていたら、やりたいことをやる時間はどんどん減っていきます。服の整理に1日10分かかっているとしたら、年間約3600分、丸2日半を費やしていることになります。【解説】DaiGo(メンタリスト)
解説者のプロフィール
DaiGo(だいご)
メンタリスト。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒業。人の心を作ることに興味を持ち、人工知能記憶材料系マテリアルサイエンスを研究。英国発祥のメンタリズム(人の心を読み、操る技術)を日本のメディアで初めて紹介し、日本唯一のメンタリストとして多くのテレビ番組に出演。『運は操れる』(マキノ出版)ほか、人間心理をテーマに執筆した著作は累計で270万部を突破。オフィシャルサイト http://daigo.jp/
毎日10分片づけをしたら年3600分の無駄に!
私は「人生を思い通りに操る片づけの心理法則」を考案し、ご好評をいただいています。この法則のゴールは部屋をきれいにすることではありません。片づけることによって、人生の時間とパワーをやりたいことに集中させ、幸せを手に入れることが目的です。
幸せな人とそうでない人の違いはどこにあるのでしょうか。もちろん生まれ持った才能や環境の違いもありますが、それらよりもはるかに重要な、決定的な違いがあります。
それは限りある時間やお金、体力、注意力といった自分のリソースを、人生において達成したい目標に集中できているかどうかです。
片づいていない部屋の中では、人は集中できません。散らかったデスクの上でいちいち書類を探したり、毎朝整理されていないクローゼットを開けて着る服に迷ったりしていたら、やりたいことをやる時間はどんどん減っていきます。
服の整理に1日10分かかっているとしたら、年間約3600分、丸2日半を費やしていることになります。また、ビジネスパーソンが1年間に探し物に費やす時間は「年平均150時間」といわれます。ある分野の専門家になるためには1000時間の勉強が必要といわれるので、過去7年間の探し物の時間がなければ、ビジネス上の得意分野をもう1つ増やせたことになるのです。
幸せになりたければ、限られた時間をほんとうにやりたいこと、大事なことに集中すべきです。それを邪魔しているのが、多すぎるモノや情報であり、それらが散らかった環境です。片づけは「自分のリソースを目標に向かって集中できる環境を作ること」であり、あなたが幸せになるために必須な作業なのです。
DaiGo流 大事なモノの選び方
そう考えると、片づけ自体に多大な労力や時間を取られては本末転倒です。したがって、僕の勧める片づけは「一度片づけたら、二度と散らからない」技法になります。
「さあ、片づけを始めよう」となると、多くの人はまず「捨てるモノ」を選び始めます。
でも、それはおかしくないですか? 例えば、あなたは新聞を読むとき、パッと見て気になった記事から読んでいきませんか。つまらない記事、興味のない記事を選んでバツをつけていき、残った記事を読む、という人はいないでしょう。
おいしいご飯を食べたいと思ったときも、評判のいいお店をネットで探すはずです。「絶対行ってはいけない、おいしくない店リストから作ろう」という人は、まずいません。
これは片づけでも同じです。片づけとは、大事なモノ、持ち続けるモノを選ぶことです。必要なモノを選んでしまえば、それ以外は自動的に捨てていいモノとなります。
大事なモノを選ぶ際に気をつけたいのは、「ちょっといいモノ」の存在です。1回着ただけで似合わないと気づいたコート、かさばって使わなくなった液晶ディスプレイなど、自分にとって不必要でも、価値はそれなりにある「ちょっといいモノ」。これらは価値はあるからと残しておくとどんどん増えて、ほんとうに大事なモノがわかりにくくなります。
「ちょっといいモノ」があった場合、「すごくいいモノ」に変換する方法を考えましょう。例えば、先述の液晶ディスプレイは、これからパソコンのディスプレイを買おうとしている友人にとっては、「すごくいいモノ」になります。誰かにモノをあげるというのは、「ちょっといいモノ」を「すごくいいモノ」に変換する方法の一つです。
では、ほんとうに大事なモノを選ぶにはどうすればいいでしょうか。あなたの「理想の1日」を想像するのです。理想の1日とは、「毎日こんな生活ができたら最高に幸せ」と思える1日です。理想の1日に登場するモノは、あなたにとって絶対に必要なモノということになります。
「理想の1日」は、朝起きてから、夜寝るまでの行動を時系列で紙に書き出します。まず、線を引いて紙に「朝」「昼」「夕方・夜」の3つに分割します(下のコラム参照)。1時間刻みで区切ることはしません。スケジュールを詰め込むわけではありませんから、楽しくやりましょう。
3つに区切ったら、それぞれの枠で何をするか書いていきます。次に、それぞれの行動に必要なモノを書き出していきます。
こうしてリストアップされたモノが、あなたにとってほんとうに必要なモノです。逆にこのリストに登場しないモノは、どんなに便利なモノでもほんとうはあなたにとって必要ではない、捨てるべきモノということになります。
ここまでで何を持つべきか、何を捨てるべきかという片づけの基準はわかったと思います。次の項から、「それがわかっても捨てられません」という人に、モノが捨てられるようになる質問をしていきます。
モノが勝手に減っていく「7つの質問」
「ほんとうに必要なモノ」がわかったとしても、それ以外のモノを捨てるとなると抵抗を感じてしまうのが人間の心理です。そこで、今から私が「モノが勝手に減っていく7つの質問」をします。この質問に答えるだけで、捨てることへの迷いが消えていくはずです。
質問(1)
【いったん捨てたとして、これを買い直すか?】
ほんとうに必要なモノがわかる!
なかなか捨てられないモノがあったら、いったんそれを捨てたと想像しましょう。そのうえで、「これを買い直すかどうか」、問いかけてみてください。
例えば、長年かけて集めたコレクションなど、全部捨てたと仮定して、「これは絶対に買い直す」と思えるモノがあったとしたら、それはほんとうに必要なモノです。
「これは捨てるべきか?」と考えると捨てにくいですが、「捨てたとして買い直すか?」と考えると、大事なモノがわかってきます。
質問(2)
【長期旅行に持って行きたいモノか?】
必要なモノを自然に選べる!
あなたは3カ月以上の長期旅行に出かける準備中です。目の前には荷物を詰めるためのトランクがあります。今、捨てるかどうか迷っているモノは、このトランクに詰めたいものですか?
ほんとうに大事なモノなら、ぜひともトランクに詰めたいと思うはずです。実際にトランク1つだけ持って旅行に行くのはとてもお勧めです。
「モノが少なくても楽しめる」「モノを減らしても怖くない」ことに気がつくと思います。
質問(3)
【誰かが買ってくれるとしたら売るか?】
売ってもいいなら不要品!
ちょっと捨てにくいモノ、捨てるには惜しいモノがあったとき、「これを誰かが買ってくれるなら売るか?」と問うてみましょう。
損することに敏感な人でも、売ってお金がもらえるなら「手放そう」と考えやすくなります。売れるなら売りたいモノは、自分にとってほんとうは必要ではないモノです。
一度「売る」と答えを出せたモノは実際に売ってもいいですし、売る以外の方法で処分することにも抵抗がなくなっているでしょう。
質問(4)
【あの日に戻れたとして、やはりこれを買うか?】
不要な「ちょっといいモノ」を減らす!
あるモノを買ったその日を思い出し、「もし、あの日に戻れたら、自分はこれを買うだろうか?」と問うてください。
おそらく捨てるかどうか迷っている程度のモノは、ほとんど「あの日に戻れたら、買わない」という結論が出るはずです。
エクササイズ器具や美容用品、サプリメントなど、「せっかくお金を出したのだから」と手放すのが惜しくなり、自分にとっての価値を見誤ってしまうようなモノに有効です。
質問(5)
【お金が無限にあったら、ほんとうにこれを買うか?】
無駄なモノを買わなくなる!
これは、「これから買うモノ」を減らすための質問です。何かを買いたくなったら、「お金が無限にあったとしても、ほんとうにこれを買うか?もっといいモノを買うのでは?」と問いかけてみましょう。
例えば、性能がいいコンパクトカメラがセールで安くなり、欲しくなったとしましょう。あなたが大富豪でもそれを買いますか?もっと高級なカメラを買うはずです。
お金があっていつでも買えると思うと、人はそれほどモノを買わないものなのです。
質問(6)
【これを何回我慢すれば、欲しいモノが買えるか?】
我慢がつらくなくなる!
この質問も「これから買うモノ」に有効です。何かを買おうと思ったとき、「これを何回我慢したら、自分が欲しいモノが買えるか?」と考えてみましょう。
タクシーに乗ろうと思ったとき、ワンメーター410円だとすると、1回我慢すれば文庫本が買える、5回我慢すればかなりおいしいものが食べられる…などと変換します。
我慢した先の楽しいことが思い浮かびますから、我慢がつらくなくなってくるはずです。
質問(7)
【3年、5年、10年たっても必要か?】
いったん過去に戻り未来を見通す!
3年、5年、10年先の自分や、置かれている環境を想像するのは簡単ではありません。そこで「質問4」と組み合わせ、「買ってよかったモノ」「買わなきゃよかったモノ」を思いつくままに書き出してください。
「性能のいいノートパソコンを買ったけど、スマホが便利なのでほとんど使っていない」「万年筆は今も使ってるし買ってよかった」など、自分にとって必要なモノの傾向が見えてきます。
すると「3年、5年、10年たっても必要か」どうか、判断できるはずです。
二度と散らからない習慣「1イン2アウト」「5秒ルール」 「6割収納」「写真暗示」
上の7つの質問に答えたことで、かなりモノの選別が進んできたかと思います。
ここで一つ、思い出してください。私の片づけの目的は、「自分の好きなことに時間と注意力を注ぐため」です。
モノを捨て、部屋が片づいていったん整理された状態になっても、今後も定期的に片づけないといけないのでは意味がありません。
ここでは「一度片づけたら二度と片づけなくて済む片づけの習慣」について説明していきます。
習慣(1)
【1イン2アウト】
これは文字どおり、「1つ入れたら2つ出す」という習慣です。
部屋に何か1つモノが加わったときは、入れ替わりに2つのモノを処分することを徹底するのです。
私の場合、通販で新しいTシャツを買ったとき、まず玄関に箱に入れたまま置いておきます。そして、家の中を見わたして、処分できるものを2つ見つけて、捨てるなり、売るなり、人にあげるなりして減らした後、ようやく新しいTシャツを使い始めます。
これを実践するだけで、モノは自然と減っていきます。
こう言うと「1イン1アウトではダメなんですか?」と聞かれます。入ってくるぶんだけを捨てればモノは増えないように思いますが、それではうまくいきません。人からもらうなど、知らない間に家に入ってくるモノに対応できないからです。
「勝手にモノが減っていく」という状態を作るには、「1イン2アウト」を徹底することがたいせつです。
習慣(2)
【5秒以内に戻せるルール】
これは「あらゆるモノを、使ったら5秒以内に戻せる場所に配置する」という習慣です。
この習慣を守るためには、使う場所のすぐそばにモノを置かないといけないことはわかると思います。しかし、それよりもっと大事なことがあります。「モノの置き場所を完全に決めないといけない」ことです。
たとえ使う場所や置き場所が近くても、棚のどこか空いているスペースに置くか、立てかけておくか、などの曖昧な決め方では、置き方に迷ううちに5秒過ぎてしまいます。
また、本など、棚にギチギチに収納すると、抜き出した本を元に戻すのに苦労します。メイク道具なども、引き出しを開けた中に入っているポーチにしまうなど、ややこしい収納法をしていると、元に戻すのに5秒を過ぎてしまいます。
5秒ルールを守るためには、一目見てどこに何があるのかわかり、サッと取り出せてサッと戻せる、ゆとりある収納方法にする必要があるのです(詳細は次の習慣(3)へ)。
習慣(3)
【6割収納ルール】
5秒以内にモノをしまうための習慣が「6割収納ルール」です。
誤解されているのは、スペースを隙間なく有効活用するのが上手な収納法だと思われていること。しかし、取り出しやすく、戻しやすいという観点からすると、ギッシリ収納するのはNGです。
モノとモノとの間がじゅうぶんに空いているほうがいいに決まっています。「スペースの6割しか使わないように収納すること」をルールにしましょう。
棚にモノを隙間なく置くのは10割使うことになるのでNG。重ねたり、前後2列に置いたりするのは、10割を超えてしまうので論外です。
スペースの6割しか使わない収納を心がけると、収納しているというより「モノを飾っている」イメージになります。ここが重要です。
服や小物のショップに行くと、適度な間隔を空けて商品が陳列棚に飾ってあります。これはまさに6割収納のルールの見本です。お客さんが見たいときにサッと取り出せて、サッと戻せる。美しく商品を飾ることが、モノの管理のしやすさにもつながっているのです。
水回りなど、頻繁に掃除する場所は、もっと厳しく、4割収納をルールにしましょう。この話をすると、「このルールが守れるのは、家が広い人だけだ」と言う人がいます。家が狭いのではありません。モノが多すぎるのです。
習慣(4)
【写真暗示】
片づけが完了した、理想的な状態にある部屋の写真を撮ります。それをプリントして、壁に貼りましょう。いちばんきれいな部屋の状態をお手本として、常に見えるようにしておくのです。こうすると、少しでもモノが定位置から外れれば、すぐに気がついて元に戻せます。
誰でも洗面所の鏡の前に立てば、無意識のうちに髪の毛の乱れを直しますよね。あの状態を、部屋でもつくるわけです。こうすることで常に片づいた部屋をキープできます。
以上、実践しやすい代表的な「二度と散らからない習慣」を紹介しました。片づけから解放されると、信じられないほど自分の時間に余裕ができ、人生が見違えるはずです。ぜひあなたの人生に革命を起こしてください。