今日本の掃除機メーカーで勢いがあるのが、中小メーカーです。アイリスオーヤマ、ツインバード、シロカなどなど。今回は、その中から、2つ。ツインバード社そして山本電気社のスティック型掃除機を紹介します。
今後注目の掃除機メーカーは?
ダイソン、エレクトロラックスという世界の掃除機市場を引っ張っている2つの会社が去年(2019年)、スティック型掃除機の一つの完成形を上市、2020年はかなり大きくその方向性を変えています。エレクトロラックスは今まで手をつけることができなかった小欠点の徹底改良、ダイソンは手持ち式の弱点、重さへ対応するために、小型化しました。
それに対し、日本の大手メーカーは俊潤しているように感じられます。方向性に、「信念・こうあるべきだ」という感じを強く感じられないのです。これは、日本のものづくりが、変わってきているせいでもあります。創始者は、自分の作りたいものをよく知っており、それに向かって歩みます。ダイソンのアイロボットなどは典型例です。しかし日本の場合、もうそんな人は大メーカーにはいません。世代交代しているのです。彼らは組織を守り発展させるために、数字を大切にします。しかも場合によっては、製品よりも数字を優先させます。
逆に勢いがあるのは、中小メーカーです。アイリスオーヤマ、ツインバード、シロカなどなど。今回は、その中から、2つ。ツインバード社そして山本電気社のスティック型掃除機を紹介します。
芽が出そうなメーカー(1) ツインバード
コードレスワイパースティック型クリーナー
フキトリッシュFree「TC-5175」
スティック型掃除機の設計で一番重要なことは、その元になっているハンディ掃除機を、どの位置に置くのかということです。ツインバードが選択したのは、下側、床に近い位置です。重心が下にあるために、安定して使いやすいのが特徴で、自立できることが多いため、私は自立式と言っています。逆は重心が上、手元にある手持ち式。バランスがとりにくいモデルですが、手の延長線上として使えるので使いやすいメリットがあります。
上記のように、自立式、手持ち式とも一長一短があるのですが、実際に多いのは、手持ち式です。何故でしょうか?
それは作りやすいからです。ハンディ掃除機に、ポールを付け、ヘッドをつけると、手持ち式スティック型掃除機が出来上がります。一方、自立式は、ハンディ掃除機を下側、床に近い位置で固定しなければならないため、ハンディ掃除機を埋め込む、フレームが必要なのです。これを見事に商品化したのが、エレクトロラックス社です。「2 in 1」という名前が与えられています。
ツインバードの巧さは、それをまさに「スティック」、「柄」で対応したことです。エレクトロラックスのようにフレームを作るのではなく、スティックを突き刺したのです。単なるスティックですから、軽いし、安価にできます。原点に帰ったような作り方です。
拭き掃除もできる
ちなみに、スティックからの発想かどうかはわかりませんが、ヘッドに拭き取り用のワイパーをつけることが可能です。つまり吸引するだけでなく、拭き取る時にも使えると言うわけです。これちょっといいです。
ただ、サブならともかく、メインの掃除機として使うなら、モーターパワーとヘッドの性能が少々足りていないのも事実。ここは中小メーカーの泣き所。技術の引き出しが少ない。しかし、ツインバードは今伸びているメーカーですから、今後対応してくれると期待しています。またデザインも工夫が欲しいです。スティック=棒ですが、竹箒の竹と、モップの木で、随分雰囲気も違います。そのようなところまでしっかりデザインして欲しい。拭く機能がある分だけ強く思います。
そうなるとよりいいところが見えてきます。「軽い」という今に安住することなく、「楽に拭き取る」を入れたわけですから、それだけでも評価高いです。
芽が出そうなメーカー(2) 山本電気
山本電気
コードレススティック型掃除機「YS0001WH」
モーターメーカーが作った掃除機
山本電気というメーカー名を知らない人は多いと思います。このメーカー、元々はモーター屋さんです。そして近年、そのモーターを利用した家電作りも手掛けています。中でも精米機とスムージーを作る小型ジューサーは太鼓判が押せるレベルです。
そのモーターで作ったのが、YS0001WHというわけです。モーター屋が作った掃除機は、山本電気が初めてというわけではありません。マキタのスティック型掃除機も同類です。
方式は手持ち式ですが、山本電気にはマキタと同じ特徴を持ちます。それは、ヘッドを簡易にすることにより、軽くするという特徴です。手持ち式は、本体(ハンディ掃除機)、ポール、ヘッドからなります。本体部分は手(支点)から離れていませんので、あまり問題になりません。ところが、パイプ、ヘッドはそうではありません。特にヘッドを重くすると、距離が離れていることもありとても重く感じます。逆にヘッドを簡素にし、軽くした山本電気、マキタなどのモデルは、いい感じです。軽く、使いやういのが特徴です。このように振り回しやすい=使いやすい掃除機を支持するユーザーは少なからずいます。
YS0001WHの泣き所は、ヘッド。簡素なので軽いと言うのは長所なのですが、ローラーなどのメカニズムを持っていませんので、小さなゴミを浮かせて取りやすくするなどはできません。このため、ハウスダストの除去などは、できるのですが時間がかかります。
しかし、売価を確認して驚きました。この吸い込みで、2万円を切ります。こんなにも丁寧に作られているモデルがです。
まとめ
今完全に一つの完成形を作り上げたエレクトロラックスとダイソンは、キャニスター掃除機に代わるものとしてのスティック型掃除機、自立式と手持ち式のモデルを作り上げました。これらはキャニスター型に代わるものです。ただし、ユーザーの希望は住む場所、個人の性格により様々あり、すべての人にエレクトロラックスやダイソンが合うわけではありません。
むしろ、ユーザー要望に応えることにより何でもつけてしまったことでかえって、重くなり、扱いにくくしている部分もあります。
大メーカーは、この世界的な2社、エレクトロラックスとダイソンと渡り合うために、要望全部いりモデルが必要なのかもしれませんが、実際そうでない場合も多いものです。逆に「軽い」=「使いやすい」と言う原点から見た場合、今回紹介した2つの掃除機はなかなかのもの。方向性、コンセプトはいいと言えます。
また、この2社のモデル、安価設定なところも支持したいところです。
逆に劣っているのはデザインとアタッチメント。常時、人目に触れると言うことに対しては、まだまだOKとは言えないレベルです。またアタッチメントですが、流通さえ許せば、通販などでアタッチメントを販売するサービスなどもあるのではと思います。
今までは、どちらかと言うと、売ったものを維持する(修理する)と言う発想でしたが、今後は売ったものをカスタマイズしていくと言う発想もありではないでしょうか? そんなことが感じられる2社の掃除機です。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。