【実写レビュー】軽量112g!明るくて防塵防滴の単焦点「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」は子育てスナップの最強レンズ

レビュー

OM SYSTEMの35mm相当の単焦点レンズ「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8」の後継となる、防塵防滴仕様の「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」が新発売。使ってみたところ、家族を撮影する、みんなにおすすめしたい要素が満載だったので、その理由をお伝えします。

「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」とは

軽量コンパクトで明るく、しかもコスパもよい35mm相当の単焦点レンズ

「OM-1 Mark II」に装着した「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」。レンズの全長が4cm以下なので、パンケーキレンズに近い印象です。

2025年の3月に標準単焦点レンズの「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II」といっしょに発売されたOM SYSTEMの最新単焦点レンズの1つが「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」です。「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8」の後継であり、もっとも大きな違いはIPX1の防滴性能を備え、防塵にも配慮した設計になったことです。防塵防滴に配慮されたカメラ本体と組み合わせると、雨のなかや水しぶきのかかる環境でも安心して撮影が行えます。

 

防塵防滴構造で、高級感のある金属外装を採用した「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II」は、驚くことに重さは約112g、直径約57.6mmで全長は約37.6mmと非常にコンパクトに仕上がっているのも特徴です。

 

マイクロフォーサーズ向けの17mmレンズなので、実際の撮影画角は35mm判換算で約34mm、一般的なレンズラインアップでいうなら35mm相当の単焦点レンズになります。注目のポイントは、開放がF1.8と単焦点の広角レンズとしては、かなり明るめであること。しかも明るいのに重さは約112gと非常に軽量です。

成人男性としてはあまり手の大きくない筆者の手の上に乗せても、かなり小さい「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」。

軽量なだけではなく、高級感のある金属外装に包まれたレンズ本体は、直径57.6×37.6mmと完全にポケットサイズのコンパクトさに仕上がっています。それでいながら、実勢価格は5万円をやや上回る程度とコストパフォーマンスも高いレンズに仕上がっています。

 

筆者は「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II」もいっしょに使ってみたのですが「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」の予想以上の魅力に驚き、この焦点距離ならではの楽しさに改めて気付いたので皆さんに報告したいと思います。

 

35mm相当という絶妙な焦点距離

標準的にも、広角的にも撮影できる汎用性の高さ

OM-1 Mark II /M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II/ 34mm相当 /絞り優先AE(F8.0、1/160 秒)/ISO 200/露出補正:+1.0EV/ WB:晴天/ピクチャーモード:ビビッド
当たり前ですが、高解像度で高性能な広角単焦点レンズとして風景などを撮影しても、その実力を十分に発揮してくれます。

レンズレビューの冒頭から、こんなことをいうと怒られてしまうかもしれませんが、筆者は実際のところ、35mmという画角が苦手です。なぜかといえば、難しいから。これが、明るい50mmであれば、レンズの力でポートレートレンズっぽく撮影できますし、逆に28mmあたりであれば、なにを撮っても当然広角っぽく撮影させてくれるわけです。

 

しかし、35mmは難しい。撮影者自身がどういう効果をねらって撮影するかによって、標準っぽくもなりますし、逆に広角っぽくもなります。レンズに撮らせてもらうのではなく、明確な意図がないと、どっちつかずな凡庸な写真になりがちなのです。

 

しかも、上手に35mmを使いこなす人々は、この標準っぽくもなる、広角っぽくもなる特性を上手に使いこなして印象的な写真に仕上げています。ただし、人間の視野にもっとも近いといわれる標準域よりもちょっと広角なので、漫然と撮影すると、ちょっと腰の引けたような写真になってしまうというわけです。

OM-1 Mark II /M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II/ 34mm相当 /シャッター速度優先AE(F1.8、1/160 秒)/ISO 8000/露出補正:+0.7EV/ WB:オート/ピクチャーモード:ビビッド
ぐっと寄れば標準レンズっぽく撮影することも可能です。開放F値が明るいので、さほど明るくない自宅の室内でも十分なシャッター速度が確保できます。

そのため35mmで撮影するなら、寄るときはしっかり寄って、引くときはしっかり引いて撮影するように意識していました。ですが、久しぶりに35mm相当の「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」で、自分の息子たちを撮影してみると、この普段よりもちょっと引いたくらいの視点からの写真も、これはこれでありだと感じた次第です。

 

好みや個人差は当然ありますが、意図すれば、広角的にも、標準的にも撮影できて、しかもその中間的なちょっと引いた位置からの視点っぽくも撮影できる35mmという焦点距離は、非常に汎用性が高く何にでも使えるようで、奥が深い魅惑的な焦点距離といえるでしょう。

 

汎用性の高さという意味では、初心者にもおすすめでき、使いこなしの奥深さという意味では、上級者にもおすすめの焦点距離といえます。筆者は、その奥深さに久しぶりにハマっている状態です。とてもおもしろい。

 

開放F1.8の明るい35mmというメリット

開放での被写界深度を大ざっぱに把握して活用

OM-1 Mark II /M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II/ 34mm相当 /シャッター速度優先AE(F2.8、1/80秒)/ISO 200/露出補正:+0.7EV/ WB:オート/ピクチャーモード:ビビッド
シャッター速度を遅くして、少し絞ったF2.8で撮影。被写界深度が深くなる分、顔全体がしっかりと描写されます。それでもタブレットの画面はぼけています。

レンズの開放F値が小さいと大きくぼけるからいいレンズだと思っている方もいるようですが、筆者は最大のメリットは暗い場所でも低いISO感度で速いシャッター速度で撮影が可能なことだと思っています。

 

「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」の開放F値は1.8ですが、計算をわかりやすくするためにF2.0だとして考えると、一般的なズームレンズの開放F値は選択する焦点距離などにもよりますが、F4.0〜F5.6程度でしょう。すると明るさの差は2〜3段になります。

 

同じ撮影条件で適正露出を得るには、レンズの明るさの差が2〜3段だと、2段なら2倍、3段なら4倍のISO感度を選択する必要があります。具体的にいうならF2.0でISO 1600で撮影できるシーンならF4.0なら3200、F5.6ならば6400を選択する必要があります。

 

最近のデジタルカメラは高ISO感度でもノイズの発生が少なくなっていますが、これだけ差が広がると画質の差は明確に表れてしまいます。さらにいうなら、明るいF値を選択してもぼけない≒ピントが合っているように見える範囲が広い=被写界深度が広いほうが優位なシーンも多いのです。

OM-1 Mark II /M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II/ 34mm相当 /シャッター速度優先AE(F1.8、1/80秒)/ISO 2500/露出補正:+1.0EV/ WB:オート/ピクチャーモード:ビビッド
35mm判フルサイズの35mmF1.8での撮影なら、被写界深度が浅すぎて、どちらかの息子がぼけてしまうようなシーン。こんなときに「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」は便利。

例えば、計算方法によって多少の差はありますが、35mm判フルサイズの35mmF1.8で撮影距離50cmと1mの被写界深度は、だいたい2.5cmと10cm程度になります。これに対してマイクロフォーサーズ向け「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」は34mm相当F1.8で50cmではだいたい10cm、1mでは約40cmの被写界深度が確保できます。

 

そのため、薄暗い部屋で人物が2人並んだ記念写真を撮影するシーンなどでは、被写界深度が稼ぐことができない35mm判フルサイズではレンズを絞るといった対処が必要になりますが、レンズを絞るとシャッター速度を遅くするか、ISO感度を上げる必要が出てきます。これに対してマイクロフォーサーズ用「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」では絞り開放でも広い被写界深度が確保されているので安心して撮影することができます。

 

筆者にとっては、あまり明るいとはいえない自宅に室内で、2人の息子や家族を撮影するには、絞り開放でも適度な被写界深度が確保される「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」は、ある意味35mm判フルサイズの35mmF1.8よりも使いやすいといえるのです。

 

意図的にぼかすこともできるのが35mm相当のおもしろさ

思い切って寄ればぼけるのが「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」

OM-1 Mark II /M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II/ 34mm相当 /シャッター速度優先AE(F1.8、1/100秒)/ISO 3200/露出補正:+1.0EV/ WB:オート/ピクチャーモード:ビビッド
被写体である息子のぐっと寄ることで、背景を大きくぼかしています。漫然と撮影してもぼけませんが、意図すれば大きなぼけを発生させることができます。

絞り開放でも適度な被写界深度が確保できるのが「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」の大きなメリットだと説明すると「要はぼけないのね」と感じられる方もいるかもしれません。しかし、ある意味マイクロフォーサーズの35mm相当開放F1.8である「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」のおもしろさは意図すれば、大きくぼかすことも可能な点にあるでしょう。

 

「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」の最短撮影距離は0.25m、約25cmです。この撮影距離での被写界深度の理論値は1〜2cmしかありません。当たり前ですが、被写界深度が2cm程度しかないということは、幼い子どもであっても右目にピントを合わせたら左目はぼけてしまいますし、状況によっては目頭にピントを合わせる目尻はぼけてしまうレベルのぼけが発生します。

OM-1 Mark II /M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II/ 34mm相当 /シャッター速度優先AE(F9.0、1/160秒)/ISO 200/露出補正:+0.3EV/ WB:オート/ピクチャーモード:ビビッド
レンズF値が小さくないとぼけないと頑なに信じている人もいるようですが、F9.0まで絞っても、近接での距離の差があると予想以上に大きなぼけが発生します。

35mm相当という画角は、意図すれば標準的にも、広角的にも撮影できますが、油断するとどっちつかずになる難しい画角だと解説しましたが、35mm相当「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」は、ぼけについても撮影する人間が、その撮影距離による被写界深度の変化などを把握して意図的にぼけをコントロールする必要のあるレンズといえます。

 

ある意味、単純に絞り値を操作するのではなく、撮影者が撮影距離や被写体の奥行などを把握して、意図的にぼけ量をコントロールする必要がある「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」は意図すればぼけるが、意図しなければぼけない難しいレンズともいえます。この難しさをおもしろさととらえるか、扱いにくさととらえるかは撮影者次第でしょう。

 

自宅でのお風呂撮影にも安心な防塵防滴性能

明るい開放F値を活用して星景写真に挑戦してみるのもいい

OM-1 Mark II /M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II/ 34mm相当 /シャッター速度優先AE(F1.8、1/160秒)/ISO 2000/露出補正:+1.0EV/ WB:オート/ピクチャーモード:ビビッド 「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」と「OM-1 Mark II 」といった防塵防滴性のあるレンズとカメラの組み合わせなら、こんなシーンも安心して撮影できます。

35mm相当の画角で、開放F値が1.8の「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」は、意図すれば標準的にも撮影できますし、広角的にも撮影できる汎用性の高いレンズです。しかも開放F値が1.8と明るいのでマイクロフォーサーズ用のため実焦点距離が短くても、撮影距離などをコントロールすることで大きくぼかすこともできれば、開放での広い被写界深度を有効活用することもできます。

 

ある意味、使う人間の意図や実力がわかりやすく反映される恐ろしくも、おもしろいレンズが「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」ということもできるでしょう。そのため、実力不足は筆者にとっては苦手意識のあるレンズ焦点距離ともいえます。

 

また「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」は防塵防滴仕様なので、同じく防塵防滴仕様の「OM-1 Mark II 」との組み合わせでは、水辺での撮影も安心です。筆者の場合は、本格的な水辺というよりは、自宅で4カ月になる息子の入浴シーンを記録する際にも、絶対に濡らしてはいけないカメラと多少は濡れても平気なカメラでは撮影時の安心感に雲泥の差があります。

OM-1 Mark II /M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II/ 34mm相当 /絞り優先AE(F5.6、1/80秒)/ISO 200/露出補正:+0.3EV/ WB:オート/ピクチャーモード:ビビッド
高い解像力にヌケのよさ、歪みの少なさといい、さすが単焦点の広角レンズといった印象です。水平線部分の描写が非常に心地よい印象になっています。

さらに「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」は、完全にポケットサイズのコンパクトで明るい広角レンズなので、星景撮影にチャレンジしてみるのもおすすめです。F2.0以下の明るい開放F値はもちろん、単焦点ならではの高い光学性能でやや難易度の高い星空撮影の入門用レンズとしても十分に活躍してくれます。

OM-1 Mark II /M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II/ 34mm相当 /マニュアル露出(F1.8、15秒)/ISO 2500/ WB:色温度設定/ピクチャーモード:ビビッド
昼間撮影した写真とほぼ同じ位置から夜に星景写真を撮影しました。絞り開放がF1.8と明るいので星空の撮影も十分に楽しめます。

軽量コンパクトでハイコストパフォーマンス、しかも標準的にも、広角的にも撮影でき、ぼかさないことも、意図してぼかすこともできる光学性能の高い単焦点レンズが「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II」です。同時発売された「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II」よりも汎用性が高く、使いこなしがいのあるレンズに仕上がっているように筆者は感じました。これから単焦点に挑戦してみたいという方にはぴったりのレンズでしょう。難しいけどおすすめです。

 

<公式サイト>
OM SYSTEM https://jp.omsystem.com/

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齋藤千歳(フォトグラファーライター)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9㎡の仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。北海道の美しい風景や魅力を発信できればと活動中。

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