子供が大きくなると浮上してくる教育問題。学校の成績アップや進学準備のため、塾に通わせるのがマストになってきます。では、たくさんある中で、どうやって塾を選べばいいのでしょうか。塾のタイプ別のメリットは? 選ぶときの決め手は? お金のことはどう? こんな噂は本当なの? 塾について知りたいあれこれを、現役の先生に聞いちゃいます。今回は「生徒に関する困りごと」です。
回答者のプロフィール
佐々木高雅(ささき・たかまさ)
進学塾フォルテ講師。指導歴15年以上。大手学習塾在籍時は、難関高校等に1000名以上の生徒を合格させた実績を持つ。現在は横浜市に進学塾フォルテを開校し、1年間で模試の偏差値20アップの指導力を発揮している。
▼進学塾フォルテ(公式サイト)
塾に通っていれば、本当に成績は伸びる?
——塾に通っていれば、成績って必ず伸びるものですか?
佐々木 勉強に前向きな生徒さんはもちろん、そうでない生徒さんの成績も伸ばしていくのが、塾の仕事です。入った当初は宿題を出してもやってこなかったりと、勉強に対する意識が低い生徒もたくさんいますが、そういう子も塾で学習の要領をつかんでいくことで、どんどん成長していきます。これまで教えてきた生徒の中で、1年前にやった模試と比べて偏差値が10以上アップしたという子も、何人も見てきました。
——なにか、勉強ができるようになるための特別なやりかたがあるんですか?
佐々木 勉強がわかるようになれば楽しさが増すので、その状態まで導いてあげるのがひとつのポイントです。また、小さい兄妹がいて家で勉強しづらいなど、環境が原因になっている場合もあるので、安全な自習場所が確保できるという点でも、塾は役に立ちますね。伸び率には個人差がありますが、成績が落ちるということは、特別なことがない限りまずありませんよ。
成績が伸びにくいのはどんな子?
——成績がなかなか伸びない子の傾向ってあります?
佐々木 「勉強をやらされてる」という意識の子は、やはり伸びにくいです。成績が伸びない子は、宿題をやってもやりっ放しの子が多いです。解いた問題に丸つけをして終了して、間違えた原因を省みたりはしません。
一方、成績が伸びる子は宿題をやって、できなかった問題はしっかりと解説を見てもう一度解き直しをします。解説を見てもわからないときは講師のところに聞きに来て、納得するまでその問題と対峙し、次は間違えないようにしておくんですね。
——一度間違えた問題は、逆に忘れにくいって言いますよね。
佐々木 そうです。つまりは、失敗(間違えたこと)をそのままにしておくか、失敗を成功につなげるか、その意識の違いですね。言われたから仕方なく宿題こなすタイプの子と、間違えもしっかり理解しようという意欲を持っている子では、半年〜1年経った後に雲泥の差が出てきます。
——じゃあ、親もちゃんと意識を持つように仕向けないとダメね。
佐々木 ただ、成績の伸び悩みは本人のやる気の問題も大きいですが、一方で、講師との相性がよくない、授業についていけず落ちこぼれるなどの要因も考えられます。すべてお子さんのやる気が原因とは限らないので、そちらにも目を向けてみてください。
塾でよくあるクレームやトラブルは?
——塾で多いクレームやトラブルって何ですか?
佐々木 大手集団塾の講師時代は、親ごさんからの金銭クレームが一番多かったです。勤めていた塾があとから諸費用をどんどん上乗せするスタイルだったので、「こんなにかかると思わなかった」と言われることが多く、そのたびに講師の自分が頭を下げていました。
——先生のせいじゃないのに?
佐々木 はい。それがいやで、今の自分の塾では、費用が年間いくらかかるかを最初にすべてオープンにしています。
トラブルで多いのは、生徒同士の人間関係ですね。「あの子がイヤ」とか「近くの席だと気になって勉強ができない」などの揉め事が、中学生くらいになると急に増えるんです。クラスを変えられるときはそうしますが、それができないときは、教室の端と端に席を離すなどの工夫で対処します。
私の場合、生徒同士の対立が見られたときは、双方から話を聞いたりということもしました。また、過去にいじめの報告を受けたときは、なるべく気にかけて、休み時間も教室の様子を見るようにしていましたね。
——え、塾の先生ってそんなことまでするんですか?
佐々木 講師がそこまでする義務はないですし、ほとんどはノータッチな先生が多いです。ただ、成績を上げる阻害要因になるものを排除することは、講師の仕事のひとつだと私は考えています。成績が伸びる伸びないはもとより、通うのすら嫌になってしまうというのは、どこの塾も不本意なはず。なにか気がかりなことがある場合は、通っている塾に遠慮なく相談してみてください。
以上、「生徒に関する疑問」編をお届けしました。ほかにも「塾選びの基礎知識」「素朴な疑問」「塾の費用」「先生についての疑問」「塾で習うことって?」がありますので、併せてお読みください!