今や社会現象となっている大ヒットアニメ「鬼滅の刃」。原作漫画の累計発行部数は12月時点で1億2000万部を突破。10月16日に公開された劇場アニメ「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、公開から1カ月半で興行収入が275億円を突破し、歴代最高のペースで記録を伸ばし続けています。その「社会現象」ぶりは作品のコラボグッズの売り上げだけでなく、観光といったこれまでアニメとは関係なかった分野にまで及ぼしています。この新たな動きについて解説します。

執筆者のプロフィール

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河嶌太郎(かわしま・たろう)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。Yahoo!ニュース個人では「河嶌太郎のエンタメ時報」を執筆、オーサーコメンテーターとしても活躍中。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、家電、ガジェット、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。
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大人気の「SL鬼滅の刃」

観光への影響も大きいのが「鬼滅の刃」の特徴です。例えばJR九州とJR東日本では、「鬼滅の刃」とコラボした蒸気機関車を運行しています。特にJR九州の「SL鬼滅の刃」では指定席券が販売された瞬間、「秒」で売り切れるほどの人気ぶりです。

「SL鬼滅の刃」で使用する蒸気機関車は、1922年(大正11年)に作られた、現存する国内最古のものです。「鬼滅の刃」の舞台も大正時代であり、作中に登場した蒸気機関車のモデルといわれており再現度と人気が高いのが特徴です。蒸気機関車の先頭には作中同様、「無限」という文字が書かれたヘッドプレートも装着され、アニメの再現度も意識されています。

画像: 久留米駅ホームに停車中の「SL鬼滅の刃」(筆者撮影)

久留米駅ホームに停車中の「SL鬼滅の刃」(筆者撮影)

この蒸気機関車は「国鉄8620形蒸気機関車」という1914年(大正3年)から1929年(昭和4年)にかけて製造されたモデルで、鉄道ファンの間では通称「ハチロク」と呼ばれており、親しまれています。

「SL鬼滅の刃」は元々「SL人吉」として運行されていたもので、令和2年7月豪雨で被害を受けたJR肥薩線を走っていたものです。元々は熊本県の熊本駅~人吉駅を走行していましたが、豪雨災害により運休となった経緯があります。そのため休眠状態だった機関車を復活させた形になります。

「SL鬼滅の刃」の運行区間は「熊本駅~博多駅」で、特に博多駅にSLが走るのは約20年ぶりということで、アニメファンだけでなく、鉄道ファンにとっても注目の列車となりました。「SL鬼滅の刃」は11月の土日祝日に運行されましたが、沿線にはその様子を一目見ようと大勢の人々が駆けつけました。特に博多駅では約1500人が「SL鬼滅の刃」の到着をお出迎えすることとなりました。

乗るとなったら大変な人気で、困難を極めます。「SL鬼滅の刃」の指定席券が販売された瞬間、秒で売り切れる事態となっています。そして熊本博多駅間で840円の指定席券が、4万円以上で転売される出来事も起こっています。

臨時列車だけでなく、駅弁などでもコラボを展開しており、JR九州では辛子明太子や、宮崎牛のすきやきなど、九州の特産品を使ったコラボ駅弁を販売しています。さらにその駅弁にキャラクターのクリアカード(全5種類)のうち1枚をつけています。

JR東日本でもコラボ列車運行

JR東日本でも「鬼滅の刃」とコラボしたSLを走らせています。元々高崎支社管内で「SLぐんまみなかみ」や「SLぐんまよこかわ」として運行されていた昭和期の「国鉄D51形蒸気機関車」を流用しており、12月末までの土日などに高崎駅と横川駅の間を走っています。こちらも指定席券がすぐに売り切れる人気ぶりとなっています。

こうした展開は「鬼滅の刃×SLぐんま~無限列車大作戦~」と題されており、12月31日まで実施される予定です。臨時列車だけでなく、駅弁「峠の釜めし」で知られる群馬県安中市にある企業「おぎのや」と、同じく安中市にある体験型鉄道テーマパーク「碓氷峠鉄道文化むら」、そしてJTBと協働し、一大観光プロモーションが展開されています。

神社巡りにも人気が波及

「SL鬼滅の刃」のように、モデルとされる存在があって観光に結びついているものがある一方、こうした実態がないにもかかわらずファンを集めているところがあります。

代表的な例が、九州にある3つの「竈門神社」です。これは、「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎の名字が同じというのが直接のきっかけとなっています。いずれも作品に直接登場したり、公式から明確なモデルとされたりしている舞台ではありません。

3つある竈門神社は、福岡県太宰府市の「宝満宮竈門神社」、筑後市の「溝口竈門神社」、そして大分県別府市の「八幡竈門神社」です。規模的には太宰府天満宮から近い宝満宮竈門神社が一番大きく、次いで八幡竈門神社が大きいと言えます。この2社には社務所があり、お守りや御朱印の授与もされている地元では名高い神社です。しかし溝口竈門神社は集落に一つはある神社を大きくしたようなお社で、常設している社務所がありません。が、どれも大勢の「鬼滅」ファンが訪れています。

ファンの間では、この3つの神社を巡礼する動きもみられます。ルートは様々ですが、公共交通機関を使う場合、福岡県太宰府市にある宝満宮竈門神社を最初にお参りし、福岡県南部にある筑後市に移動。溝口竈門神社を参拝したのち久留米市まで戻り、高速バスやJR久大本線などで大分や別府に移動して宿泊し、翌日八幡竈門神社をお参りするというプランが考えられます。

3つの神社はいずれも駅から遠く離れていますが、このうち宝満宮竈門神社は西鉄太宰府駅から、八幡竈門神社はJR日豊本線の亀川駅や別府駅からバスが出ています。日中のバスの本数も、宝満宮竈門神社方面は30分に1本程度、八幡竈門神社方面は1時間に4~6本程度走っています。

公共交通機関だけでお参りしようとする場合、ネックになるのが溝口竈門神社です。溝口竈門神社の最寄り駅はJR鹿児島本線や九州新幹線の筑後船小屋駅ですが、そこから先バスなどの公共交通機関がありません。歩くと1時間近くかかる距離で、駅近くの「筑後船小屋観光案内所」でレンタサイクルを借りるか、タクシーを使うしかないのが現状です。

こうした交通事情からか、実際に「鬼滅三社参り」をされている人の多くは、車やバイクといった乗りものを利用されている人が今のところ少なくないようです。しかし、この3つの神社を中心に、「鬼滅の刃」とゆかりがあるとされる場所巡りをする観光ツアーが今後組まれれば、車の運転が苦手というような人でも巡れるようになるかもしれません。

まとめ

元々福岡県を中心とした九州・中国地方では、初詣に3つの神社を詣でる「三社参り」をする風習があることで知られています。この習わしから、これら3つの「竈門神社」を巡ることを「鬼滅三社参り」などとファンの間では呼ばれています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2021年正月の様子は誰もわからないかとは思います。コロナが落ち着く日がきたら、「鬼滅三社参り」が話題になるかもしれません。

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