2019年は、家電にとっては激動の年でした。一番大きかったのは、中国メーカーの二番手クラスが日本市場に参入してきたこと。スマートフォンではシャオミ、テレビではTCL(スマホ一番手はファーウェー、テレビ一番手はハイセンス)。また、アイリスオーヤマは、この超激戦区、黒物家電市場に打って出てきました。技術開発もスゴく、シャープは「買ってもいいかなぁ」という価格の8K液晶テレビを上市しました。その一方、ソニーとパナソニックは、すごい画質の有機ELテレビを作り上げています。ではここで、2019年の締めくくりとして、この一年のテレビ事情を整理してみましょう。
技術トレンドは、この3つ
技術的なトレンドは、現在3つです。「8K 液晶テレビ」「4K QLED液晶テレビ」「4K 有機ELテレビ」です。それぞれ次の様な特徴を持ちます。
まず、「8K液晶テレビ」の特長は、先日始まった「BS 8K放送」が観られることです。放送局は今のところNHKのみ。目玉番組は来年の東京オリンピックの生中継です。まさに世界最高です。
ここで頑張っているのは、液晶の雄「シャープ」です。しかも、現在ラインナップは3機種。4K、8Kチューナーまで内蔵した「AX-1シリーズ」、4Kチューナーを内蔵した「BW-1シリーズ」。そして、ハイビジョン放送用の2Kチューナーを内蔵した「AW-1シリーズ」です。
お買い得なのは、BW-1シリーズの60型モデル。約36万円(税込)程度で売られています。8Kなのに4Kチューナーまでしかついていないのは、可笑しいだろうですって?
デジタル映像の場合、パネルが対応していれば、アップコンバーターで4K映像は8K映像で見ることができます。このため、東京オリンピックの8K放送は見ることができませんが、当然4Kも放映されるでしょうから、それを4K⇒8K映像変換して観れば、8K放送同等までは行きませんが、十分上質な映像が楽しめます。
60V型 8K対応 4Kチューナー内蔵
8T-C60BW1
次は「4K QLED液晶テレビ」です。新しいQLEDというワードがくっついています。Qは、量子ドットの意味で、直径2~10ナノメートルサイズの半導体微粒子を使用して光の波長を変換制御する技術です。これを、テレビのバックライトとディスプレイの間にフィルムとして差し込むことで、表示できる色数が増え、色域が広がります。2019年モデルには、色域を115%まで拡大しているものがあります。
これに力を入れているのは、韓サムソンと中国メーカー。TCLは、最新のQLEDテレビの初発表を日本で行うくらい、力を入れています。4K 65型の「TCL65X10」は、現在市場で約22万円前後であり、最新機種ながら、値が熟れているレベルにあると言えます。中国製ということもありますが、QLEDはフィルム1枚なのでたかが知れているわけです。このコストメリットは大きいわけです。
量子ドット技術(QLED)搭載
65X10
そして最後は、「4K 有機ELテレビ」。これは、自家発光型だけに、「黒」の再現性がすこぶる良いです。先日レポートした「ドルビーシネマ」の記事でも書きましたが、本当にイイ画を出すためのイロハの一つなので、圧倒的な高品位画質。最も「鑑賞」に値する画といえます。映画好き、ドキュメンタリー好き、美術愛好家、アニメオタクなど、画の色にこだわる人には、何としても買ってもらいたいテレビですね。
その分、ソニーもパナソニックも高い。この2社、特にソニーは、最後までテレビの最高品質はソニーが掴む姿勢を見せており、お値段もスゴいことになっています。ブラビアの77型は、100万円を超します。
その超凄いモデルは置いておきまして、ここは東芝の画像エンジンを使ったハイセンスの4K 55型 「55E8100」がお勧めです。陰影がキレイに出ており、「さすが東芝のDNA」とちょっと贔屓にしてしまいます。しかもこちらは、現在19万円前後ですから、めちゃくちゃお買い得と言えます。
有機ELテレビ
55E8100
「画質」でないところに着目したアイリスオーヤマ
今上げた3つは、「技術のトップ」=「テレビのトップ」を目指して作られたモデル。でも、実際は画にこだわらなく、「今持っているより大画面、ただしそれなりの値段で!」という人も多いです。
そして、そんな人に好評なのが、新規参入のアイリスオーヤマです。一機能工夫するアイリスオーヤマが、今回付け加えたのが「音声操作」。
「古いネー」と思う方もいるかも知れませんが、ところがどっこい「IoT」でなくても使えるところがミソです。要するに、Wi-Fi環境下になくても、音声操作できるところがミソです。温故知新。新しいテレビとして魅力的に仕上がっています。この「LUCA」と呼ばれるシリーズは、65型で11万1800円(税抜)。
もう一つアイリスオーヤマの面白いのは、メイン売り場を量販店ではなく、ホームセンターにしたことです。ホームセンターでは、今まで家電を買う所ではなかったのですが、皆、クルマで来ますし、スペースは広い。当然、大型家電販売は「あり!」です。
4K対応 液晶テレビ
65UB10P
満たされない小型テレビ需要
ところが、それでもカバーできていない需要があります。それは若者用小型テレビです。
今の日本の若者はスマホネイチャー世代。有機ELの高精細画像を間近で観るのが当たり前です。そんな若者に、大画面テレビは余り人気がありません。まぁ好きな人もいるのでしょうが、今住んでいるワンルームに対しては大き過ぎるのです。
とは言うモノのの、ラインナップはほとんどありません。理由は簡単です。日本的にはニーズがあっても、世界的には少量だからです。また、50型の液晶テレビが、10万円以下で売られている現在、単価もかなり安くしなければなりません。帯に短し襷に長しというところでしょうかね。
ともあれ、来年2020年は、東京オリンピック。テレビ関係の話題は増えそうです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。